経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

診断士カレイドスコープ

映像の力で診断士の価値を高める

文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第1回】"本質"を求めて哲学と映画の道へ

取材日:2010年3月26日

今回は、中小企業診断士として3年目を迎えた服部智行さんにスポットをあててお話をおうかがいしました。服部さんは中小企業診断士と映画監督の二足のわらじを履く異色の存在です。そんな服部さんの活動に迫ってみました。

ドキュメンタリー映画を撮る中小企業診断士

服部智行さん
服部 智行 さん

― 服部さんは中小企業診断士でありながら、映画監督をされているそうですが、この5月29日に服部さんが監督をされた作品「音の城♪音の海-SOUND to MUSIC-」が公開されるそうですね。

そうなんです。知的障害者が音楽療法家や音楽家とセッションや対話を重ね、新しい音楽を生み出していくドキュメンタリー映画です。この映画のサブタイトルが"SOUND to MUSIC"であり、"音"から"音楽"へ変わっていくプロセスをテーマに撮影しました。

― 作品本篇をみせていただきましたが、一見ノイズとも思われる即興を聴いて"これは音楽なのか?"という疑問を音楽家が持つなど、音楽の定義が問われている場面が多くみられました。

音楽は聴く人の主体によって変わるものなので、まずは"個人的"に音楽と感じるかどうかで定義されます。しかし、聴く人が複数いた場合は、それが音楽かどうかは"社会的"に定義されるわけですよね。コミュニティや文化、民族というくくりで、音楽かどうかが決まってくるわけです。そういう"社会的"に音楽の発生するところを、ドキュメンタリーとして描きたかったのです。

― 音楽が社会的に発生する過程を伝えた映画なんですね。

聞く人がいるからこそ、音楽は成立するという考え方もありますので、最終的にお客様がいる公演を通じて、音楽が創造された過程を描くことができました。

前提を疑う大切さ

― 大学では哲学を学んでおられたそうですね。どういうきっかけで哲学の道に進まれたのですか。

小学生のころから、この世界は自分自身の「夢」ではないか?と疑う感覚があったんですね。浮世離れした感じですね(笑)。当時は哲学のことは知りませんでしたが、そんな疑問が子どもの頃からありました。自分の世界が夢であれば、周りの人の世界はいったいどうなっているんだろう、という疑問ですね。

― 一般の人は、ふだんそんなことを考えないですよね。

確かに世の中で起こっていることは当たり前のことだと捉えて、本当にそうなのかと前提を疑うことは少ないですよね。そして、私たちはその前提の上に、論理を組み立てて考えていきます。でも、それは危ないことではないでしょうか。

― 前提を疑わないときの私たちは、固定概念を植えつけられた状態にあるというわけですか。

そういうことですね。自明に思っていることを疑ってみる態度は、中小企業診断士にとっても大事ですよね。中小企業診断士第2次試験も、固定観念や先入観があると受かるのは難しいのではないでしょうか。テレビ一つみるにしても、情報操作をされていないか、どういうことを狙って映像をつくっているのか、といった視点を持って物事を捉えることは大切だと思っています。それがないと、コンサルタントとしてもうまくいかないのではないでしょうか。

映画の世界へ

映画「音の城♪音の海-SOUND to MUSIC-」より ©アップビートビジョン
映画「音の城♪音の海-SOUND to MUSIC-」より
©アップビートビジョン

― 大学で哲学を学ばれた後の経歴について教えてください。

もともと映画に興味があったので、映画の編集機材や編集ソフトを扱う外資系メーカーで働いていました。そこで働きながら、2年間映画の専門学校にも通っていました。フィクションの映画を制作するコースを専攻していたのですが、卒業後に制作したのはドキュメンタリー映画でした。私にとって初めての監督作品である「City Lights」です。

― 「City Lights」という作品は、どういう経緯で生まれたのですか。

映画機材を扱う会社に勤めているときに、映画の中での音の使い方に興味を持ちました。そんな中で、目のみえない方が映画を鑑賞することを支援しているボランティア団体"シティライツ"と出会いました。映画を、目のみえない方が想像して楽しめるようにするというのは一体どういうことだろうと、興味を持ったのです。それをテーマにすることで、映画のあり方や可能性についてみえてくると思ったんですね。

― 障害者を対象にした作品が続いていますが、服部さんの中で障害者ありきのテーマ設定をしているわけではないのですね。

そうですね。しかし、障害者の方はいろんな不自由を抱える中で、それを乗り越えようといろんな感性を磨かれている方が多いので、その考え方や視点はとても参考になります。物事の表面ではなくて本質をつかむことの大切さを教えてもらうことが多く、結果として私が撮影するテーマの対象になっているのです。

(つづく)

服部 智行(はっとり ともゆき)
2007年中小企業診断士登録。1977年北海道生まれ。大学では哲学を専攻。外資系メーカーに勤めながら、夜間は映画学校に通い、2003年視覚障害者が映画鑑賞するための音声ガイドづくりにスポットを当てたドキュメンタリー映画「City Lights」を発表。2005年、岩井俊二プロデュースのラジオドラマ"少女毛虫"(主演:南果歩、夏帆)の脚本を担当。2010年5月には、知的障害者と音楽療法家、音楽家が新しい音楽をつくり出す過程を描いた「音の城♪音の海 -SOUND to MUSIC-」の監督も務め、同5月29日より公開予定である。
映画『音の城 音の海 SOUND to MUSIC』オフィシャルサイト