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農商工連携支援コンサルタントスキルアップコース受講レポート

文:新木 啓弘(中小企業診断士)安田 孝志(中小企業診断士)山下 哲博(中小企業診断士)

【第2回】東京都八丈島

八丈島実地研修および講義研修の意義

平成21年10月29~30日、私はNPO EASTによる農商工連携支援コンサルタントスキルアップコースの実地研修として、八丈島での漁業体験に参加しました。この研修の目的は、漁師で「NPO法人八丈島産業育成会」の理事長でもある宮崎岩一さんにナビゲートしていただきながら、八丈島の漁業について体験学習を通して理解を深め、島の地域活性化について地元の方と意見交換を図ることです。

漁業体験と漁港視察を通して

漁船に乗り込んだ私たち

八丈島空港に到着後、さっそく漁に出る準備を整え、八重根漁港に移動しました。あいにくの雨の中、カッパに身を包み、漁船に乗り込んだ私たちは、カツオ漁に向かいました。カツオ漁は、自ら竿を持って釣る一本釣りが有名ですが、八丈島では「ひきなわ漁」とよばれる手法を用います。ひきなわ漁とは、船に大きな竿を数本取りつけ、トンボの羽のように左右に竿を広げ、魚の群れと一緒に漁船を走らせながらエサに似た釣り針(バケ)を引いて、食いついたところを釣り上げる手法です。本来は沖まで出て漁をするのですが、特別に港から十数分の近場で漁をさせていただきました。近場にもかかわらず、約1時間回遊しただけで十数匹ものカツオを釣り上げることができ、魅力的な漁獲地であることがわかりました。

しかしながら、現在の八丈島では、漁師の高齢化や後継者不足が進み、卸売価格の低下や消費者の食生活の変化なども起因して、状況は深刻です。今回の視察で感じたことは、消費者との食文化の違いを理解していないことによる機会損失が発生しているのではないか、ということです。たとえば、私たちがよく煮付けで食べているキンメダイが、八丈島では刺身で食べるのが主流であるといったように、「これは売れないだろう」と思い込んでいる魚が実は、消費地では高価だったり、重宝されたりする可能性があると感じました。

私たちは、八丈島にある4つの漁港すべてを視察しました。その1つである末吉漁港には温泉があり、無料で開放されています。この海岸線はサーフィンポイントでもあり、島外から多くの人々が訪れるため、温泉が住民と島外者の交流の場として貴重な資源になっています。ただ、目立った標識や看板がなく、温泉があることに気づきにくい点や、飲食などの付随したサービスが近辺に存在していない点など、今後検討の余地があるのではないかと思いました。

島の魅力を高める取組み

藍ヶ江水産(くさや加工)では、地域の特産であるくさやを全国の人々にも食べてもらうために、明日葉茶を用いてにおいを抑えたり、「くさやピザ」などの商品を開発したりしています。藍ヶ江水産の代表者は島外出身で、飲食店経営からスタートし、事業を拡大させながら、くさや加工を手がけています。30代前半の経営者が積極的にさまざまな事業や地域活性化策に取り組むのをみて、よい刺激になりました。

また、山田屋(酒店)では、八丈島の焼酎を観光客に販売するだけでなく、豊富にワインを取りそろえ、各種イベントや情報発信を行うことで、住民にワイン文化を根づかせる活動を積極的に行っています。ここでは、ワインに合うおつまみとして、「くさやチーズ」も販売しています。ためしに試食をしてみましたが、くさやとチーズの相性が大変よく、絶品でした。チーズの風味を活かしつつ、くさやのにおいを抑えた「くさやチーズ」は、日本のみならず、欧米の方にも受け入れられるのではないかと思いました。

このほか、平成20年に農商工連携の取組みとして採択された、株式会社間仁田建設を中心とする「八丈島ライブロック・コーラル研究会」の農商工等連携対策支援事業では、八丈島に新たな産業を興すことで雇用を創出し、地元の若者の定着化につながることが期待されています。

実地研修で感じたこと

この実地研修をとおして、地域活性化には、組織形成とマーケティングにおける働きかけが必要だと感じました。具体的には、地元住民との意志を共有し、目標達成に向けて一丸となるための"内向き"の働きかけと、地元の商品・サービスにどのような魅力があるのかを適切な方法で適切なターゲットに伝達する"外向き"の働きかけです。これらを重要なキーワードとし、八丈島での経験を活かして今後、農商工連携や地域活性化支援に取り組んでいきたいと思います。

(つづく)

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