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中小企業経営診断シンポジウム/中小企業診断協会創立55周年記念大会報告

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)三上 学(中小企業診断士)

【第4回】創立55周年記念大会を開催

取材日:2009年11月6日

2009年11月6日、「中小企業診断協会創立55周年記念大会」が開催されました。中小企業経営診断シンポジウムが開催された前日同様、多数のご来賓、会員の皆様を迎え、大変な盛況となりました。今回は、記念式典に続いて行われた(株)ちばぎん総合研究所取締役社長・額賀信氏による記念講演の模様をレポートいたします。

額賀信氏((株)ちばぎん総合研究所取締役社長)による記念講演

額賀 信 氏
額賀 信 氏

「中小企業診断協会創立55周年記念大会」の記念講演として、株式会社ちばぎん総合研究所取締役社長の額賀信氏をお招きし、「大不況を乗り越える経営改革と中小企業診断士の役割」と題した講演が行われました。日本銀行出身の額賀氏は、新潟大学や神戸大学、城西国際大学などの非常勤講師を歴任し、政府委員をはじめとする要職を数多く務めるエコノミストです。

講演では、現在の世界経済の問題点や資本主義の抱える課題、人口減少社会に突入する中で景気低迷の続く日本経済が今後とるべき成長戦略や、中小企業診断士の役割について、非常に示唆に富んだお話を伺うことができました。

額賀氏は、現代の国際経済が資本主義の問題点を内包しつつ、バブルの発生や多極化、中国の台頭など多くの不確定要因も抱えている点を指摘しました。そのうえで、「現在、内需主導の成長戦略が議論されているが、これに偏るのは誤りである」として、リーマンショック後の世界情勢や人口減少社会となったわが国の現状を踏まえ、内需主導による成長の難しさや、需要と供給の時間差問題を分析するとともに、成長を維持するためにどのような戦略をとるべきか、解説を行いました。

わが国の成長戦略

わが国がとるべき成長戦略については、「内需主導に偏らず、外需をいかに有効活用するかが重要である」と述べました。具体的な内容は、以下のとおりです。

<内需主導の危うさ>

  • 世界同時不況の発生以来、主要国の中でわが国の景気の落ち込みが特に大きかったのは、輸出への過度の依存が原因と考えられる。これが、「内需主導の成長を図るべきだ」という意見につながっている。
  • 「内需主導の成長」とは、生産性を高め、技術革新により新規需要を生み出そう、という考え方である。しかし、技術革新によるイノベーションは簡単ではなく、仮に成功しても、商品化され、消費されるまでには多くの時間がかかる。
  • 人口減少社会では、技術革新を図っている間にも需要がどんどん減っていく。需要不足経済に陥りやすいため、高水準の失業が慢性化していく可能性が高い。
  • 需要が減少するとお客様が減り、売上減少となって企業経営を直撃する。こうした理由から、需要の落ち込んだ社会が生産性を上げていくことは非常に困難である。

<世界経済に適応し、外需を取り込むことの重要性>

  • 人口減少社会のわが国では、国、企業とも、外需や輸出なしに持続的に成長していくことは難しい。
  • グローバルな競争に加わることで、国の活力が生まれる。今後伸びていく世界需要への適応力を高め、需要の増加を狙うべきである。
  • 経済活力を維持するためには、「需要をどのように高めるか」というアプローチが不可欠である。
  • 生産性を上げるためにも、まず需要に着目し、外需を取り込むことで市場の拡大を図ることが、有効な成長戦略である。

必要な経営対応

額賀 信 氏
額賀 信 氏

また額賀氏は、中小企業の経営者が今後対応していくべきこととして、以下の6点を指摘しました。

・伸びてくる世界需要に適応すること
――世界需要は、長期的には必ず伸びてくる。輸出や海外進出、海外投資などでその需要を取り込み、海外経済と結びつくことが重要である。

・景気がよくなったと思わないこと
――経営計画策定に当たっては、「景気がよくなったとしたら」といった甘い期待を捨て、「現在の厳しい状況を前提として、どのように会社経営を維持していくべきか」を考えることが大切である。

・使えるお金を多めに用意しておくこと
――わが国の金融システムは安定しているものの、何かのきっかけで動揺するおそれもある。取引先が倒産するリスクも念頭に置き、トップがきちんと資金繰りをみることが重要である。

・長く続けること
――日本企業の特色は、安定した社会や経済体制を有してきた結果、長寿企業や老舗企業が多いことである。組織を存続させるノウハウを蓄積し、長く続けることを考えて経営していくことが重要である。

・世帯構成の変化に着目すること
――わが国の人口は減少しているが、世帯総数でみると、「単独世帯」と「一人親と子どもの世帯」を中心に、2020年までは伸び続ける。それにともなって、住宅需要や家具・家電製品の需要も増えていく。従来の家族構成にとらわれず、伸びる世帯をターゲットに入れることが重要である。

・人の来る地域にすること
――地域の発展にとって、人が来てくれることは重要な力になる。人が来れば、普通に商売をやっても儲かるが、人が来なくなった地域で儲け続けることは難しい。地域にとってもっとも基本的な商品となるのは「観光」だが、地域発展のためには観光産業だけでなく、地域全体で考えていく必要がある。

中小企業診断士の役割

最後に、「今後、中小企業診断士が、わが国においてどのような役割を担うべきか」について、額賀氏からの期待感をお聞きすることができました。主な内容は、以下のとおりです。

  • 「世界から離れては、日本という国が成り立たない。中小企業診断士の役割は、世界の大きな流れを敏感にとらえ、多忙な経営者に対して『世界で何が起きていて、何が問題なのか』、『将来どういう大きな変革があるか』を、絶えず伝えていくことである」
  • 「中小企業診断士は、自ら地域の活性化にかかわっていくことが求められる。なぜならば、彼ら自身も地域の重要な一員だからである。中小企業診断士が将来的に安定収入を得ていくためにも、地域づくりに参加し、貢献していく姿勢が重要である」

私たちは日ごろ、多忙を理由に、目先の話題のみに心を奪われ、近視眼的な考えに陥りがちです。額賀氏の講演は、長期的な視点で戦略を考えることの重要性について、あらためて考えるよい機会となりました。

(つづく)