中小企業診断士の広場 診断士カレイドスコープ

一般社団法人エコ食品健究会代表理事・中小企業診断士 久保正英さん

東日本大震災―復興への道を、事業家として支援
食品分野に特化した3つの支援を行う

【第2回】本業の強みを活かした被災地支援

取材・文:渡辺まどか(中小企業診断士)

取材日:2011年5月26日

東日本大震災発生後、事業家としての被災地支援を続ける久保さん。震災当日から現在に至るまでの支援活動について語っていただきました。

被災地支援に至った背景

−震災当日から支援活動を始めたとうかがっていますが。

静岡市主催の被災地支援マルシェ

エコ食品健究会は、全国の中小を中心とした食関連企業252社からなる組織です。当然ながら、岩手や宮城、福島にも会員企業の営業所・支店・本社が数多く存在します。被災地の会員企業のことを思うと、いてもたってもいられず、「何かしたい!」と思ったんです。震災直後から現地で必要とされるものには、水と食糧がありますが、食に関する支援であれば、ネットワークを活かして自分たちにもできます。だからこそ、「行動に移そう」と思いました。こういうときこそ、スピードが大事ですからね。震災当日の夕方には、会員企業に支援物資の供給を依頼し、状況把握のために現地へ向かうことにしました。11日深夜、都内某所に総勢5名が集まり、仙台の会員企業のもとへ出発します。その企業を拠点に、支援活動をしようと考えたのです。しかし、12日早朝に到着したところ、その企業も被災していて、現地会員企業との連絡もとれません。ただ、初動が早かったことが幸いし、昼間のうちにミネラルウォーターやすぐに食べられる菓子パン、おにぎりなど、トラック5台分の物資を気仙沼や宮城県沿岸部の避難所に届けることができました。翌13日には、栃木県足利市に被災地支援のための物流センターを設置しました。救援物資の供給やピッキング、梱包、配送は、すべて会員企業のボランティアで成り立っています。賛同してくれた会員企業には、とても感謝しています。

中小企業は、電話1本ですぐに協力してくれますが、その機動力こそがエコ食品健究会の利便性なんです。当初は、政府や大手企業からの救援物資が届くまでの間をどうつなぐかが、私たちの被災地支援のテーマでした。

エコ食品健究会ならではの3つの支援

−支援活動も多岐にわたっていますよね。具体的には、どのような取組みをしているのでしょうか。

薬膳炊き出し(帝人Gインフォコム携帯サイトコラボ)

エコ食品健究会としての支援のあり方には、3つあります。1つ目は、先にご紹介した救援物資の供給です。震災直後は、調理せずにすぐに食べられるもの(食糧=主食)が求められますが、その後必要になるのは食料(=主食以外のもの)です。被災者の栄養不足が問題となったように、求められるものは食糧から食料全般にシフトしていきます。したがって4月下旬以降は、栄養に配慮した食品やアレルギー対応食品、乳幼児向けのお菓子など、ニッチではあるけれど一部の人にとっては必要不可欠なものを供給しています。7月末を最後に、約9,000万円相当の救援物資を各地の避難所に搬送済みです。

2つ目は、農家や畜産業者を風評被害から救うための農水産物、加工食品の販売支援です。マルシェの形式をとり、販売チャネルを全額無料で提供しています。これにより、自らが被災して物理的に出荷する手配ができなかったり、原発の風評被害を受け、安全な食材にもかかわらず出荷できなかったりで困っている団体・個人を救済しています。この取組みは、都内各所で継続的に行っていて、Jリーグ・清水エスパルスのチャリティマッチなど、スポーツイベントの会場にも出店して大量購買を促しています。ここでは、支援物資を届けたトラックが首都圏に戻る帰り便に現地産の販売物資を積むため、効率的な配送が実現できています。

3つ目は、エコ食品健究会としてもっとも独自性が発揮されている支援で、避難所での炊き出しです。単なる炊き出しではなく、管理栄養士や薬膳師などが考えた、栄養バランスのとれた献立を提供するものです。食材は、会員企業が提供しています。震災から数ヵ月が経ったいまは、「とりあえずお腹いっぱいになってもらえればいい」という段階ではありません。炊き出しに頼らざるを得ない被災者は、動物性たんぱく質や炭水化物を摂取しすぎている傾向にあるため、植物性の良質なたんぱく質を摂取できる大豆を使った献立を考えるなど、不足している栄養素を補うことが必要です。そこで、災害対策本部から炊き出し前後の献立をヒアリングし、その避難所の食生活の実態を把握したうえで、栄養バランスが整う食事を提供しています。もちろん、管理栄養士も薬膳師もすべてボランティアです。この炊き出しは、被災者の方々からの評判もよく、「またきてほしい」と頼まれることも少なくありません。たとえば、傷みやすく救援物資に向かない豆腐については、被災者からリクエストがありました。「もう2ヵ月も豆腐を食べていない」との声を聞いてエコ食品健究会が提供したのは、薬膳の麻婆豆腐です。疲労をとる成分が含まれるクコの実や、代謝を高める八角を入れることで、食生活の面から被災者の基礎体力向上をサポートするのが狙いです。

−被災者の健康面をそこまで考えているなんて、驚きです。支援活動にかかわっているボランティアの方々の様子はいかがですか。

各々、やりがいを持って続けてくれています。被災者の「こんなものが食べたい」というニーズに応えるだけでは、単なる作業になってしまいますが、そのニーズに対し、自分たちが持っているノウハウや知恵を使い、付加価値をつけたものを提供することで、ボランティアにかかわる人たちをボランティア疲れから解放する効果もあるんです。ボランティア疲れの多くは、単純作業に「もう飽きた」と感じたときに起こります。そうさせないために、「考える」工程を組み込むことが必要なのです。

−モチベーションコントロールまで考えられているのは、中小企業診断士ならではの発想ですね。

 

(つづく)

[an error occurred while processing this directive]
INDEXへ戻る PREV NEXT

【参考URL】