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診断士カレイドスコープ

平成22年中小企業経営診断シンポジウム報告

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第2回】高度な提案力が中小企業を変える!

取材日:2010年11月17日

株式会社壱番屋の宗次徳二氏から、真摯に経営に取り組む重要性についてお話をいただいた午前に続き、午後の分科会でもそれらを現場で実践されている事例発表が相次ぎました。今回は、その分科会の様子をお伝えします。

経営者の信頼を得て、オーソドックスな診断手法を使いこなす重要性

中小企業庁長官賞対象の4名の方から事例発表があった第1分科会は、会場から人があふれ、あわてて通路に椅子を入れて対応する一幕もあるほどの熱気に包まれていました。各賞に関しては、審査員の方に賞の選定を悩ませるほどの、すばらしい事例発表が続きました。

東京支部・大石幸紀氏
東京支部・大石幸紀 氏

その中で、見事に「中小企業庁長官賞」に輝いたのは、東京支部・大石幸紀氏による「生産管理手法を農業に応用し、農林水産大臣賞へと導いた経営革新支援事例」でした。大石氏の事例で感じたことは、経営者に心から信頼しきってもらうことの大切さと、オーソドックスな手法を使いこなし、継続して実行していくことの重要性です。当日のプレゼンテーションにもにじみ出ていましたが、大石氏の実直で誠実な支援を受けられた支援先の社長は、専門家派遣による計画立案が終わった後も、大石氏に計画実行まで継続して支援してほしいと、民間契約を依頼されました。

大石氏は、経営革新の第一の成功要因として、社長の人格とリーダーシップを挙げられています。その社長に絶対的な信頼を寄せられていることから、計画が絵に描いた餅ではなく、確実に実行に移され、3年間で売上が1.4倍に拡大する要因となっていることも見逃せません。

今回、大石氏が採用したコンサルティング手法は、生産効率の向上、数値に対する意識改革、パート社員の能力開発、市場外販売の推進、の4本柱です。審査員の方からも、オーソドックスな手法により経営革新を実行された点について、評価するコメントがありました。また、そのほかにも、経営診断を実績につなげた点、農商工連携の成功した診断事例であること、大石氏の人間性が表れたプレゼンについても、高い評価がありました。

新分野、新手法による経営革新事例の数々

大石氏の事例に勝るとも劣らない3名の方も、各賞を受賞されましたので、ご紹介いたします。

大阪支部・太田恵太郎氏
大阪支部・太田恵太郎 氏

日刊工業新聞社賞を受賞されたのは、大阪支部・太田恵太郎氏による「中堅企業K社の支援提言策」―中小企業支援に効果的な「マトリクス図表」による企業診断の「見える化」手法の提言―です。

「ジョハリの窓」のフレームを活用して、さまざまな切り口から縦軸と横軸の要素を設定し、診断企業の課題を「見える化」したうえで、実際に2年間の支援において実績を挙げられている事例でした。「見える化」することで、今後経営者が何を目指し、どう実現するかの具体的なアクションを起こしやすくなるといった点や、あらゆる中小企業の支援に活かせるといった汎用性の高い点など、非常に効果的な手法です。審査員からも、各マトリクスに位置する項目を動かすことにより、さらなる応用や発展が利くといった点は、高く評価されました。

愛知県支部・赤司征大氏
愛知県支部・赤司征大 氏

日本経営診断学会会長賞を受賞されたのは、愛知県支部・赤司征大氏による「大規模歯科医療法人の革新支援~教育プログラムの策定を通して~」です。

日本最大規模の歯科医療法人に対し、「新人歯科医師に対する体系化された教育プログラムの製作・導入・実行・定着」を目指して、目指すべき歯科医療のモデル化から、現場を巻き込んだオリジナルテキストの製作、教育の実行機関としての指導医会議の発足、新人歯科医師の採用プログラム策定まで、幅広く経営革新を行っています。これらの取組みは、業界で類を見ない成功を収め、すでに他法人への導入も始まっています。歯科医療後進国に対する教育プログラムの輸出など、今後のビジネスチャンス拡大の可能性も秘めています。審査員からは、今までにない歯科医療というユニークな分野でもあり、社会性が高い事例であると、高い評価がありました。

長野県支部・佐藤哲也氏
長野県支部・佐藤哲也 氏

中小企業診断協会会長賞を受賞されたのは、長野県支部・佐藤哲也氏による「ミュージアム業界の経営革新事例」です。海外を含めた多数の他施設の視察や、多くの書籍を丹念にあたるなど、徹底した調査・分析を行われています。支援先であるM館の知名度とCSを上げるために、範囲の経済と連結の経済の追求、2つのミュージアムの有機的関連づけ、シナジーと戦略同盟等のさまざまな策を組み合わせて、全体最適化を追求されています。

審査員からは、非営利組織への経営革新という新しさと、体系的な手法が確立されていることに対し、高い評価のコメントがありました。非営利分野に職域を拡大することで、中小企業診断士の存在感を高めていくことができることを感じさせる事例でした。

各賞を受賞された4名の方の事例は、今回のテーマでもある「今、成功する経営革新とは。」という問いに答えてくれるヒントを、たくさん示唆してくださいました。各事例の成功要因から学び、応用・実践することで、さらなる経営革新の広がりの可能性を感じさせる、有意義な会となりました。

(つづく)

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