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がんばる企業内診断士

「つぎ夢経営研究会」小売店診断チーム座談会

司会・文:渡辺まどか(中小企業診断士)

【第2回】改善提案を実行してもらえる企業診断とは

取材日:2011年5月26日

神奈川県支部で最大規模の「つぎ夢経営研究会」。この研究会に所属する小売店診断チーム座談会の第2回は、2年以上にわたって現在も継続中の診断実務についてうかがいました。企業内診断士のメンバーが、どのようなペースで活動を行い、具体的にどのような調査・分析や提案をしているのかについて、詳しく語っていただきました。

1年に1回の報告会で、翌年度の活動内容を決定

細木聡子さん×弥富裕美子さん
細木聡子さん×弥富裕美子さん

司会:小売店診断チームは、大人数で活動されていますよね。どのようなメンバー構成でしょうか。ユニークなメンバーもいらっしゃるとうかがっていますが。

森:昨年は、店舗改善チームとITチームが合わせて7人、診断先の「将来がどうなるのか」を診断する将来像チームが4人の合計11人で活動をしました。今年は、新しく覆面調査チームが7人加入しましたが、活動テーマの見直しに伴って、メンバーも入れ替わりましたので、13人体制で活動しています。

彌富:ユニークなメンバーはたくさんいます。現在は全然違う仕事をしていて、過去に小売店で働いていた経験を持つ男性メンバーがいるのですが、陳列の仕方やPOPの見せ方など、店舗改善に関してはピカイチです。また、商工会議所で経営指導員をしている男性メンバーは、アンケートをとるときに実力を発揮していました。アンケートって普通、簡単には協力してもらえないじゃないですか。なのに、若い女性ばかりつかまえてくるんです(笑)。彼とは、カップルのふりをして一緒に競合店調査にも行ったんですが、お店の人とのコミュニケーションが活発で、こちらが知りたいことをうまい具合に全部引き出してくれる。もちろん仕事柄、制度融資にも強いですし、コンサルティングに関するプロ意識も高いんですけどね。

森:元プロボクサーという異色の経歴も手伝って、腹がすわっているんでしょうね。

司会:貴重な戦力であることは間違いないですね。それぞれが得意分野で力を発揮できるのが、チームによる企業診断の強いところですよね。

ところでこのチームは、2年以上にわたって稼働していますよね。どれぐらいの頻度で集まって、どのような活動をしているのかを教えてください。

門馬:店舗改善チームは、1ヵ月に1回ぐらいをメドに集まっていますが、毎回8割ぐらいの出席率です。その間は個別に作業をして、次にその成果物を持ち寄ってすり合わせをします。3~4時間の打ち合わせの後、飲み会に流れる感じですね。昨年は、4~12月の8ヵ月で調査・分析を行い、報告書を作成しました。

森:毎年、年度がわりに社長との話し合いの場を持って、われわれの活動内容について合意をとっています。「このようなスケジュールで活動を行います」という合意を前もってするんです。その後、実際に診断業務を行い、1年に1回、アウトプットとして報告書を作成します。この時点でまた、次の課題が見えてくるので、それを踏まえて翌年度の活動方針を決めます。いまは3年目ですね。

提案内容を実行してもらうために、「1人称」になってもらう

門馬秀憲さん
門馬秀憲 さん

司会:そのペースなら、企業内診断士であっても無理なく進められそうですね。これまでのフェーズでは、実際にはどのような診断をしてきたのでしょうか。

彌富:私の担当したところで言えば、診断先の小売店は、顧客管理がシステマティックにできていなかったんです。なので、コストをかけないソリューションとして、どのタイミングでどういったフォーマットを使って顧客情報を集めるのか、というアドバイスをしました。アンケート調査で集まった100ぐらいのサンプルをもとにSWOT分析を行ったのですが、弱みが多かったんです。

門馬:診断先は、日用品店とペット用品店の2店舗を営業しています。1年目は、日用品店の近隣に競合が進出することが決まっていて、それを脅威に感じていたので、アンケート調査を実施し、それを踏まえた改善提案を行いました。また2年目は、ペット用品店には社長が不在で、従業員に任せきりの状態なので不安だということから、こちらに重点を置き、競合店分析を行いました。

