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中小企業診断士の広場

診断士カレイドスコープ

映像の力で診断士の価値を高める

文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第3回】映像という武器で診断士の価値を高めていく

取材日:2010年3月26日

感性や世界観のぶつかり合いから生まれる面白さを、映像で表現してきた服部さんですが、中小企業診断士となり、新たな価値を映画に吹き込んでいく活動も始められています。

映画に中小企業診断士のスキルを活かしていく

映画「音の城♪音の海-SOUND to MUSIC-」より ©アップビートビジョン
映画「音の城♪音の海-SOUND to MUSIC-」より
©アップビートビジョン

― 今の服部さんのスタンスだと、作品として発表できるのか、といった不安をつねに抱えますよね。商業化できるかどうかわからないので、ポリシーを曲げて営利を優先したくなるときはありませんか。

そこで、映画と中小企業診断士が結びついてくるんです。昔の映画は、制作ありきでした。映画は芸術だという共通理解があったんです。コストを考えるより、まずよいものをつくろう、という考えです。

― プロダクトアウトの発想ですね。

そのとおりです。しかし、今は映画界もマーケットインの発想になってきています。市場調査に基づいて、お客様が求めるものに合わせて脚本を書きます。そして、入場者数やその後のDVD化なども検討したうえで、売上とコストを試算し、商業化していくわけです。

― 脚本家が書く前に、商業ベースに乗るかどうか、全体のデザインをする方がいるわけですね。

そうですね。独立系の映画配給・制作会社はリーマンショック以降、軒並み業績不振に陥り、苦しんでいます。映画の世界も、よいものをつくれば売れるわけではなくなってきました。

― 利益がとれるかどうかで、作品にするかどうかが決まるということですか。

はい、そういったやり方も必要です。しかし、それだけだと映画の多様性は失われていきます。売れるものだけで映画をつくっていいのかというと、そうではないと思います。それだけでは、映画は衰退してしまいます。映画は、文化や芸術としての側面も強いのです。しかし、文化や芸術として映画産業を支える政策は、フランスや韓国といった海外では整備されているのに、日本ではほとんどありません。私は商業的な側面も大切ですが、文化的要素や芸術性も追求した映画を撮っていきたいと思っています。

― 映画を撮りながら、中小企業診断士を目指されたのは、それと何か関連性があるのですか。

大手の映画興行会社は、商業ベースに乗せる手法をとって成功していますが、私が撮るようなニッチな作品は、テーマもみる人も限られています。自ずと低予算のプロジェクトになってしまいます。ターゲットを限定したり、低予算で進めたりするのは、中小企業のあり方と一緒だと思ったんですね。そして、自分が撮りたい映画を続けるためには、経営やマネジメントを知っているほうがよいだろうと思い、中小企業診断士の勉強を始めたのです。大手では商業ベースに乗せるために、いろんな専門家が集まって知恵を出し合いますが、芸術性の高い映画を撮るときには予算も限られるため、マルチプレーヤーとしてプロジェクト全体に精通する少数のキーマンが不可欠で、その求められる資質は中小企業診断士と同等のものなんですね。

― 芸術性を担保しながら、経済活動としてまわる仕組みをつくる人が必要なわけですね。

そうですね。それでしか映画の多様性は確保できないのではないか、と思ったんです。映画の制作現場は過酷な労働状況なので、特に中小の制作会社の方は好きだからやっているという側面が大きいのですが、きちんと経済活動に組みこまなければならないと思います。

クリエイティブな分野だからこそ、中小企業診断士が生きる

服部智行さん
服部 智行 さん

― 芸術を経済活動に乗せるのが、中小企業診断士の役割の一つなんですね。

映画の世界は右脳、経営の世界は左脳と思われますが、どんなクリエイティブ性が求められる世界でも商業と切り離すことはできないので、診断士的な能力はどこでも求められているのだと思います。その両方をつなぐのは診断士的な要素なんですね。

― なるほど。映画以外の活動もお聞きしたいのですが、中小企業診断士としてはどのような活動をされていますか。

週2、3日は、区役所の相談窓口や商店街診断などをやっています。

― 一見、映画と関連性は低そうですね。

特に偶然性を大切にして映画を撮っていきたいと思っていますので、どこかでつながってくるのではないかと思います。実際、商店街の活性化のための映画を製作しようというプロジェクトも立ち上がりつつあります。

― 服部さんは、映画を撮りながら中小企業診断士になられたわけですよね。中小企業診断士になる前後で、映画の撮り方や取組み方は変わりましたか。

資格を取った後に独立しましたので、時間を自由に使えるようになったことが大きいですね。そのほかには、マーケティングのセオリーに沿って広告や販売促進を行えるようになったことですね。ターゲットに合ったチラシのデザインやアプローチを工夫しています。パブリシティについても、それまではあまり知りませんでしたが、今は積極的に仕掛けています。それらのスキルを総合的に高め、芸術性の高い映画撮影を継続できる仕組みづくりができたらと思っています。

― 今回の映画「音の城♪音の海-SOUND to MUSIC-」は、診断士業界でも話題になっていますよね。

それはありがたいですね。そういう意味でも、中小企業診断士のネットワークは大きな力になっていますね。中小企業診断士はあらゆる可能性を考えている方が多いので、他の中小企業診断士の方と連携して、新しい価値を生み出せていけたら面白いですね。

― 最後に、服部さんにとって中小企業診断士とは何ですか。

自分で事業をつくり出せる人、仕組みをつくれる人が真の中小企業診断士であり、コンサルタントなのではないかと思います。私は、映画業界の中でそれができたらいいなと思っています。

― 受験生の皆様にメッセージをお願いします。

私は、受験勉強中は映画制作を中断していました。勉強中は、ほかを犠牲にしてでも打ち込む価値がある試験ですし、そうしなければ合格するのは難しいと思います。合格するといろんな可能性が拓けてきますので、合格を目指して頑張ってほしいです。

― 中小企業診断士の皆様にメッセージをお願いします。

中小企業診断士の皆さんは、さまざまな事業の可能性を広く持って活動されていますので、映像を扱うことで付加価値を生み出せることがあれば、ぜひ連携させていただきたいです。ぜひ、皆さんと一緒に中小企業診断士の知名度を高めていきたいですね。

映画監督というクリエイティブな分野と、中小企業診断士という理論を扱うフィールドは、一見関連性が低いように思われます。しかし、服部さんのお話をお聞きしていると、どちらも前提条件を疑う必要性があったり、マーケットインの発想が求められていたりと、たくさんの共通点が見出せました。映像という手段を用いて他の中小企業診断士とも連携していきたいという服部さんですが、今後のますますのご活躍を期待させるインタビューでした。

(おわり)

服部 智行(はっとり ともゆき)
2007年中小企業診断士登録。1977年北海道生まれ。大学では哲学を専攻。外資系メーカーに勤めながら、夜間は映画学校に通い、2003年視覚障害者が映画鑑賞するための音声ガイドづくりにスポットを当てたドキュメンタリー映画「City Lights」を発表。2005年、岩井俊二プロデュースのラジオドラマ"少女毛虫"(主演:南果歩、夏帆)の脚本を担当。2010年5月には、知的障害者と音楽療法家、音楽家が新しい音楽をつくり出す過程を描いた「音の城♪音の海 -SOUND to MUSIC-」の監督も務め、同5月29日より公開予定である。
映画『音の城 音の海 SOUND to MUSIC』オフィシャルサイト