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一般社団法人エコ食品健究会代表理事・中小企業診断士 久保正英さん

東日本大震災―復興への道を、事業家として支援
食品分野に特化した3つの支援を行う

【第1回】「環境」と「健康」の視点から食分野に特化したブランドビジネス

取材・文:渡辺まどか(中小企業診断士)

取材日:2011年5月26日

2011年3月11日に起こった東日本大震災。公的な復興支援策をはじめ、あらゆる支援活動が日々行われる中、一事業家でありながらその強みを活かして積極的な活動を続ける中小企業診断士がいます。ここでは、食品メーカーやコンサルティングファームで培ったノウハウを活かし、食分野に特化したコンサルティング業を営む久保正英さんにご登場いただきます。久保さんが、どのような本業の強みを活かして被災地支援活動に取り組んでいるのか。また、その活動をどのように今後のビジネスにつなげていくのかについて、お話をうかがいました。

キャラクターブランドの背景にあるストーリー

−久保さんは、食品業界専門のコンサルタントとしてご活躍ですが、これまでのご経歴を教えてください。

久保正英さん

新卒で食品メーカーの山崎製パンに入社し、4年ほどマーケティングや商品開発に携わりました。その後は、湖池屋に6年ほど在籍し、マーケティングを仕事にしていました。湖池屋のようなキャラクターのブランディングを勉強したくて、転職したんです。

−実際に転職して、キャラクターのブランディングは勉強できましたか。

相当勉強しました。ブランドって、拡大するも縮小するも、一挙手一投足で変わってくるんです。たとえば、非常に人気があり、全盛期には約100億円も売っていたキャラクターブランドをUFOキャッチャーなどに展開したら、大失敗したことがありました。キャラクターやブランドは、認知度=売上という世界ではないんです。売上極大化ということなら、安売りでたくさん売ればいいのですが、そう単純な世界ではない。その辺が、ブランドビジネスの難しさですよね。

−なるほど。企業側のさじ加減ひとつということですね。そのさじ加減を、具体的にどのような業務を通して学ばれたのですか。

マーケティングは、どこから原料を仕入れ、どのようにつくられているのか―いわゆるトレーサビリティ(物品の流通経路を生産段階から最終消費段階、あるいは廃棄段階まで追跡可能な状態)の話ですが―、その工程にかかわっている人たちの思いを汲んだうえで、どのような展開で販売したらいいのかを真摯に考えるところから始まります。「こう売りたい」という気持ちで走るのではなく、上流の人たちの気持ちをどのように下流の人たち、つまり消費者に伝えていくのかを、どれだけ真摯に考えたかが大切なんです。真摯に考え、試し、ダメだったら是正して、そのくり返しです。ピンポイントでヒットすることはありません。

−久保さんが代表を務められている社団法人エコ食品健究会(以下エコ食品健究会)のキャラクター、ドクターB(ブタ)くんも、経験則から生まれたのでしょうか。

そうです。あえてキャラクターを用いることで、社団法人っぽくなくしているのですが、そこにはストーリーがあります。山崎製パンに勤めていた頃、食品残渣(食品の製造・流通過程で生じる売れ残りや食べ残しの食品廃棄物)を減らすために、乾燥させて飼料にしてブタに食べさせました。すると、油分が多すぎてブタがお腹を壊してしまう。その後、ブタがお腹を壊さないような飼料をつくる仕組みづくりを行ったのですが、これが、いわゆるエコフィード(食品廃棄物などを再利用し、家畜の飼料にする循環サイクル)なんです。そのブタの飼料づくりの取組みは、私が初めて必然的に環境分野にかかわったものでしたが、CSRの一環で、企業イメージを向上させるために残渣飼料をブタに食べさせたら、お腹を壊してしまった。そのときに思ったんです。「ちょっと待てよ。人間がよかれと思ってやったことが、必ずしも動物や生物にとっていいこととは限らないのではないか。つまり、動物や生物側の視点をふまえ、循環サイクルを考えたうえで、商品開発やマーケティングを行うべきだ」と。そうした最初の気づきの象徴が、ドクターBなんです。

食品業界での幅広くゆるぎないネットワーク

−食品メーカーからコンサルティングファームに転職して、さらにネットワークを広げたんですよね。

久保正英さん

2006年、環境分野に関する知見を共有するために、食品メーカーのネットワークで52社を集め、飲み会を開いていたんですが、それが勉強会に発展しました。今後の潮流は「健康」と「環境」だということで、エコフィードからスタートし、CO2削減やカーボンオフセット(人間の経済活動や生活などを通して「ある場所」で排出されたCO2などの温室効果ガスを、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業などによって「他の場所」で直接的、間接的に吸収しようとする考え方や活動)、カーボンフットプリント(個人や団体、企業などが生活・活動していくうえで排出されるCO2などの温室効果ガスの出所を調べて把握すること)にまで広がっていきました。そして任意団体として活動していくうちに、環境省のカーボンオフセットのモデル事業にもなりました。その後、さらに組織が大きくなり、エコ食品健究会の会員企業も252社になったため、2010年4月から法人化したんです。活動内容は、食品分野の商品開発や販路開拓支援などです。

−最初から52社も集まるのはすごいことだと思うのですが、なぜそんなに集められたのでしょうか。

他人の取組みに興味を持つかどうかでしょうね。私もそうですが、マーケティングやブランディングにかかわっている人間は、我が強いんです。それって本当はよくないことで、「自分の考え方が正しい」と意見を振りかざすだけでなく、一歩引いて他人から吸収しようとする姿勢が大事ですよね。だから私の場合は、他社のマーケティング担当者に会いに行きました。ヒット商品やロングセラーブランドであればあるほど、その背景が知りたくなるので、既存のつながりのあるメーカーの紹介を経て会いに行くんです。結局、業界内の人脈は数珠つなぎで広がっていくものです。そういったことを地道にし続けているのが、ネットワーク拡大につながっているのかもしれません。

 

(つづく)

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