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診断士カレイドスコープ

中小企業診断士親子鷹に聞く―新木利雄さん・啓弘さん

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第3回】独立のきっかけはドラッカー

取材日:2011年3月5日

中小企業診断士資格を取得した啓弘さんは、独立の道を歩み始めます。このサイト「中小企業診断士の広場」も、啓弘さんの独立に関係しているようです。

第二の人生が必ずある

― 2007年に中小企業診断士資格を取得された頃は、企業に勤務していたんですよね。

啓弘さん(子):はい。中小企業診断士資格を取得して2年後の2009年に独立しました。

― 独立のきっかけは、何だったのですか。

新木啓弘さん

啓弘さん(子):実は、このサイトも関係があるんです。「メディアを診る」というコーナーで、『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか』という記事を執筆させていただく機会がありました。P.F.ドラッカーの『プロフェッショナルの条件』という書籍を取り上げた記事でした。その際、記事を執筆するために、じっくり書籍を読み込みました。すると、「企業の寿命は短くなっているけど、人の寿命は長くなっている。そうすると、いつか必ず新しいことを始める時期がくる」といったことが書いてあるんです。第二の人生が必ずある。いずれ次のキャリアがあるのであれば、早いほうがよい。そこで、子どもがまだ小さいいまなら動けると思い、独立しました。

― 「中小企業診断士の広場」とは、縁が深いようですね。ご両親は、息子さんの独立をどう思われたのでしょうか。

利雄さん(父):母親は、「啓弘がやりたいなら、やらせてあげよう」というスタンスでした。どちらかと言うと、僕のほうが独立診断士の厳しさをわかっていますので、ブレーキを踏む気持ちがあったと思います。勤め人であれば、収入面では安定しているので、もったいない気もしました。でも啓弘は、一度決めたことはやり通す性格です。だから、反対はしませんでした。

― お互いに中小企業診断士だからこそ、わかる部分もあるわけですね。

利雄さん(父):実は私自身も、独立を考えたことがあります。「池田総合研究所構想」というものをつくり、独立準備をした時期もありました。でも、商工会議所の仕事が面白くて、いままで辞めずに続けてきました。

― お父様も独立を考えた時期があったんですね。

利雄さん(父):啓弘は、40歳でよく思い切って独立したと思います。これから失敗や挫折を経験するかもしれない。でもそれを糧に、さらに強くなることができます。後悔するよりは、前に踏み出したほうがいい。どんな結果であっても、自分で選んだ道を進めば、後悔はしません。ただ、体調管理と家庭だけは大切にしてほしいですね。無理をしすぎず、息の長い活動をしてほしいと思います。

従業員満足を高めることが大切

― 独立後は、どのような活動をされているのですか。

啓弘さん(子):独立して2年が経ちました。1年目は前職の経験から、「情報セキュリティ」という専門分野を活かして活動しました。2年目になると、「経営」に関する仕事が増えました。アクションプランをつくるとか、そのプランをもとにPDCAを回していくなどの支援が増えてきています。

― 2年間活動してきて、どのようなことに気づきましたか。

啓弘さん(子):「情報セキュリティ」でも「経営」でも、従業員満足を高めることが大切です。たとえば「情報セキュリティ」では、従業員満足が高ければ、監視カメラをつけたり、ICカードを持たせたりすることばかりでなく、見知らぬ人がいたら声をかけるなど、人的対策が有効に機能します。私は、「従業員満足を高めるには、どうしたらよいか」という視点を、つねに持つようにしています。従業員が満足して働ける環境をつくることが、情報セキュリティの向上にもつながるのです。

― なるほど。従業員満足が大切なんですね。

啓弘さん(子):今後も従業員満足など、人にかかわることをやっていきたいと思います。中小企業診断士仲間と人材育成に関するプロジェクトを立ち上げたり、「ビジネス競争力を高めよう塾(通称・ビジ塾)」をやったりしています。

