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独立直後の診断士をレポート

駆け出し診断士の奮闘記

<駆け出し診断士の奮闘記(1)>

文:岡田 憲政(中小企業診断士)

【第2回】「チャレンジし続けたら、結果がついてきた」

独立してからは、これまで経験したことのない仕事ばかり。いまでは笑い話のような失敗をしながらも、チャレンジし続けることで少しずつ仕事が増え始めた。

研修の仕事で気を失いそうに ~失敗談~

★2010年12月10日 ある業界団体主催の研修講師の模擬講義テストを受ける

先輩診断士の方から、願ってもない研修講師の仕事を紹介していただきました。会社員時代の経験が活かせる内容で、講師料は私にとって破格の条件。安定した売上が期待できると安堵したのを覚えています。模擬講義を行ったうえで問題がなければ、登壇機会が得られるという話でした。

某県職員の方を対象とした研修風景
某県職員の方を対象とした研修風景

これまでの経験が活かせる内容だったため、模擬講義に対しては特に不安もなく、大した準備をしなかった私。無難に数十分間の模擬講義を行えばよいと、軽い気持ちで考えていました。

当日、模擬講義の会場には、研修を主催する業界団体の方が3名、中小企業診断士の方が1名の計4名が評価者としていらっしゃいました。ここで初めて、研修のプロに対して講義を行うことに、想像以上のプレッシャーを感じ始めます。パソコンをプロジェクターにつなぐところからうまくいかず、10分間も皆様をお待たせしてしまいました。会場の雰囲気も悪くなり、極度の緊張状態に陥った私は、始まる前から脂汗をかいていました。

いよいよ模擬講義が始まりましたが、冒頭から緊張で唇が乾いてくっつき、うまく口が開けられない状態に。間を開けるのが怖くて、水を飲むこともできません。とは言え、口が開けられないわけですから、まともに話せるはずもなく、しどろもどろな状態です。それがさらに緊張を呼び、すべてが空回りしました。評価者の方々を講義に引き込もうと、苦し紛れに質問を投げかけましたが、適切な質問ができずに雰囲気は悪くなる一方で、脂汗もどんどんひどくなります。さらに講義を進めていくうちに、目の前が真っ暗になり、意識が遠のいてきました。「もう少しで倒れる」というところで、「すみません。座ってやらせていただいてよろしいでしょうか」と断り、座って講義を進めていきました。その後の内容は、まったく覚えていません。こんな状態で、模擬講義は2時間も続きました。仕事で気を失いそうになった初めての経験です。当然、この研修講師の仕事は不採用となりました。

紹介していただいた先輩診断士の方の顔をつぶすとともに、評価者の方々の貴重な時間を無駄にしてしまった私は、関係各位にお詫びのメールと電話をしました。そして、大した準備をしなかったことを後悔しました。

現在は月に10日程度、研修の仕事をしていますが、この経験はものすごく活きています。できるかぎりの準備をしないと、怖くて登壇できない体質になりましたから。

研修講師の仕事は、受講者・研修担当者に喜ばれることが重要です。そのために、研修時間の5倍の準備をすることを心がけています。たとえば8時間の研修なら、40時間の準備をするということです。この考え方は、研修講師として活躍されている方にいただいたアドバイスです。この失敗から立ち直るのに1ヵ月ほどかかりましたが、いまでは財産だと感じています。「徹底的に準備する」ことさえ守れば、受講後のアンケートを読むことが楽しみになっていくと思います。

「仕事をください」と素直に言ったら、仕事が増えた ~成功談~

★2011年2月1日 仕事がこれまでの1.5倍に増えた

私は、「やってみる?」と声をかけていただいた仕事にはすべてチャレンジしてきましたが、2011年2月当時の月間稼働日数は20日程度でした。駆け出し診断士ですから、報酬単価は決して高くありません。そのためこのときは、月間稼働日数を30日にすることを目標にしていました。そしてそれができてから、報酬単価を上げられるように仕事の質を高める努力をしようと考えていました。

仕事のチャンスをつかめる懇親会
仕事のチャンスをつかめる懇親会

目の前のチャンスにはすべて手を挙げ、チャレンジしているわけですから、これ以上のチャンスを得るには営業活動をしなければなりません。セミナー開催やWebなどを活用した営業活動を行うのが一般的だと思いますが、準備に時間がかかります。私はすぐに結果が欲しかったので、すぐできることは何かと考えてみました。そして、これまでの仕事はすべて、研究会・セミナー・中小企業診断協会の活動からつながっていたことに気づき、ならば、「いままでより多くの機会に参加すれば、仕事も増える」と考えました。その数日後、私はある研究会で先輩診断士の方にアドバイスをいただきました。それは、「仕事を持っていそうな人に、仕事をくださいと言ってみなさい」というもの。あまりにもストレートな内容に、「そんなことを言ってもいいのか?」というのが第一印象でしたが、これならすぐに実行できますから、だまされたと思ってやってみました。すると、目に見えて仕事が増えていくことに。その場では仕事をいただけなくても、忘れた頃にいただけることが多いように感じています。

極端な例では、こんなことがありました。携帯電話に見知らぬ電話番号から着信があり、電話に出たところ、「○○ですが、仕事をお願いしたいんです。△△時に××駅で待ち合わせをできますか?」という内容です。何とかつじつまを合わせて待ち合わせの約束をしましたが、相手が誰だかわからない状態で待ち合わせ場所に向かいます。2ヵ月前の研究会で数分間お話しし、「ぜひ仕事をください」とお願いした方だとわかったのは、当日お会いしてからでした。

私がやったのは、研究会やセミナーに参加して、「仕事をください」と言うことだけです。誰にでもできることですし、特別なノウハウも必要ありません。嘘みたいな話ですが、仕事につながったのです。ただし、注意も必要です。あまりギラギラした営業活動は避けてください。あくまでさわやかにやらないと、逆効果になります(笑)。このやり方だけで2ヵ月後には、目標の月間稼働日数30日に達しました。これ以上働くことは不可能ですので、目下の課題は仕事の質を高め、報酬単価を上げることになっています。

「失敗をさらけ出すことが重要」 ~思い出に残るクライアントの言葉~

★2011年2月11日 研修会社の社長から「君は売れる!」と言われる

ある研修会社の登録講師となった私は、その会社の営業50人に向けた講師プレゼン大会に参加しました。登録したばかりの20名ほどの講師が集められ、1人ずつ自己紹介を行います。言ってみれば、講師にとっての社内営業の場です。ほとんどの講師は自分の輝かしい経歴を紹介していましたが、大した経歴もない私は、自分でも笑ってしまうような失敗談を中心に、若干の成功体験を交えた自己紹介を行いました。すると、その自己紹介を聞いていた研修会社の社長がうなずきながら私に近づき、「君は売れる!」と唐突におっしゃいました。嬉しかったのは事実ですが、その理由のほうが強烈に印象に残りました。

社長いわく、「人は失敗談から得た教訓に共感する。中途半端な輝かしい経歴は、いやみにしかならない」。私は、たまたま失敗談を中心に話しただけで、意識的にそうしたわけではありませんでした。それどころか、独立してからは自分の強みを探し、それをカッコよく伝えることばかり考えていたように思います。相手の立場に立ち、何を伝えるべきかを考えさせられる出来事でした。失敗談を中心に、多少の成功体験を伝えることの効果は、研修業務で実感しています。私はこれを、どんな業務にも通じる教訓としています。

(つづく)