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一般社団法人エコ食品健究会代表理事・中小企業診断士 久保正英さん

東日本大震災―復興への道を、事業家として支援
食品分野に特化した3つの支援を行う

【第3回】被災地支援活動からビジネスへの転換

取材・文:渡辺まどか(中小企業診断士)

取材日:2011年5月26日

本業の強みを活かし、独自の被災地支援を行ってきた久保さん。これまでの取組みをどのように今後のビジネスにつなげていくのかについて、うかがいました。

新たな支援フェーズへ

−被災地はいま、少しずつ復興への道を歩んでいます。支援活動についても、何らかの変化があるのでしょうか。

ヒルズマルシェ

次のフェーズは、「自立」がテーマです。エコ食品健究会としての次なる取組みは、無農薬・無肥料・無堆肥による栽培ノウハウを普及する活動です。学校林(政府が、戦後の国土復興運動の一環として学校に保有させた森林)の間伐時期が到来していることと、学校を避難所として利用している人々を活用することを結びつけて考案した事業です。間伐した木でプランターをつくり、そこで農作物を育て、技術を身につけてもらう。そして育った野菜は、帝人グループの社員食堂に出荷する。この取組みの一部は、農林水産省や林野庁等と連動して実施しています。さらに、スーパーの店頭で販売してもらうなど販路を拡大することで、うまくすれば、学校林の敷地を使って事業を広げていくことができます。この事業は、職を失った人々の雇用を創出できるのが大きなメリットです。エコ食品健究会の真髄である「環境・健康への配慮」、この理念に基づいた支援活動を、これからも続けていきます。

ビジネスとしての被災地支援へ

−震災から数ヵ月が経ったいまも、被災地に週2回程度は行かれているとか。久保さんご自身も、かなりの部分で持ち出しになってしまっているのではありませんか。

震災直後からこれまでは、気持ちだけで活動してきました。ただ、ビジネスの視点で考えたときには、今後どこかの段階で持ち出しを回収する必要性が出てきますよね。それは、当然のことです。

−これまでの支援活動が、ビジネスにつながる兆しはありますか。

商工会をはじめ、商工組合やJA、町役場などとの新たな結びつきができたので、エコ食品健究会としての東北地方での活動がしやすくなりました。現在でも定期的に現地へ出向き、被災地の生の声に耳を傾けていますから、関係は深まっています。ネットワーク拡大に必要なのは、テーマです。今回は、被災地支援という強力なテーマで広がったネットワークなので、結びつきが非常に強いですね。たしかに、これまでは支援活動という名目で相当の持ち出しをしていますが、その回収は、これまでに築いてきた温かい人間関係が続いていくことで、自然発生的にビジネスにつながり、達成できると考えています。現に、「震災後、東北地方初の農商工連携の案件をやりましょう」とか、「環境配慮型の地域マークをつくって、他県に比べて競争力が高いところを見せましょう」といった相談がきています。こうなると、どっぷりとビジネスに浸かることができます。結果的には、これまでの被災地支援の取組みが、東北地方におけるビジネスへの種まきとなったのです。

復興支援を通して得た気づき

−さまざまな支援活動をしてきた久保さんにとって、一番の気づきは何ですか。

久保正英さん

「お金は後からついてくる」とはよく言いますが、まさにそのとおりだと思いました。気持ちのまま動いたことで、会員企業を中心とする賛同者が増え、結果的にはエコ食品健究会の求心力が高まりました。一連の活動によって、休眠会員の掘り起こしをすることができ、エコ食品健究会としての新たなステージを迎えることになったのだととらえています。

−本業の強みを活かした被災地支援を行うことで、本業のビジネスの発展につなげる支援のあり方は、理想的な復興支援ではないかと思います。

気持ちがなくては行動に移せませんし、気持ちで動いていることで結果的にビジネスにつながりますよね。人がやりたくないことでも、あえて自分が先陣を切って動くことで、発言ができるようになります。今回の被災地支援も同様です。テレビでは報道されないような壮絶な状況を目の当たりにしたからこそ、状況に即した判断や対応ができるのです。これには、「動きながら考える」バランス感覚が必要ですが、ビジネスをしていくうえで必要なスタンスなのではないでしょうか。

−おっしゃるとおりですよね。ただ、被災地のすさまじい現状と向き合い、精神的に大きなショックを受けてなかなか立ち直れないという話も聞きます。久保さんが、壮絶な状況を目の当たりにして考えたことは何でしょうか。

「気丈にふるまわなくては」と考えました。震災直後の光景は、いまだに夢に見るぐらいすさまじいものでしたから、精神的なショックは大きかったです。震災直後に現地入りしたメンバーの中には、その後の支援活動にかかわれなくなってしまった者もいたほどです。あの状況を経験したら、一生忘れられないでしょう。ただそれを経験しているからこそ、これからも何らかの形で被災地支援を続けていきます。

 

(おわり)

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