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独立直後の診断士をレポート

駆け出し診断士の奮闘記

<駆け出し診断士の奮闘記(5)>

文:野村 幸司(中小企業診断士)

【第2回】「来る球は全部打ち返す」[2]

頑張る経営者と銀行の通訳となれるような支援を

融資を受ける側として、金融機関と交渉

マスターコースでのプレゼンの一コマ

中小企業支援ネットワーク強化事業で専門家として支援した企業からは、資金調達に関する支援依頼がありました。新しい店舗を取得するにあたり、資金調達に際して、金融機関から融資を受けるための事業計画書などの資料作成から、金融機関との交渉までを手伝ってほしいとのことでした。

具体的には、現在の事業の黒字化に向けたシミュレーションをはじめ、新しい店舗をオープンすることによる新店舗単体や企業全体でのシミュレーションなどを行い、金融機関向けに提出する事業計画書などの資料を作成しました。さらに、企業と同行して金融機関に出向き、事業内容や事業計画書の説明、融資の申し込みなども行いました。長年銀行に勤務していたのですが、融資を受ける企業側に立って交渉するのは初めてのことでした。

そこで強く思ったのは、「金融機関は、敷居が高いところなんだなぁ」ということです。クライアント企業の経営者も、2人でいるときはよく話すのですが、銀行員を目の前にすると、緊張してまったく話せなかったりするのです。金融機関と反対側の立場に立つことで、いままで当たり前に思っていたことがそうではないとわかり、さまざまなことが見えてきました。金融機関の考え方がわからないために、「わが社はどう見られているのか」と不安に思ったり、「悪く見られないように」と緊張したりする経営者の気持ちがよくわかったのです。結果的に、提出した事業計画書や今後の展開について金融機関の理解を得られ、無事に融資を受けることができて、支援した企業は新たな施設での事業展開を開始することとなりました。

もし、私が銀行員として今回の案件に携わっていたら、特段大きな融資金額でもないため、「大したことのない案件」と感じていたと思います。しかし、融資を申し込む企業は、本当に一大決心で融資を申し込んでいることを、間近で支援しながら感じました。金融機関が重要な役割を担っていることを、あらためて認識することになった経験です。

私は、こうした経営者の不安を少しでも取り除ける支援ができればと、強く思いました。「金融機関はこういうことを言ってくる」、「こういう点を知りたいと思っている」など、交渉の際の金融機関の考えは、手にとるようにわかります。しかし逆に、金融機関の論理や都合もわかってしまうため、あまり無理も言えないというやりづらさも感じました。

金融機関に無理をさせることは、長い目で見ると企業にとっても良いことではありません。金融機関と企業の両者が良い信頼関係を継続できるような支援を、今後とも続けていきたいと考えています。

前の勤務先との交渉

ある日、銀行でのお取引先であった企業の社長から連絡をいただきました。業績の悪化が激しく、事業の再生のために、中小企業再生支援協議会が主導で金融機関の取りまとめを行っている企業なのですが、今回事業再生計画を策定するにあたり、事業再生計画の策定や金融機関との交渉を支援して欲しいとのことです。出来れば避けたいと思っていたのですが、前の勤務先の銀行が、なおかつ元上司が交渉相手となったのです。

その企業とともに事業再生計画の立案、事業計画書の作成を行い、前の勤務先を含めた銀行団に事業計画に関して説明を行い、その企業の借入金の返済条件の変更(リスケ)に応じていただきました。いつかは前の勤務先の銀行と交渉することになると思っていましたが、お互いに手の内を知り尽くした相手との交渉はやはりやり辛さを感じました。しかし、元上司から「野村が言うなら大丈夫なんだろう」と言っていただいたことは、純粋に嬉しく感じました。

退職することにより大変迷惑をかけてしまいましたが、このように言っていただけることに対し、とても感謝しています。その企業とは引き続き顧問先として携わっており、おかげさまで前の勤務先の銀行とも良好な関係を保つことができています。

独立1年後に初めての書籍を出版

参加していた東京のマスターコースでは、出版社に執筆プレゼンを行う機会があり、中小企業診断協会の会報誌『企業診断ニュース』の連載企画が採用されました。「診断士ができる! 中小企業の資金繰り改善支援」というテーマで、資金繰り管理の手法や金融機関との取引方法、さらには実際の支援例などを全6回、執筆させていただきました。

また、そのご縁で書籍出版のプレゼンの機会もいただき、何と採用されることになりました。銀行との取引をいまいち苦手と感じている人や、これから金融機関との交渉が必要になる新規創業者、2・3代目の経営者向けに、金融機関の考え方や、企業側は日頃からもっとこうすればいいのに、といったことを書いたものです。「銀行なんか怖くない! 上手に融資を受けるための銀行取引のツボ」(労働調査会)というタイトルで、独立してちょうど1年後の2012年6月に出版されました。その後は、講演依頼なども多数いただくようになっています。

こうして、顧客ゼロからのスタートで、「先入観を持たずに」、「来る球は全部打ち返す」をモットーに走り回った独立1年目。さまざまな人との出会いと、さまざまなご縁のおかげで、何とか「食える」状態に持っていくことができました。

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(つづく)

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