経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

地元に根付いた活動報告

地産地診

(12)宮城県編

取材・文:細野 哲平(中小企業診断士)

【第1回】被災地で求められる支援のあり方

取材日:2014年7月26日

地域に根づいた活動を行う中小企業診断士の方々をご紹介する「地産地診」。今回は、宮城県の皆様を取り上げます。
 (一社)宮城県中小企業診断協会では、多くの中小企業診断士が、復興支援に関する業務に従事しています。そこで、本連載の第1回目では、ほぼ毎日被災地を訪問し、中小企業診断士をはじめ、さまざまな専門家の人脈を活かしてグループでの支援活動に取り組む渡辺進也さんに、被災地支援の実情やあり方について伺いました。

被災地支援の実情

― 渡辺さんの主な仕事内容を教えてください。

渡辺進也さん
渡辺進也さん

コンサルタントとしての活動は、経営相談、コンサルティング、セミナー・研修が中心です。テーマは、資金繰りと売上の対策が多いです。企業様が自発的に資金繰りを安定させて、将来の売上を作っていくためのお手伝いをしています。

― 震災当時の状況についてお聞かせいただけますか。

当時は、仕事で沿岸の町に来ていました。揺れたときは古い建物にいましたので、壊れてしまうのではないかと思いました。その後、町中にサイレンが鳴り、「いまから10メートルの津波が来る」と聞き、無我夢中で車を走らせました。何とか津波の届かない場所にたどり着いたときは足が震えていたのを、鮮明に覚えています。

その後、仙台に戻って1週間くらいは、仕事どころではありませんでした。まずは知っている方々の安否確認ということで、毎日、つながらないはずの電話をかけたり、インターネット上の安否確認の掲示板を見たりして、「あの人は無事なのか」という確認ばかりしていました。

― 震災後、初めての仕事は、どのようなきっかけでどのようなお仕事でしたか。

「経営相談会を開催する」という声をかけていただき、沿岸の町へ行ったのがきっかけでした。

被災地にはさまざまな物が散乱し、被災者の方々も不自由な避難所暮らしという状況でした。小学校の体育館に集まり、机1つで経営相談会を行いましたが、40名くらいの方々が順番を待っていて、やりきれない感情に包まれた独特の雰囲気でした。私が対応できたのは10社くらいと記憶しています。

相談に訪れた皆さんは口をそろえて、「どうしたら良いでしょうか?」とおっしゃっていましたが、すべてを失ってしまった状態で、私も正直、内心では「どうしたら良いのか?」と思っていました。もちろん、そうは言えませんので、話を聞き、「いまは様子を見るしかありません。国もさまざまな支援策を作ってくれますので、命があれば大丈夫ですから」と励ますことくらいしかできませんでした。

このような事態になると、お役に立とうと思っても、話を聞くことくらいしかできないという自身の無力さを痛感しました。

― 被災地支援の具体的な事例を教えてください。

「全部なくしました。どうしましょう」という経営者が相談にいらっしゃいました。お話を伺うと、着の身着のままで逃げて来て、工場はすべて失ってしまったとのことでした。

私はひととおりお話を伺った後、再建のための計画を作ることを提案しました。計画を作っていく中で、現預金残高はあることがわかり、工場の再建築に必要な資金、設備投資額、運転資金額を確認し、今後の売上見込みを作っていくと、経営者もだんだんと安心してきます。そして、補助金や震災融資を活用し、震災前より縮小はしたものの、工場を再開することができました。

とは言え、誰もが経験したことのない事態で復興を予測し、相談しながら計画を作っていく形です。伺ったお話を数字に置き換えて計画を作りながら、「何をするか」を経営者と話していく。野球のコーチのような存在ですね。

経営者も、誰に対しても話をしてくださるわけではありません。相性の良い人や、「この人にだったら話してもいいかな」という人に話してくださいます。自分自身が、その人の立場で親身になって話を聞く。そうすると、経営者も心を開いて話をしてくれるのです。

被災地支援のあり方

― 地元の中小企業診断士だからこそできることは何でしょうか。

一過性ではなく、長くお付き合いしていくことがとても大事だと考えます。たとえば、補助金申請の支援でも、補助金が交付されたら支援を終了するのではなく、そこからが本当のスタートになります。そこはやはり、地元で近くにいるからこそできることではないでしょうか。

中小企業診断士は、相談者から長く必要とされる存在であることが理想だと思っています。

― 他地域の方と一緒に取り組みたいことはありますか。

地元の中小企業診断士だけですと、どうしてもマンパワーが足りないことがあります。親身に経営者のお話を聞いていただける方にご協力いただけると、ありがたいと思います。

また、販路開拓の支援など、それぞれの地域で人脈やルートをお持ちの方に、こちらの地域でお力を貸していただく機会があれば、とも思います。今回の震災で販路を失ってしまった方も多いので、販路開拓のニーズは高いと感じています。

― 震災前後で、ご自身の中で変わったことはありますか。

仲間と一緒に動くことの重要性に気づきました。以前は、自分の力でお客様に貢献したいという思いが強く、すべてに1人で対応しようとしていたところがありました。お恥ずかしい話ですが、自分の存在価値を高めようとしていたようにも感じています。しかし、震災で自分の無力さを思い知り、仲間と一緒にやることで、大きな支援ができるようになることに気づいたのです。

それからは、あまり自分が前に出るのではなく、相手が何をしたら満足してもらえるかを考え、場合によってはほかの方を紹介するなどしています。お客様に一番貢献できる選択肢を選ぶことが大事だと考えています。

― 今後取り組みたいことや、全国の中小企業診断士へのメッセージなどをお聞かせください。

支援先企業様との打ち合わせにて
支援先企業様との打ち合わせにて

これからは、小規模事業者が脚光を浴びる時代になると思いますが、自分や身内の生活を守り、従業員の生活を支える、小さくてもお金が回るような経営モデルを伝えていきたいです。自身の事業承継経験からも、さまざまな変化がある中で長い間お金を回していくのは、並大抵のことではありませんが、それでも身内や従業員は守っていく。そのために必要なのは、資金繰り対策と売上対策だと思っています。

一部では「復興した」という報道もあるようですが、実際に大変なのはこれからです。これまでは、特別融資や補助金などの支援施策、また多くの方々の温かいご支援がありましたが、震災から3年半が経過して、いよいよ厳しい現実が押し迫ってきます。

私たちのような仕事は、今後ますます必要とされると思います。相談したいけれど、誰に相談したら良いかわからない。あるいは、「先生方も皆忙しいのに、自分の相談をして良いのか」という方もたくさんいらっしゃいます。これから、東北の小規模・中小企業は本当の復興に向かい、ますます中小企業診断士への支援ニーズが高まっていくでしょう。私自身も、小規模・中小企業が地域の中で輝いていけるよう、お手伝いをしていきたいと思っています。

【お役立ちコンテンツ】

(つづく)

【関連情報】

渡辺 進也(わたなべ しんや)
有限会社まる進 代表取締役。一般社団法人宮城県中小企業診断協会 理事。1977年宮城県仙台市生まれ。白鴎大学を中退し、19歳で家業を事業承継。その後、自身の会社を経営革新し、V字回復を果たす(宮城県知事より経営革新計画認定)。現在まで17年間、経営者として活動中。金融機関や行政機関などの公職も多く、年間200社以上の決算書を分析してきた経験を活かして、小さな会社が成長するための独自ノウハウにより、関与先で成果を上げている。10代での事業承継と、17年間の企業経営においては債務超過や経営革新も自ら経験してきた全国でも稀少なコンサルタント。