経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

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勤務先での資格の活かし方

がんばる企業内診断士

資格の価値創造を進める「三井住友銀行 中小企業診断士会」

文:川居 宗則(中小企業診断士)

【第3回】中小企業診断士会の活動展望

取材日:2012年2月12日

第3回は、前回に引き続き、一部座談会形式でお届けします。今後の活動展望に加え、原発事故の風評被害を受けている福島県の温泉地を視察し、レポートしました。

今後の活動展望

中隈さん、佐藤さん、金銅さん
左から中隈さん、佐藤さん、金銅さん

川居:金融機関の診断士会の特徴は、どのような点だと思いますか。

金銅:特定の事業分野に強いというわけではありませんが、さまざまな業界の企業とお取引いただいていることでしょうか。財務分析に強い面はありますが、業界知識としては広く浅いため、ある意味、色がないとも言えます。

川居:言い替えれば、金融面であらゆる業界に対応する仲介機能ということですね。これは企業診断という観点では、異業種とコラボレーションしやすいとも言えますね。

宮本:そのとおりだと思います。色はないかもしれませんが、金融は、企業診断における重要なファクターです。それに、これまでさまざまな経営者とお会いして培ってきた経験も活かせると思います。

川居:今回宮本さんが企画した、原発事故の風評被害を受けている温泉地の視察は、新しい活動になります。私は、中小企業診断士資格以外に事業再生士(CTP)資格を取得していますが、東日本大震災後、何か企業診断に絡めた再生支援ができないかと考えていました。前回の定例会で、温泉に詳しい門松さんが、被災に関連した温泉地視察・支援ができないかとアイデア出しをして、宮本さんから具体的な提案があったのでしたね。

宮本:私の親族の関係者が、福島県の土湯温泉で旅館を経営しています。震災の影響もあったのですが、原発事故の風評被害がいまも続いています。何かその支援ができればと思い、企画しました。

川居:門松さんは、中小企業診断士仲間では温泉通として知られていますね。

門松:「温泉ソムリエ」という、温泉知識を認定する資格を持っています。もちろん、温泉好きということもありますが(笑)、他の中小企業診断士の方とはバッティングしないニッチな戦略です。

川居:原発事故の風評被害の状況等は、広く正確にお伝えしたいですね(後段参照)。

さて、会結成後8ヵ月を振り返ると、現在進行形もありますが、「異業種合同勉強会」、「講演会」、「企業診断」、「被災地支援関連活動」を行ってきました。その意味では、資格の活かし方の4ステージサイクルにおいて、「活用」から価値「創造」、自分自身の「成長」、そして会社と社会への「貢献」と、前進していると思います。

佐藤:私は、1年前にはまだ中小企業診断士資格を取得していませんでしたので、「成長」を十分に実感しています。

金銅:創造という観点で言えば、個人的な活動展望としては、金融機関の視点を組み込んだ独自の診断ツールを作っていきたいです。

川居:なるほど。さまざまなアイデアが出てきますね。

中隈:多面的に課題を抽出するコンサルティングノウハウが活きていると思います。どのような価値を提供し、ニーズに応えるのか、またどのような問題解決を行うのかなど、変化の激しい時代にさまざまな要素を組み合わせて提案することで、社会貢献につながると思います。

佐藤:メンバーで活動することで、個人レベルでは難しいことにもチャレンジできます。

川居:そうですね。社内で中小企業診断士資格を目指している人の支援も行いながら、もっとメンバーを増やしていきたいと思います。そのうえでよりいっそう、資格の価値を創造する活動をしていきましょう。

福島県土湯温泉視察―復興支援への取組み

門松さんと宮本さん
門松さん(左)と宮本さん

平成24年3月3日(土)~4日(日)にかけて、当会メンバー3名(宮本潔、門松崇、川居宗則)で、福島県福島市の土湯温泉を訪問しました。原発事故の風評被害を受けている状況等について、関係者の方々にお会いし、ディスカッションを行いました。話をうかがうことができたのは、土湯温泉町復興再生協議会、土湯温泉観光協会、旅館2軒、医療機関の皆様です。

