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独立直後の診断士をレポート

駆け出し診断士の奮闘記

<駆け出し診断士の奮闘記(2)>

文:村上 知也(中小企業診断士)

【第2回】失敗は自己責任、成功は助けてくれた人に感謝[1]

次のステップへ~で、何ができるの?

経営情報システム

独立のきっかけとなった1ヵ月間の研修が終わった。

独立前から、診断士予備校の講師の仕事はしていたが、それ以外にも新たな仕事を増やしていく必要がある。会社員時代は長年、営業職も経験したが、今度は自分を商品として売っていかなければいけない。でも、自分を売り込むのはどうも得意じゃない。名刺をもらっても、コテコテとアピール事項が書かれていると、正直押し付けがましく感じてしまうし、どう自分を売り込んでいけばいいのだろう。実績はまだ少ないし、注力分野も不明確だ。新しくつくった名刺には、「中小企業診断士」の肩書きしかなかった。

だが、独立直後ゆえのご祝儀だろうか。ありがたいことに、前職の関係者からIT関連の仕事をいただいたり、先輩診断士の方々からいくつか仕事を紹介していただいたりもした。

たとえば、診断士受験生時代の勉強会の先輩からは、「商工会議所でセミナーをやってみないか?」と声をかけてもらった。

「経営者を中心に60人くらいが集まるから、村上君の得意なテーマでやってみてよ」

--得意...。得意って何だろう?

受験生時代は、「企業経営理論」が得意だった。とすると、戦略論? 組織論? それともマーケティング論? いや、どれも理論は得意だけど、実践が追いついていない。

--得意って、やっぱり、経験なのかな...。

ならば、13年間の業界経験を活かして、やっぱりITでいくしかない。とは言え、これまでの経験では、顧客企業の従業員が万人規模で、金額も一式5億円とかいうものが多く、そのまま中小企業に伝えても役立つノウハウではないだろう。

では、どうするか。得意なモノと言われると悩んでしまう。そもそも小規模企業に、IT投資という明確な概念があるんだろうか。そうだ。じゃあ、0円で何ができるかをITで考えてみよう。

こうして、初めてのセミナータイトルが決まった。

「中小企業のFREEなIT活用術~ほとんどタダで、業務効率化・新規顧客開拓するには?」

セミナーでは、単にITツールを紹介するだけでなく、販売促進の業務の流れにしたがって、広報ツールやコマーシャルツールなど、無料ITでどこまでできるかに挑戦した。当日は、満席に近い状態。面白く、役立って、お金もかからないことをコンセプトに、無事終えることができた。終了後も、多くの質問やTwitterでの追加の質問をいただき、初めてのセミナーとしては、まずまずの成功だったんじゃないだろうか。

ちなみにセミナーで使った資料は、"FREE"のマインドに則り、ホームページを新しく無料でつくってインターネット上に公開した。

FREE-IT(http://sites.google.com/site/freeitknowhow/

失敗するとは思っていなかった

こうして独立序盤は、話す仕事を中心に仕事を展開していった。なかでも、独立前から続けていた診断士予備校での業務量が増えていった。会社員との兼業時代は、得意の「経営情報システム」の講義だけだったが、独立を機に、二次試験科目の講義もやらせていただけることになった。

最初に依頼を受けたのは、一次試験の勉強を終えてから二次試験に進んでいく、融合スタイルの講義だった。一次試験の講義で心がけているのは、体系的に知識を伝えつつ、そこに事例が加わり、そして面白くあること。

では、二次試験の講義では何を心がければよいのだろう。まずは、主任講師のDVDを見て講義の流れをつかむ。やっぱりうまいし、すごい。だが、他人がやっている内容をコピーしても、うまくいかないのは目に見えている。また、DVDの講義と生の講義は、まったく別物と言ってもいい。密室でひたすら話しかけ続けるDVD講義と違い、生の教室講義は双方向性が重要となる。

そんななか、主任講師からもアドバイスを受ける。「村上君なりの色を出していかないといけないよ」と。

そこで、二次試験の過去問を使い、その中から一次試験の知識へとつなげていく、そんな展開で講義を組み立てていくことにした。2.5時間×2回の講義だったが、そのための準備時間は、軽く5倍以上はかかっていた。

そして、いよいよ講義当日を迎える。自分では、万全の体制で臨んだつもりだった。主任講師も、教室の最後尾で見てくださっている。だが、始まりから不穏な空気を感じる。何人かの受講生が、チラチラと後ろを振り返るのだ。「主任講師がいるのに、どうして講義をしないんだ?」--そんな雰囲気を感じてしまうのは、被害妄想だろうか。

2時間半の講義が終わり、不安は現実のものとなった。何人かの受講生が、主任講師と話すのが聞こえてくる。

「今日は先生、講義はしないんですか?」

「二次の過去問なんてまだ全然やっていないのに、そんな話を聞いてもわからないですよ」

高まる不安感。主任講師と相談し、別途、補講を開催することとなった。つまりは、やり直しだ。

講義のコンセプトは、一次試験からニ次試験にどうつなげていくかだったが、今回の講義ではまず、二次試験の過去問ありきで、二次試験の勉強に未着手の方には、話が通じていなかったのだ。そこで、一次試験の知識を説明し、そこから関連する二次試験の部分を説明し直す補講をやることになった。情けない話だ。補講を開催するスケジュールを発表して、講義を終える。

落胆しながら帰る自分に、受講生が声をかけてくれる。

「私にとっては、十分に役立つ講義でしたよ」

嬉しくもあり、情けなくもあり...。

受講生にとって、講義の1コマは一期一会である。1コマと言えども、決して無駄にはできない。今回の講義は、すでに二次試験の過去問を勉強している人向けのコンテンツとしては、十分なものだったかもしれない。しかし、このクラスの状況には適合できていなかった。どんなクラスなのか、事前に見学に行くなどしておけば、防げた失敗だっただろう。

予備校の講義であれ、一般のセミナーであれ、いろんな状況の方が参加される。すべての人々にぴったり合う講義やセミナーは不可能だが、当日の状況に合わせて、実施内容をカスタマイズできるくらいの余裕があれば、今回も対応できたのかもしれない。準備したコンテンツをこなすだけでなく、リスクマネジメントの視点も持って臨まなければと感じつつ、次の講義に向かう。

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