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勤務先での資格の活かし方

がんばる企業内診断士

企業内診断士3年生の今を追う ―『企業診断ニュース』連載「広がれ、企業内診断士の輪」番外編

文:櫻田 登紀子(中小企業診断士)

【第2回】本業と診断士活動の好循環

取材日:2010年10月21日

職業、年代、中小企業診断士を目指したきっかけなど、さまざまな経歴の方々が、中小企業診断士という資格を1つの結び目として集まりました。皆様は、企業に勤めながら中小企業診断士として、どのような活動をしてこられたのでしょうか

「診る」×「書く」×「話す」=自己研鑚

司会:皆様は、中小企業診断士となって3年目ですが、これまで企業内診断士として、どのような活動をしてこられましたか。

堀之内:1年目は、東京支部のマスターコースに入って1年間、勉強しました。「話す」こととして、スピーチやプレゼンの練習をしたり、「書く」こととして、櫻田さんや佐藤さんと一緒に本を出版したりしました(『決断と再生~中小企業をどん底から救った男たち』2010年/同友館)。また、「診る」こととしては、商店街診断をしました。そのほかにも、実務補習のメンバーや先生と簡易診断をしたり、補助金申請に向けた事業計画作成の支援をしたりもしました。

司会:どうして、1年目にマスターコースを選んだのですか。

堀之内:中小企業診断士として、最高の教育を受けられる場所がマスターコースだと聞いていたからです。継続的な人脈をつくるには、マスターコースがいいと思いました。また、簡易診断やプレゼンのスキルアップは他の研究会でもできますが、自分で出版企画をして、実際に出版までするというプロセスは、なかなか経験できないことなので、よかったと思っています。

櫻田登紀子さん
櫻田 登紀子 さん

司会:本が完成してからも、3人でプロモーション戦略を立てて、書店回りなどをしましたね。佐藤さんが店頭用のPOPをつくり、堀之内さんはコマーシャライザー(動画CM)をつくってくれました。

佐藤:堀之内さんのコマーシャライザーは感動モノで、涙が出ましたね(笑)。

司会:佐藤さんは、このマスターコースのほかには、どのような活動をされましたか。

佐藤:先生のツテで、業界誌のシリーズ原稿を2回書きました。私が住んでいる川越に、小江戸ビールという有名なブルワリーがあるんですが、そこの社長にインタビューをしたんです。経営者のお話を直接聞く機会は、企業の社員としてはなかなかありません。中小企業診断士という肩書きがあるだけで、世界が全然違ってくると思いました。ほかには、研究会の仲間と数社のコンサルティングをしたり、香港へ研修旅行に行ったりしました。

笠井:研修旅行の目的は、何だったんですか。

佐藤:その研究会では毎年、研修旅行をしているんですけど、今年は香港ウェイ(手法)を中小企業診断士の視点で持ち帰って、日本の企業に活かそうというような、大まかな目的で行きました。みんなで行くと、診断士的視点でものをみたり、意見交換できたりするのが面白いですし、この歳になると団体旅行の機会もなかなかないので、楽しかったですね。今回は、2泊3日で12名が行きました。寝る時間は、ほとんどありませんでしたが(笑)。

司会:笠井さんは、どのような活動をしてこられましたか。

笠井:私は会社員として、診断士活動は個人活動の位置づけとなっていますので、この座談会にも個人活動として参加させてもらっているのですが、会社の職務違反にならない範囲で活動しています。研究会は1つくらいで、ほかは、資格を維持するための研修と実務従事への参加です。あとは、本の執筆を2回しました。中小企業診断士登録年に生まれた子どもが、最近は言葉を話せるようになって、家で原稿を書いていても、「パパ、ガンバレ!」と応援してもらえたのは、励みになりましたね。

司会:実務補習メンバーで、「志」を持ってコンサルティングをしようと、「山桜会」を発足しましたね。その発起人が笠井さんでした。

笠井:「山桜会」にも企業内診断士の方が多いので、資格の更新要件である実務従事と会社の職務規定を同時に満たし、かつ、成果を出す枠組みのようなものをつくれないかと思い、活動を始めたばかりです。

