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独立直後の診断士をレポート

駆け出し診断士の奮闘記

<駆け出し診断士の奮闘記(2)>

文:村上 知也(中小企業診断士)

【第2回】失敗は自己責任、成功は助けてくれた人に感謝[2]

コンサルティングもボチボチと

村上知也氏

「話す仕事」が中心でスタートしたが、中小企業診断士の本業はやっぱりコンサルティング(ですよね?)。会社員時代は、ITコンサルティングに従事してきたが、中小企業向けではそうもいかない。どうやって仕事を取っていけばいいのだろう。こちらも最初は、先輩診断士からのありがたい紹介だった。

「IT企業の経営革新で、専門家が必要なんだけど...」

「やります!」

そう。最初のうちは、何でも即答だ。おまけに、顧客はなじみのあるIT業界だし、やらない手はない。さっそく、経営革新の制度を勉強し直す。診断士試験の受験勉強にも登場する経営革新だが、それだけではもちろん足りない。しかし、参加する研究会MPA(http://mpa-consul.com/)でもタイミングよく、経営革新がテーマの勉強会が開かれるという幸運もあった。

こうして、何社か経営革新取得の支援をさせていただくなかで出会ったのがS社だ。社員数十人のシステム開発受託企業で、中小IT企業の多くがそうであるように、大手システムベンダーからの受託開発が中心だった。初回のヒアリングをしていくうちに、親近感がわいてくる。

「私の前職の会社とも仕事をされているんですか?」

「就業システムをつくるんですか? 私が一番最近につくったシステムは、就業システムですよ」

S社は、自分との共通点が多い企業だった。さっそく企業を訪ね、計画の内容をうかがう。そのとき、すでにS社では、経営革新計画の申請書を作成済みだった。

一般的に中小IT企業には、共通の課題がある。単純な下請け開発では、海外でソフトウェア開発をするオフショアに価格で勝てない。そうすると、(1)技術や業務の独自性を出して差別化を図っていくのか、(2)下請けでなく、中小企業の顧客を開拓して直接取引を開始するのか、(3)自社ブランドの新しいサービスを展開していくのか、といった選択肢が考えられるのだ。これは、中小企業基盤整備機構の経営支援情報センターが出していた「中小受託ソフトウェア企業の今後の展開」にもあるとおりだ。

ちなみにS社では、前記の(3)の方法をとろうとしていた。だが、ヒアリングを開始すると、社長はサービスのコンセプトを熱く語られるのに、どうも具体的な内容や数値につながっていかない。しかしその割に、計画書はしっかり数値まで細かく入っている。

「社長。これって、自分で書かれたんですか?」

「いや、経営革新のコンサルタントにお願いして書いてもらったよ」

なるほど、だから「思い」と「実際」がつながっていないのか...。とは言え、専門家として派遣される数少ない支援回数の中で、自分はどこまでそこをつなげていけるのだろうか。詳細を詰めても、いま一歩、実行可能性が見えてこない。

原因はこれも、中小IT企業によくある課題だった。S社を訪問した際、社員の方に出会うことはなかった。社員は全員が顧客先常駐で、ふだんは本社に出てこないのだ。

「平成14年の事例 I 企業とまったく同じ状況だな」

二次試験の過去問を思い出して、苦笑いする。こんなところで、診断士試験が役に立つとは。

とにかく、社長だけがいろいろ考えても、実行する社員が登場しないことにはどうにもならない。ということで、最終回だけは何とか社員にも打ち合わせに参加していただき、計画書を仕上げていただいた。

そして3ヵ月後。

「経営革新計画が承認されました」

商工会議所の人から連絡をいただく。嬉しくて、さっそくS社を訪問し、報告する。

「いやぁ。でも、これからですよね。実行しない計画に意味はないですから」

そんな会話をしながら、喜びを共有する。話がひと段落して帰る頃、社長が声をかけてくださった。

「先生。このまま継続して先生に診てもらうには、いくらかかるんですか?」

予想外の申し出に、思わず顔がニヤリとしてしまっていただろう。

「では次回、実施内容の提案と見積もりを持ってきますね」

やっぱり、経験って活きるものだ。重厚長大なIT企業での経験なんて、中小企業支援には活かせないと思っていたけれど、そんなことはない。自分のやっていくべき仕事が、ぼんやり見えてきた気がして、帰り道は心が弾んでいるのがわかった。

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(つづく)

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