アンケートにみる診断士の実像

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第1章 診断士に関する4つの不明を明らかにする

大石 幸紀・東京支部城東支会

5.独立後の活動内容は

(1)得意とする専門分野に差

 最後に、4つ目の不明「独立後の業務内容が不明」を明らかにするために、独立したプロコンが、どのような分野の仕事を、どのように獲得しているのかを見てみる。

 問19では、全員に得意とする専門分野を聞いている。この回答を、プロコンと企業内診断士とでクロス集計したところ、ほとんどの分野でその傾向は変わらなかったが、次の4つの専門分野では、その結果に1%以上の差が出た。

 プロコンが企業内診断士の割合を上回ったのが、生産管理と農林水産振興の専門分野であった。1次産業、2次産業の支援は、プロコンとして活動しやすい分野なのかもしれない。逆に、企業内診断士がプロコンを上回ったのが、財務と情報化・ITであった。財務、情報化・ITを得意とする者は企業内診断士に多いのか、プロコンでは他の専門分野が多いため相対的に低くなっているのか、どちらなのかは定かでない。ただ、この両者は他士業や民間コンサルタントとの競合が激しい分野でもある。プロコンは、それらの者と差別化するために、これらに加えて専門分野を開拓しているのではないかと推測する。
 

(2)独立後、得意分野の仕事をどのように得ているか

 続いて、プロコンはこのような得意分野の仕事を、どのように得ているのだろうか。問15では、経営コンサルタント業務を行っている者の仕事について、公的業務と民間業務の売上に占める割合を聞いている。この結果を、業務開始後の経過年数でクロス集計してみた。なお、「公的業務がやや高い」、「半々程度」、「民間業務がやや高い」と答えた者を、まとめて「中間」としている。

 この結果、業務開始後1〜2年では3割程度だった公的業務中心の者は、3〜5年ではいったん4割ほどに拡大する。独立後、年数が経過するにつれて、公的業務を中心に行うようになる者が増加することが見てとれる。

 しかし6年を越えると、民間業務を中心に行う者が半数近くを占めるようになる。この傾向は、21〜30年を経過した者まで継続する。

 業務開始後、公的業務で経験を積んだ診断士が、時が経過するにつれて高めた実力をもとに、民間企業との直接取引を求められ、取引を拡大していく様子が見てとれる。

 先ほど、資格登録後の経過年数別売上高のグラフでは、6年を越えてから1,000万円以上の売上高を確保する者が急拡大していた。その理由も、今回の公的、民間業務のどちらを中心に活動をしているかに、大きな影響を受けていると思われる。
 

6.おわりに

 以上、筆者が診断士の実態に対して世間が抱いていると考えた「4つの不明」を明らかにするために、アンケート結果を過去比較やクロス集計を用いて分析した。

 この4つの不明に対する答えを求め、分析する過程で、筆者は前回の調査時と比較して、プロコン診断士が活躍するマーケットが確立されていることを感じた。読者の皆様は、どのように感じられたであろうか。

 今回の分析の中には、独断と偏見と思われるものも含まれているかもしれない。1つの見方としてご容赦いただければ幸いである。

プロフィール

大石 幸紀(おおいし ゆきのり)

1972年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、松下電工(現・パナソニック電工)に入社、経理、営業管理業務に従事する。2002年診断士資格を取得し、2年の準備後独立。2004年大幸経営有限会社を設立、代表取締役に就任する。平成22年度中小企業経営診断シンポジウムにて中小企業庁長官賞受賞。著書に『ゼロからわかる会社の数字 基本と常識』(西東社)。