― ビジ塾とは、どのような活動ですか。

ビジ塾風景
ビジ塾風景

啓弘さん(子):月に1回、東京都荒川区で2時間くらいの勉強会を開催しています。ビジネススキルを強化することで、自社の持つ技術力をさらに活かせるのではないかという思いや、参加者同士のネットワーク形成にもつなげていければと思っています。この活動は、独立する前から温めていました。ボランティアというのは言いすぎかもしれませんが、地域貢献につながればと思っています。

― ユニークな活動ですね。そのほかに取り組んだことはありますか。

啓弘さん(子):東京商工会議所荒川支部で、事業承継委員会の仕事に携わりました。中小企業診断士の先輩にご紹介いただいた仕事です。まず事業承継アンケートをとり、中小企業診断士8名で分担して、インタビュー取材を行いました。最終的には、『あらかわの事業承継~経営理念の承継33社~』という冊子を作成しました。

― 中小企業診断士がチームを組んで、事業承継の調査をしたわけですね。

啓弘さん(子):事業承継というと一般的には、お金の面が中心になることが多い。相続税や贈与税がいくらかといった話ですね。でも、中小企業診断士の目で見れば、「経営の承継」という視点が出てきます。経営理念や事業の魅力をどのように承継していくかといった視点です。

― なるほど。経営の承継ですね。実際にインタビュー取材をして、気づいたことはありますか。

啓弘さん(子):事業承継がうまくいった企業は、世代の代わるタイミングでイノベーションを起こしていることが多いんです。後継者が新しい事業を始めるなどしてイノベーションを起こし、企業は成長します。そのことを現場で感じましたね。

出身地・徳島でも役立ちたい

― 独立2年間でさまざまな活動をしていますね。今後、取り組んでいきたいことはありますか。

啓弘さん(子):東京で独立しましたが、徳島県にも思い入れがあります。だから、出身地でもお役に立ちたいと思っています。徳島県在住の中小企業診断士の方もいますので、相互補完・連携できるような取組みをしたいと思っています。

利雄さん(父):徳島県で独立している中小企業診断士は、あまり多くありません。独立系の中小企業診断士は、15名くらいでしょう。だからこそ、ニーズもあると思います。

啓弘さん(子):そうした中小企業診断士と連携していきたい。東京で活動していれば、さまざまな情報が入ってきますので、それを徳島に届け、共有することもできます。今後は、徳島での活動を増やしていきたいですね。

― 最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

左:新木啓弘さん(子)、右:新木利雄さん(父)

利雄さん(父):私自身、中小企業診断士試験合格が、精神的に大きな支えとなりました。中小企業診断士を目指している方は、ぜひ合格をつかみとってほしいです。中小企業診断士であれば、どのような道を歩んでも、人生を切り拓いていけると思います。社会の仕組みもわかりますし、大きな自信につながるでしょう。

啓弘さん(子):個々に蓄積されているノウハウを、どんどん発信してほしいと思います。独立でも企業内でも、かまいません。情報発信しないと、何も伝わりませんからね。みんなで中小企業を盛り上げていきたいです。

(おわり)

■新木 利雄(しんき としお)
阿波池田商工会議所専務理事、中小企業診断士。1946年生まれ。日立製作所勤務を経て、阿波池田商工会議所に入所。中小企業相談所長、事務局長などを務める。2011年、中小企業庁長官賞(経営改善普及事業発足50周年記念表彰)を受賞。
阿波池田商工会議所

■新木 啓弘(しんき よしひろ)
新木経営情報研究所代表、中小企業診断士、ITコーディネータ。1970年生まれ。2007年4月中小企業診断士登録。ビジネス競争力を高めるための経営基盤として、情報セキュリティマネジメントシステムの構築を推奨。身の丈に合った構築支援により、好評を得ている。そのほか、経営相談、IT経営応援隊事業等の活動を主に行う。経営資源の情報にスポットを当て、経営に役立つ情報の利活用を模索中。
新木経営情報研究所