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地元に根付いた活動報告

地産地診

(15)静岡県編

取材・文:平井 彩子(中小企業診断士)

【第2回】食品を通じたものづくりの支援

2016年8月30日更新(取材日:2016年7月14日)

第2回は、静岡県島田市ご出身で食品を含めたものづくりのご支援をされている柴田巧さんに、現在の活動と静岡県の産業や県民性について、お話を伺いました。

食品関係のご支援を中心に活躍の場を広げる

―現在の活動についてお聞かせください。

大きく分けて3つです。1つ目は、県内の食品産業を中心とした"ものづくり関係"のご支援です。静岡ですからお茶は多いですし、焼津周辺は水産加工業が盛んです。また、食品だけでなく、自動車産業に関わる製造業のご支援もしています。この活動が私の主軸となっています。活動拠点としては、静岡県の中部が主体ですが、西部、東部に出向くこともあります。2つ目は、ISOマネジメントシステム構築支援の業務で、食品安全にかかわるISO22000が専門分野です。ISO22000とは、"ISO9001+HACCP"というイメージで、品質マネジメントシステムISO9001に、食品産業における危害分析重要管理点(HACCP)の考え方を載せたシステムです。「地産地診」の活動の一環として、(前回紹介した)「Wアップ!サポート事業」の中で、製茶業に対してISO22000の構築支援を行いました。そして、3つ目は、中小企業大学校の養成課程でのインストラクターの仕事やセミナー講師の仕事も行っています。講師業としては、静岡職業能力開発促進センター(ポリテクセンター静岡)の仕事で、食品メーカーに入社したい方向けに食品衛生法や、食品工場の衛生管理のルール、食品業界のマーケティングなど、のべ16日間のセミナーを行ったりもしています。また、地元金融機関で、ものづくり関係の管理者養成講座に講師として登壇をしています。

―もともと食品業界のご出身なのですね。

大学院卒業後、サッポロビールに入社いたしました。たまたま事業所の組織変更で、静岡県焼津市の研究所に9年ほど在籍する時期もありましたが、基本的に会社員時代は転勤族でした。

私が所属していた部署は、酵母エキスというビール工場にとっての副産物を活用する研究をしていました。酵母は、うまく使わないと捨てられてしまうものですが、実はアミノ酸や有機酸などの有用成分が含まれており、これを酵母エキスの形に加工しBtoBのビジネスで食品メーカーに販売をしていました。私自身は、研究と製造に携わっていたのですが、営業や企画を含めて40人程度の部署でしたから、これがいわゆる中小企業のような活動状況でした。自分の行った研究が、すぐに工場で活かされ、さらに営業で使われ、お客様まで届く。この小回りがきく組織での経験が、中小企業を支援したいという気持ちに繋がっていきました。加えて、入社して20年ほど経過した頃、地元志向・独立志向が芽生え、思い切って退職をしたんです。

―中小企業大学校の中小企業診断士養成課程のご出身でしたね。

独立するのであれば、中小企業診断の現場を経験し、時間をかけてきちんと勉強したいという思いもあり、中小企業大学校の養成課程に入学して、中小企業診断士の登録を目指しました。

―独立して4年目で仕事も安定していらっしゃいますね。

ちょうど丸3年経過し、4年目に入ったところです。1、2年目は仕事も多くありませんでしたが、少しずつご縁を得て仕事を頂くようになり、昨年くらいからは安定してまいりました。

静岡の産業と県民性、これからの支援

―静岡の産業と県民性についてお聞かせください。

産業は、浜松を中心とした西部は工業系、中部は食品関係、沼津・三島を中心とした東部は医薬系が強い地域で、国立がんセンターや大学の医学部などがあります。ただ、東部は熱海や伊豆半島もありますから観光も多いですね。

県民性に関しては、静岡と浜松では全然違うと言われています。東中西(三島・静岡・浜松)で全然違うんですよ。基本は温暖な気候どおりで穏やかで、そんなにせっかちなところはないのですが、浜松は先進的で、いわゆる「やらまいか」(浜松地方の方言、遠州弁で「やろうじゃないか」の意)の精神で、行動力があると言われています。中部はどちらかというとおっとりしており、東部は東京に近いのか、とある意味ではうまく世渡りするような気質があるかもしれません。

―人口流出についてはいかがでしょう。

流出率は全国でもかなり高い方だと言われています。ものづくりが盛んな県で産業も活発なのに、入ってくる人よりも、出ていく人が多いんです。大学がないため、若い人が進学で東京に出て行ってしまいます。そして、東京で就職するため、静岡に戻ってくる人が少ないという流れです。今、静岡県で人口が増加しているのは、東部にある長泉町という町です。がんセンターがここにあり医療が充実しているだけでなく、子育て支援も手厚い町です。また、大企業が存在しており、働ける場所があるという点もあり、若年者人口が増加しています。沼津市と三島市の間で、東名高速のインターもありますし、新幹線の三島駅からも近いですし、地の利もいいというところが人気なのでしょう。

―農産物では、三ヶ日のみかんが有名ですね。

みかんに含まれる「β-クリプトキサンチン」というものがありまして、昔から健康にいいと言われており、その研究を浜松医科大学が昔から行っていたそうなんです。その蓄積をもとに、JA三ケ日が「機能性表示食品」として届け出をしています。機能性表示食品は、もともとあった機能性表示というもののハードルを低くするために出来た制度で、大企業だけでなく中小企業でも取れるようにとの狙いがありましたが、今のところ大企業からのものが多いようです。三ヶ日みかんの機能性表示食品は、浜松医科大学のデータがあって、JA三ヶ日が一生懸命やったからこそ取れたようです。ただ、静岡県も静岡県産業振興財団の「フーズ・サイエンスセンター」で機能性表示食品に関する支援を行っています。静岡県立大学や静岡大学など、データを出せるところの結びつきで担当の方も一生懸命取り組んでいます。

―これからの支援活動についてお聞かせください。

静岡県は農業、工業含めて様々な産業があります。私は中部ですのでお茶を中心とした食品関係、水産加工業も近くにある地域です。現在もご支援しておりますが、今後も力を入れていきたい分野です。

(つづく)

プロフィール

柴田 巧(しばた たくみ)
農学系大学院修士課程(食品工学専攻)修了後、食品メーカーに入社。約20年間勤務し、研究開発部門、工場部門に従事した後、2012年に中小企業診断士登録、その後独立。経営計画策定・ISOマネジメントシステム(品質・環境・食品安全)の構築支援を含め、静岡県内の製造業を中心にサポートを行っている。
事業所名:たくみ経営診断オフィス
所在地:静岡県島田市船木2337-1
TEL:0547-32-9281
E-mail:takumi.shibata@nifty.com