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中小企業経営診断シンポジウム/中小企業診断協会創立55周年記念大会報告

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)三上 学(中小企業診断士)

【第1回】第1日目――変化をチャンスに変えるシンポジウムの開催

取材日:2009年11月5日、6日

2009年11月5日(木)に「中小企業経営診断シンポジウム」が、翌6日(金)に「創立55周年記念大会」が、東京都千代田区のホテルグランドパレスにて開催されました。今回は、そのシンポジウムと記念大会の模様をレポートいたします。

半世紀以上にわたり中小企業の発展をサポート

社団法人中小企業診断協会は、2009年10月に記念すべき創立55周年を迎えました。これにともなって、毎年この時期に行われている「中小企業経営診断シンポジウム」だけでなく、協会の半世紀以上にわたる活動を支援してくださった関係者の皆さまへの感謝と、諸先輩方や現会員約8,700名の活動を記念し、「創立55周年記念大会」もあわせて開催されました。

「日本の企業を強くするチカラ」が結集した
「日本の企業を強くするチカラ」が結集した

「中小企業経営診断シンポジウム」は、中小企業の健全な発展のために、経営診断や支援技法について深く研究し、その普及を図ることを目的として、毎年開催されています。今回の統一テーマは、「経営革新で時代の変化をチャンスに~企業とともに未来を創る中小企業診断士~」です。このテーマに沿って、協会各支部(支会)およびその会員グループから研究論文や研究報告書を募集しましたが、事前審査で選ばれた応募者が各分科会に分かれ、当日に調査研究報告などの発表を行いました。

各分科会でプレゼンテーションが行われ、最優秀発表者には「中小企業庁長官賞」、優秀発表者には「日刊工業新聞社賞」「日本経営診断学会会長賞」「中小企業診断協会会長賞」などが贈られました。全国から多くの中小企業診断士が集まるとともに、中小企業支援機関、中小企業経営者、金融機関関係者にもお集まりいただき、「日本の企業を強くするチカラ」が結集した熱い1日となりました。

シンポジウムのスタート!

新井 信裕 氏
新井 信裕 氏

当日は、631名の参加があり、会場は朝から熱気にあふれていました。これだけの中小企業診断士が全国から集まる機会はなかなかないため、シンポジウム開始前には旧知の友と歓談をする方、近況を報告し合う方、情報交換をする方など積極的な交流が図られ、当シンポジウムが全国の中小企業診断士にとって非常に有意義なコミュニケーションの場として根づいていることを実感しました。そして10時30分、新井信裕・中小企業診断協会会長の開催挨拶を皮切りに、シンポジウムがスタートしました。

(株)星野リゾート代表取締役社長・星野佳路氏の基調講演

星野 佳路 氏
星野 佳路 氏

その後、シンポジウムの目玉とも言える、(株)星野リゾート代表取締役社長・星野佳路氏による「日本製リゾートへの挑戦~ホテル・旅館の現状、将来、再生事例紹介~」と題した基調講演が行われました。

(株)星野リゾートは星野氏を中心に、経営難に陥った数々のリゾート施設を再建してきた事業再生のプロフェッショナルです。1987年にリゾート法が制定されて以来、地域振興を図りたい地方と民間企業が組んで、多くの大規模案件計画が立てられ、積極的な大型投資がされました。星野リゾートの地元・軽井沢も例外ではありません。しかし、一気に新規参入の波が押し寄せ、供給過剰による自然淘汰の兆しがみえる中、星野リゾートは運営に特化し、「リゾート運営の達人」を目指してめざましい実績を残してきました。

「リゾート運営の達人」の定義は、以下の3つの指標で規定されています。それは、(1)独自の顧客満足度基準の達成、(2)経常利益率20%の達成、(3)エコロジカルポイント(グリーン購入ネットワークの「ホテル・旅館」利用ガイドラインに示された基準に基づく)の達成、です。「正しいコンセプト」ではなく、お客様に「また来たい」と思ってもらえる「共感できるコンセプト」のもと、地域の魅力を最大限に活かしたソフト開発により、リピート率を高めてきました。

今でこそ、日本屈指のリゾート運営会社として認知されていますが、その道のりは険しいものでした。現状維持志向でなかなか変わろうとしない経営陣や社員の意識。近くにより待遇のよい工場があるため、人材確保が難しく、社員にもなかなか定着してもらえないという業界全体の課題から逃れられなかった1990年代。星野氏は、「ビジョン・価値観の共有」、「コンセプトへの共感」、「会社情報・意思決定プロセスの公開」など、さまざまな組織・人事施策を打ち出して、社内の意識改革を進めていきました。

「売上の反転なくして、事業の再生はない」、「売上拡大のためには人と組織を強くすること」、「地域の魅力を、お客様が来たいと思うソフトとして提供すること」といったお話は、景気悪化や競合関係激化など、今の経済状況での打ち手がなかなか見えない中、大きなヒントとなりました。

中小企業や中小企業診断士が学ぶべき点

星野氏のお話からは、中小企業や中小企業診断士が応用できるたくさんの示唆をいただきました。今まで日本で常識となっていた開発・所有・運営が一体となった経営とは一線を画し、事業ドメインを運営分野に絞って「リゾート運営の達人」を目指したこと。これは、中小企業や中小企業診断士が自分たちの強みを最大限活かせる専門領域を確立し、競争優位性を確保していく、という考え方に通じます。

また、満足してもらえることを保証できる人数は限られているため、前年比でなく、顧客満足度を基準に行動すべき、という考え方も大変参考になります。たしかに、クライアントの顧客満足度を保証できる活動量はある程度決まっており、効率性を高めすぎたり、売上前年比にこだわりすぎたりすると、顧客満足度は低下していきます。既存のお客様との長いお付き合いをベースに事業展開を図っていく、といった、中小企業や中小企業診断士がとるべき方法に共通するものがあります。

星野氏のお話には、中小企業経営者や中小企業診断士など、参加者の参考になる考え方が多く、大変学びの多い講演となりました。

(つづく)