アンケートにみる診断士の実像

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第4章 データでみる企業内診断士の実態

石田 恵介・東京支部城南支会

 最終章となる本章では、本アンケート調査の中からコンサルタント業務に携わっている企業内診断士にフォーカスし、その実態を明らかにしてみたい。

 なおここでは、下図に示す「4.公務員〜8.民間企業(金融機関除く)」の合計1033名を「企業内診断士」と定義した。つまり、コンサルティング会社を除く企業、団体、自治体等に勤務する診断士資格保有者を「企業内診断士」ととらえたということだ。また、同じく下図の「1.プロコン(他資格兼業なし)〜3.コンサルティング会社等勤務」の合計936名を「プロコン」と定義した。

3.企業内診断士の志向性

(1)6割が独立の予定なし

 今後、1〜2年以内に独立したいとの回答は65名(8.1%)にとどまり、5年以内に独立したいとする回答126名(15.7%)と合わせても、企業内診断士の4分の1に満たない。一方、独立の予定はないとの回答は6割となっており、企業内診断士の独立志向は高くないことがみてとれる。

 独立する予定はないとする理由をみてみると、「受注機会の確保が難しいと思うから」が246名(21.8%)ともっとも高く、「収入が安定しないから」231名(20.5%)、「現在のところ、自分の能力不足を感じているから」202名(17.9%)、「現在に比べ、収入が低下するから」179名(15.9%)、「現在の仕事の内容や職場環境に満足しているから」178名(15.8%)と続いており、「仕事がとれず、収入が低下するのではないか」といった収入面での不安が大きい様子がうかがえる。


 

(2)企業内診断士の志向性

 次に、企業内診断士としての志向性に目を向けたい。順位番号1位と回答した項目をみてみると、「経営全般の勉強等スキルアップを図りたい」が220名(27.4%)でもっとも高く、「診断士仲間、異士業間の人間形成やネットワークに活用したい」184名(22.9%)、「自分の担当業務の専門性を高めたい」135名(16.8%)と続く。このことから多くの企業内診断士は、独立するよりも、現在の仕事を続けながら、社外での人的ネットワークを幅広く形成するとともに知見を広げ、専門性を高めていく志向が強いことがうかがえる。

 一方で、「定年後または退社後に資格を活用したい」との回答が134名(16.7%)あることから、現在の仕事を定年まで全うした後、その業務経験と診断士資格の双方を活用した仕事を模索している傾向もみてとれる。

 また、「休日等を利用してコンサルタント業務に活用したい」81名(10.1%)との回答からは、診断士としての知識やスキルの維持を図るためにも、休日等を利用しながらコンサルタント業務に携わろうとする意識がうかがえる。
 

4.おわりに

 総務省「平成18年事業所・企業統計調査(基幹統計)」によれば、中小企業数(会社数+個人事業者数)は約419.8万社で、全企業数の99.7%を占めている。一方、中小企業支援法第11条第1項の規定に基づく「中小企業の経営診断の業務に従事する者」として経済産業大臣に登録された診断士は、約2万人(平成23年6月現在、中小企業庁経営支援課)である。

 この数字を多いとみるか少ないとみるかは意見があろうが、中小企業支援の現場に身を置く筆者としては、診断士の数は不足していると感じている。同法が目的に掲げる「中小企業の経営資源の確保を支援し、中小企業の振興に寄与する」ためにも、プロコンのみならず企業内診断士が中小企業支援の現場に積極的にかかわることの意味は大きいと言える。

 今回、アンケート結果を企業内診断士という切り口でみることで、従来業務に携わりながら、時間を創出してコンサルタント業務に従事するアグレッシブな企業内診断士の存在が浮かび上がってきた。

 時間的な制約はあろうが、このように精力的に中小企業支援に携わる企業内診断士が今後、さらに増えていくことに期待したい。

プロフィール

石田 恵介(いしだ けいすけ)

法政大学卒業後、東京都北区役所にて地方行政に従事。平成20年中小企業診断士登録後、独立。現在は、ヒューマン・アセスメントや企業研修などの人材育成の分野、製造業の収益改善に向けたコンサルティングを中心に活動中。