司会:「山桜会」では、2010年に1社のコンサルティングをしたのですが、とてもよい提案になりましたね。では、いよいよ斎藤親分のお話をお聞かせください。

斎藤:活動には、大きく分けて2種類あります。1つ目は、中小企業診断士としての実践活動で、2つ目は研究会活動です。実践活動では、ペットサロンやワインの輸入業、宝飾品製造業、水産加工業などについて、すべてグループでコンサルティングをしています。研究会では、ある受験校のOB会運営と、最近はNPOの立ち上げにも参画しました。地域振興や地域診断のビジネスモデルという理論構築をして、実際に福島県のある町で地域おこしの支援を通し、自分たちが研究してきた論理モデルを実地検証中です。このほかに、共同出版が2冊と、セミナー企画もしています。会社の仕事をやりながらですけれど、そろそろ中小企業診断士の仕事に軸足を移しつつあるという状況です。

資格取得前VS資格取得後

司会:皆様、「診る」、「書く」、「話す」とバランスよく活動されていますね。では逆に、企業の中で資格をどのように活かしていらっしゃいますか。

佐藤:資格を取る前と比べると、比較的経営に近い仕事をさせてもらえるようになったと感じています。内部統制のプロジェクトにかかわったり、有価証券報告書や監査法人の四半期インタビューを受けるための下原稿の一部をつくったりという仕事が、少しずつ増えているのですが、中小企業診断士だから、経営的な視点で物事をみられるのではないか、という期待からだと思います。

座談会風景
座談会風景

そのほかにも業務で、「中小企業診断士的にはどうなの?」と聞かれることがあるので、わからないことはこっそり調べて、「こうじゃないですか」と答えています(笑)。そういうことが、「勉強しなくちゃ」というよいモチベーションになっています。上司が資材部出身で、中小企業との関係を重視されてきましたので、中小企業診断士の意義を理解してくれています。よい上司と職場に恵まれました。

堀之内:私は現在、業務でコンサルティングをしていますので、中小企業診断士の勉強や活動で体系的に学んだ知識が、そのまま業務に活かせていると思います。また、会社の人事制度に昇格のための資格要件があり、その推奨資格として中小企業診断士がありますので、人事評価の面でも役立っています。資格の難易度でランクが分かれるのですが、中小企業診断士は一番ランクが高いのです。昇格のために何か資格を取らないといけないので、どうせ勉強するのなら難易度の高い公的な資格を、と思いました。

司会:人事評価にも、プラスに働いているのですね。

笠井:私の場合は、中小企業診断士の資格が昇進や昇格の要件にはなっていませんが、業務においてその視点や考え方は、非常に役立っています。資格を取ったとき、私は課長職で経営と現場をつなぐ役割を担っていましたので、経営者の視点をいかに現場の具体的な行動に落としこむかという点では、ふだん、独立診断士の方が考えられていることと同じような気がしています。十分に、自己活用できていると思います。

斎藤:私も、資格取得前と取得後では、そんなに変わっていないと思います。ただ、外からみて変わっていなくても、自分の中では業務の遂行に役立っていると感じています。

会社業務の80%は過去の業務の反復で、効率が勝負ですが、残りの20%は新しい事実の分析と仮説の設定で、精度が勝負です。時代の変化とともに、非定型的な意思決定の重要度が増していますが、事実分析と仮説設定はコンサルタントの得意分野であり、中小企業診断士の知識や経験が大いに活かせると思います。

本業での経験を診断士活動に活かし、そこで得たものを本業で活かすという好循環を生み出している企業内診断士たち。しかし、企業内診断士の活動には、問題も立ちふさがります。その難問を、果たしてどのように解決していくのでしょうか。

(つづく)

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笠井 究宣(かさい さだのり)
みずほ情報総研(株)勤務。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。39歳。
斎藤 健(さいとう けん)
住友商事(株)勤務。東京大学経済学部卒。団塊世代の61歳。
佐藤 暁子(さとう あきこ)
日本ケミコン(株)勤務。国際基督教大学教養学部卒。28歳。
堀之内 寛(ほりのうち ひろし)
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