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平成22年中小企業経営診断シンポジウム報告

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第1回】経営革新を支える「まごころの経営」

取材日:2010年11月17日

平成22年11月17日(水)、東京都文京区の東京ガーデンパレスにて、平成22年度「中小企業経営診断シンポジウム」が開催されました。今回は、このシンポジウムの模様をレポートいたします。

中小企業診断士の提案力が結集したシンポジウム

毎年、この時期を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。例年、11月に行われている中小企業経営診断シンポジウムが、今年も盛大に行われました。

中小企業経営診断シンポジウムは、中小企業の健全な発展のために、経営診断や支援技法について深く研究し、その普及を図ることを目的として毎年開催されています。

来場者

今回の統一テーマは、「高度な提案力は中小企業診断士から」です。このテーマに沿って、中小企業診断協会各支部(支会)およびその会員グループから、研究論文や研究報告書を募集しました。それらの中から、事前審査で選ばれた応募者が各分科会に分かれ、シンポジウム当日に調査研究報告等の発表を行いました。各分科会でプレゼンテーションを行い、第1分科会では最優秀者に「中小企業庁長官賞」、優秀者に「中小企業診断協会会長賞」等が贈られました。全国から多くの中小企業診断士が集まるとともに、中小企業支援機関、中小企業の経営者、金融機関関係者にもお集まりいただき、大きな盛り上がりをみせました。

シンポジウムがスタート

当日はあいにくの雨模様で、参加率の低下が懸念されましたが、400名の定員をオーバーする445名の方にご出席いただきました。基調講演や各分科会では、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。これは、基調講演や分科会で毎年多くの提言、情報発信、情報交換が行われている当シンポジウムへの期待の高さを示しています。

開会後の10時35分より、新井信裕・中小企業診断協会会長、徳増有治・中小企業庁経営支援部長より開催のご挨拶があり、シンポジウムがスタートしました。

中小企業診断協会会長・新井信裕氏
中小企業診断協会会長・新井信裕 氏
中小企業庁経営支援部長・徳増有治氏
中小企業庁経営支援部長・徳増有治 氏

株式会社壱番屋 宗次徳二氏の基調講演

株式会社壱番屋・宗次徳二氏
株式会社壱番屋・宗次徳二 氏

その後、株式会社壱番屋創業者特別顧問である宗次徳二氏より、「後継者は、経営者の背中を見て育つ」と題して、基調講演が行われました。

株式会社壱番屋は、1,200店舗を超えるカレーチェーン店で、創業以来20年間、増収増益を続けています。1981年には、当時では画期的な制度として話題となった社員向けの独立支援制度「ブルームシステム」を導入し、この制度により店舗網が大きく拡大していきました。全国展開されていますので、CoCo壱番屋カレーのファンの方も多いのではないでしょうか。

株式会社壱番屋の経営の根幹にあるのは、「経営者はよそ見をせず、経営に身をささげる」という信念です。宗次氏は会長職を退くまで、どんなに夜遅くまで働いても、翌朝3時55分には起床し、5時前には出社される生活を続けていました。出社後は、3時間半かけてお客様からのアンケートに目を通します。その後、掃除や会議、店舗への巡回を行い、1日平均で約15時間半を仕事に費やします。まさに、経営に身をささげる毎日を過ごされていました。 

朝から晩まで徹底的に働き、実際に店舗でお客様と向き合い、お客様のことを考え続ける。お客様のことが見えなくなり、本質を見誤る恐れがあるので、ライバルの動向は気にしない。経営者自らが率先して働くことにより、社員はその背中を見てついてきてくれる。このように、まさに「経営に身をささげる」という言葉を日々実践されているお話が続きました。

経営資源の不足に悩むことが多い中小企業に対し、宗次氏は自らのご経験を踏まえて、「経営資源は中途半端にあるより、徹底してないほうがいい」と示唆されました。経営資源がなければ、お客様に対してまごころと感謝を自然に持つことができる。お客様にまごころを込め続けることが、経営に必要だと強調されていました。すべてのお客様をまごころで出迎え、まごころでお見送りする。そして、店長の報告だけでなく、自ら直接、お客様の声を拾う。こうしたまごころの経営が、CoCo壱番屋のファンを増やし続けている秘訣なのだと感じました。

中小企業診断士が学ぶべき"姿勢"や"心"

宗次氏からは、中小企業診断士に向けて、「経営者に"姿勢"や"心"を説いてほしい」というアドバイスをいただきました。

経営革新に必要な知識やスキルは、最低条件としてもちろん必要です。しかし、それらの前提となる"姿勢"や"心"を経営者にアドバイスしていくことも、同時に求められています。そして、私たち中小企業診断士も、それらを磨き続ける必要があります。

その"心"を育てるためには、何か特別なことをするのではなく、お客様のことを考え続ける、早起きをして率先して働く、自分の周りだけではなく、ご近所も含めて掃除を行う、思いやりや感謝の気持ちを持ち、言葉で伝えるといった、当たり前のことを当たり前に続けることが大事だと強調されていました。清貧の幼少時代のご苦労されたお話など、ユーモアを交えながら軽やかにお話される姿に、受講者の皆様は引き込まれつつ、熱心にメモをとる姿も目立ちました。

今回のシンポジウムのテーマでもある、「高度な提案力は中小企業診断士から」を発揮する前提条件でもある、"姿勢"や"心"について多くの学びの機会をいただいた、宗次氏のご講演でした。

(つづく)

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