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診断士カレイドスコープ

「研究会に行こう!」

取材・文:太田 佐和子(中小企業診断士)

【第1回】「ファッションビジネス・リデザイン支援マスターコース」訪問記その1

取材日:2011年3月26日

中小企業診断士になったらまず、何をしたらいいのだろう―そう思われる方は、たくさんいらっしゃると思います。先輩方に聞くと、多くの方は「研究会に行ってみなさい」とアドバイスをくださいます。診断士業界には、何百もの研究会・懇話会・同好会など(以下、研究会)があり、多くの方が何らかの組織に属して活動しています。しかし、「研究会って何ですか?」と質問すると、答えは本当に人それぞれ。どうやら、決まった答えはないようです。そして誰もが口をそろえて、「まずは行ってみるといいよ」とおっしゃいます。
そこで私は、いくつかの研究会を実際に訪問してみることにしました。ここでは、平成22年度「中小企業経営診断シンポジウム」の第3分科会で成果発表を行った3つの研究会を取り上げます。活動目的や内容、主宰者や参加者の声を、それぞれ2回に分けてレポートします。第1回目は、シンポジウム第3分科会で東京支部長賞を受賞した「ファッションビジネス・リデザイン支援マスターコース」を訪問しました。

マスターコースを見学

マスターコースとは

中小企業診断士の世界には、マスターコースやプロコン塾と呼ばれる会が多数あります。これらは、参加者のスキルアップや会員相互の研鑚等を通じ、プロとしての診断実務能力の養成を図り、中小企業診断士としての資質の向上を図ることを目的として運営されています。1年単位でメンバーを固定して運営されているところがほとんどですが、特徴は会によってさまざまです。今回うかがう「ファッションビジネス・リデザイン支援マスターコース」は、どのような会なのでしょうか。

会場は問屋街の中

議論の真っ最中

緊張しつつもワクワクしながら向かった先は、東京問屋連盟会館(東京都中央区)。見渡すかぎり問屋が連なる日本最大の現金問屋街の中にあり、会場からしてファッションビジネスにどっぷりつかっている感じがします。会議室をノックして中に入ると、7名の参加者(当日は1名欠席)と先生方4名の計11名が議論の真っ最中でした。どうやら、ある企業の改善提案をつくるにあたり、全員で全体の流れを議論しているようです。しばらくの間、後ろの席で見学させていただけることになりました。

ファッションビジネスを一気通貫で見る

ファッションビジネス全体の流れ図

ホワイトボードを見ると、大きく「X社を"会社"にするためには」という議論のテーマがあり、その下にファッションビジネス全体の流れ図が描かれていました。ブランド企画に始まり、受注、調達からその後のアフターフォローまで、ファッションビジネスがどのように流れていくのかがよくわかります。参加者全員で、その流れ図にX社をあてはめ、各工程でどのような課題があるのかを確認しながら、全体の改善提案をまとめようと議論されていました。初めて聞く私でも、非常にわかりやすく興味深い内容です。

ピリッとしていて楽しい議論

見学していてすごいと感じたのが、議論の質の高さです。1つひとつの課題について、全員が積極的に意見を述べ、しっかり議論を交わし、そして全員が合意できる結論をスピーディに導き出していました。限られた時間の中で、言葉の定義などの細かい部分まで、全員で合意をとりながら議論が進むのです。しかし、そんな中でも笑いは絶えません。アットホームな雰囲気でありながら引き締まった議論ができるのは、皆さんの意識の高さと信頼関係ゆえなのでしょうか。見ていて、非常に勉強になりました。

込められた思い

議論の後、今宿博史先生をはじめ、マスターコースを運営されている4名の先生方にお話をうかがうことができました。

― コース名にある「リデザイン」には、どのような思いが込められているのでしょうか。

今宿 博史 先生:ITの進展もありますが、新世紀に入り、20世紀型の企業と21世紀型の企業とでは、ファッションビジネスがまったく違ってしまったんです。「リデザイン」は「再生」という意味で使っていますが、いままでのファッション業界は20世紀型の企業で、在庫を持っていれば売上が上がるという、右肩上がりの時代の企業なんですね。この問屋街の企業も、みんなそうです。そういう企業が生き残っていくには、どのように企業を切り替えていくかが重要です。うまく経営者の世代交代が進んでいれば切り替えていけますが、先代が残っている場合は難しい。今年のマスターコースでは初めて、新しいデザイナーズブランドの企業にも取り組みましたが、このような状況の中で、20世紀型についても理解すると同時に、ファッションビジネスがどのように変化していくかを知ってもらえると嬉しいです。

繊維問屋街というものは、いまや大阪にも名古屋にもなくなってしまい、もう東京のここにしか残っていないんです。この危機の中で、繊維問屋街をどう守り、どう変えていくのかも実は大きなテーマで、今後このマスターコースでも、皆さんのお知恵をお借りしたいと思っています。参加される方はファッション業界以外の方も多いですから、違う目で新しい意見を出していただけると期待しています。

― では、運営の醍醐味やこのマスターコースへの思いをお聞かせください。

今宿 博史 先生:ファッション業界は、ずっと私が生きてきた業界で、父親も同じ業界でした。このマスターコースで、自分が深くかかわってきた業界のことを知ってもらえるのが嬉しいですね。また、ファッション業界や繊維業界というのは、常に一歩先を進んでいると思っているんです。世界中どこにでも、軽工業は最初に発展しますよね。そういったものを皆さんと共有できるのも、非常に喜ばしいことです。

熊谷 学 先生:私にとってここは、毎年新しい方と出会える場なんですね。いまのメンバーも非常に多彩で、いいチームがつくれていますし、そこに自分もかかわれることを本当に嬉しく思っています。興味のある方は、ぜひとも参加していただきたいと思います。

増野 雅之 先生:私もファッション業界出身なので、運営していても楽しいですし、異業種の方の意見を聞いたりできることは、自分にとってもプラスになっていますね。

兼子 俊江 先生:私は異業種なので、中小企業診断士になられたばかりの方に、さまざまな場面で、どのように情報を整理していくかなどをアドバイスできればと思っています。皆さん、それぞれの業界やこれまでの経験で培ってきた能力がありますし、ロジックで物事を考えることは訓練されていますから、その能力を企業支援の場面で発揮させるのを見守るという気持ちでいますね。

苦労する点とすれば、代表の今宿先生はすごいひらめきを持っていて、すぐ3歩4歩先に進んでしまわれるので、みんなを引き連れて物事を組み立てながら、そのひらめきにつなげていく過程でしょうか。それをいつも考えながらやっているのが、苦労と言えば苦労かなぁ、と(笑)。ただ、ひらめきも重要ですし、そこに至るまでのプロセスも重要ですから、両方を提供できれば、このマスターコースの価値があると思ってやっています。

先生方の熱い思いと、コンビネーションのよさが伝わってくるお話でした。ありがとうございました。次回は、参加者の皆さんからうかがったお話をご紹介します。

(つづく)