森:その結果、ITの面で競争力がないことがわかったので、IT改善チームを結成しました。2年目の終わりには、すでに改善提案を終えて実行フェーズに移る段階になったので、店舗改善チームとITチームが一体になったほうがいいだろうということで、両チームを一本化しました。

司会:アンケート結果からの分析だと、リアル感がありますよね。すごく見やすく、わかりやすい報告書で、素晴らしいのひと言に尽きるのですが、具体的にどのような改善提案をしたのでしょうか。

彌富:日用品店の店内が暗かったので照明を変えてもらうこと、外から見たときに何のお店かよくわからない状態だったので、店頭の陳列を工夫してもらうことの2つを提案しました。

門馬:それ以外に、POPの書き方や商品の陳列の仕方などについても指摘しました。せっかくPOPをつけていても、位置が悪くてお客さんからは全然見えませんでしたし、物を置きすぎで雑多な陳列になっていたんです。これらについては、すべてデジカメで撮影し、データを添えた報告書を作成して指摘しました。ただ、物を置きすぎている状態は、いまでも変わっていません。全然減らないんですよ(笑)。

また、顧客との関係づくりのために、1to1マーケティングに取組みましょうという提案もしました。レジ横に、顧客情報をとるためのスペースを設置してもらえればいいだろうと。合意は得ているのですが、これからが実行段階です。

司会:いい提案をして、診断先から合意を得られたとしても、結局はいかに実行してもらうかが一番大きなテーマだと思うのですが、実行してもらえる提案をするためのコツはありますか。

彌富:やれることを提案することが大事だと思うので、実行可能かどうかという視点は常に持つようにしています。

細木:やる気にさせることが重要ですので、提案内容の重要性を知ってもらい、「1人称になってもらう」ことですよね。「そのままだと、こんなふうになってしまいますよ」、「これをやると、こんないいことがあるよ」という見せ方をしてメリットを感じていただくこと、そして共感を得ることで、実行につなげてもらえると思います。

門馬:メンバーが出してくる報告書は、字が少なくて絵が多かったので、聞く側にとっては、内容がわかりやすいものだったと思います。

彌富:それに具体例が豊富なので、イメージしやすいんです。

定期的な中間報告会で、診断先の合意を得ながら軌道修正

森智亮さん
森智亮 さん

司会:課題の抽出をして、共通認識を持ったうえで報告書を作成するというプロセスを踏んでいるので、アウトプットにもまとまりが出るのでしょうか。

森:報告書ができるまでに2~3回、診断先への中間報告会を入れています。そこで合意をとりながら進めているので、現実的なアウトプットができるんです。報告書をすべてつくり終わってから渡すのではなく、つくっている途中段階を見せながら進めることで、社長や従業員にも現実的なものかどうかを確認してもらうことができます。

司会:中間報告を入れることで修正を入れることもできますし、くり返し何度も提案できるのがメリットですね。

森:来年の重要テーマはITなのですが、その理由は、何度商品を減らしましょうと言っても減らさないので、データで見せることで納得してもらいたいからなんです。「現実的な提案って何だろう」というのは常に意識しています。

司会:ちなみに、資金繰りはいかがですか。

森:資金繰り支援はすでに行いました。シミュレーションをしてみたら、近々資金ショートすることがわかったので、緊急保証制度向けに「経営安定化に関する事業計画書」を作成し、融資を受けたんです。これによって、今年から来年にかけての資金繰りがだいぶ楽になりました。短期借入金を長期借入金に振り替えることで、月々の返済額も半分になりました。

司会:中小企業診断士にとって、資金繰り支援は必須ですよね。従業員ともやりとりをするのですか。

森:社長は「儲かってない」と言うけれど、「本当に儲かっていないのか」を検証するために、損益分岐点分析をしました。そのうえで最終報告をしたところ、従業員も危機感を持ったようで、いろいろと意見が出てくるようになりました。

門馬:社長の意識の変化として、お金に関する危機感を持ってもらえるようになりました。また、提案した施策を実行するには、社長と奥様、従業員の十分なコンセンサスを得て、さらに資金面や品揃えなどのリスクをより小さくし、もっと現場レベルに落とし込んでいく必要があります。社内では、十分なコミュニケーションを行う機会はなかなかありませんので、その間を私たち中小企業診断士がうまく取り持ちたいと思っています。

司会:企業のキーマンが社長の奥さんというのは、よくあるパターンですよね。

(つづく)

【参考サイト】