1.現状分析

a.東日本大震災後、16軒の旅館のうち、5軒が廃業、1軒が休業という状況です。震災の直接的な影響もありますが、原発事故の風評被害が続いています(廃業した5軒のうち、2軒は建物被災による営業断念、3軒は観光客減少による営業停止)。放射線量としては、0.13マイクロシーベルト/時と、東京よりも若干高い程度ですが、県内にある温泉ということで敬遠される傾向があり、首都圏からの団体客は大きく減少しています。

b.旅館廃業等により、従業員が減り、人口流出の状況にあります。併せて、高齢化も進展しています。

2.課題

a.原発事故の風評被害の払拭

この点については、情報公開等によって風評を払拭していきますが、事故の重大さを考えると、持久戦で対応する必要があるという認識です。

b.土湯温泉町の活性化

観光の復興と、介護対応等、高齢者にやさしい街づくりを展望しています。

3.取組み

a.再生可能エネルギーによる原発に依存しないエコタウン

河川による小水力発電と、温泉熱を利用したバイナリー発電(*)で町の電気量をまかなうエコタウンを目指しています。平成23年12月には、環境省より「平成23年度 再生可能エネルギー事業のための緊急検討委託業務」を受託して予算がつき、具体的な調査業務に着手しました。原発事故の風評被害を受けた温泉街が、原発のエネルギーに依存しないエコタウンを形成することを計画しています。この温泉街復興モデルが、観光にも大いにプラスになるという展望です。

源泉の熱エネルギーを活用
源泉の熱エネルギーを活用

*バイナリー発電

地上に噴出する温泉熱を利用して低沸点媒体を沸騰させ、タービンを回して発電する方法。投入した温泉の成分や流量を変動させることなく回収できるため、温泉の効能や湯量に影響を与えません。

b.廃業した空き旅館を利用した街づくり

地域高齢化の進展や、福島市内でも低放射能量の当地区への、他地区からの移住ニーズに対応するため、廃業した空き旅館について、居住施設や高齢者介護施設への転用(*)を検討しています。高齢者にやさしい街づくりにより、介護対応者等の地域雇用を創出するという展望です。

*転用

同地区は、「市街化調整区域」に指定されています。廃業した旅館は旅館以外には再建できないなど、建物の用途変更や建設が厳しく制限され、居住施設や介護施設への転用ができません。そのため、土湯温泉町復興再生協議会では、市街化調整区域の規制緩和等、"復興特区"認定による街づくりを目指しています。しかし現状では、福島県沿岸部(いわゆる浜通り)の復興を優先する傾向があります。このままでは、同地区が衰退しかねない状況を説明し、併せて再生エネルギーによるエコタウン計画の具現化をアピールして、特区認定への一段の強い要請を行っています。

4.視察結果および今後の展開

今回、当会メンバー3名は、土湯温泉地区の復興にかける思いをうかがうとともに、再生計画実現化へのディスカッションを行い、風評被害の問題の深さをあらためて理解しました。また、廃業旅館の転用について、破産法との兼ね合いを考え、再生への助言を行いました。

震災後1年を経過しても、まだまだ大きな影響が残る現状を目の当たりにし、復興・再生に向けた思いを共有しました。また、当地区をはじめ、そのほかにも温泉街として再生を目指しているケースがあると思います。今回の視察を活かし、さまざまな形で社会貢献をしていきたいと考えています。

(おわり)

【こちらもおススメ!】

第1回異業種交流会の模様は、こちらで詳しくご紹介しています。

その他、各社企業内診断士会の活動は、こちらをご参照ください。

会の概要

名称 三井住友銀行 中小企業診断士会
設立 2011年7月
会社数 3社((株)三井住友銀行、(株)日本総合研究所、SMBCコンサルティング(株))
人数 15名(2012年3月現在)
目的 診断士資格の価値創造のためにプロアクティブに活動する
連絡先 川居宗則 river.assp@gmail.com