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(11)富山県編

取材・文:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第3回】中小企業診断士の価値を高めたい

取材日:2014年4月21日

中小企業支援関係者が注目する企業再生スキーム「富山県方式」。しかし、(一社)富山県中小企業診断協会(以下、富山県協会)の独特な活動内容は、富山県方式だけではありません。同スキームの考案者である富山県協会の専務理事兼事務局長の藤井忠良さんに、その内容を詳しく伺いました。

中小企業診断士としての独立を協会が強力にバックアップ

― 藤井さんが中小企業診断士になられた経緯と、協会の事務局長に就任された経緯を教えてください。

藤井事務局長
協会として受けた仕事には全て
目を通すと語る藤井事務局長

昭和40(1965)年に富山県庁に入庁し、高等技能学校(職業訓練施設)の指導員として配属されました。その後、経営指導課や商業振興課などを経て、県産業情報センターの事務局長や、(公財)富山県新世紀産業機構の部長を経験しました。その間、診断協会の事務局に約30年間携わってきました。

昭和51(1976)年、31歳のときに中小企業大学校で、中小企業診断士(当時の工鉱業部門。なお現在は、部門が統一されています)資格を取得しました。私が経験してきた職場の多くは、企業の診断にかかわりの深いところでした。公共診断、構造改善診断、高度化診断とさまざまな診断に従事し、診断力をつけてきました。

当初、協会の事務局は県庁内にありましたが、私が県産業情報センターに出向する際に、私とともに事務局の場所も移動することになりました。それ以後、事務局の運営に係わっています。

63歳のときに、雇用延長で勤めていた(公財)富山県新世紀産業機構を辞めることとなり、これを機に事務局長も辞める決意をしたのですが、後任者が見つかりません。ちょうど、当時の富山県支部(現・富山県協会)が一般社団法人へ移行しなければならない時期でしたので、継続することになりました。先ほど述べたような経歴ですので、県内の中小企業支援機関とのネットワークがあり、営業に回れば仕事をいただけますので、その仕事を会員の皆さんに担当してもらっています。

協会として仕事を受ければ、その仕事には協会が責任を持たなければなりませんので、委託先に迷惑をかけないよう、調整などは私が行っています。会員ごとに、向き不向きや若干の能力差はありますが、人選を行い、スケジュールを把握したうえで仕事を依頼しています。また、最終的な仕事内容のチェックも行います。

― 独立したばかりの中小企業診断士には、協会として具体的にどのような支援をされていますか。

独立したばかりの方には、仕事の斡旋や情報提供をしています。独立したての時期に、独力で仕事を獲得するのは、とても難しいことです。協会は県内の中小企業支援機関にネットワークがありますから、どこで専門家を募集しているかという情報が集まってきます。最初の1年間は、支援機関に張り付く仕事に就いてもらうケースもあります。そこで1年間頑張っていただければ、ネットワークが広がり、次のステップが開けます。

協会が受けている仕事の中で、私が担当するものには若手診断士を同行させ、仕事を教えます。謝金は半々です。そのやり方で、県内の独立診断士の約半数の方に協力してきましたので、実力はある程度把握できているわけです。

― 「富山県で中小企業診断士として独立するなら、協会のドアを叩く」という流れができているのですね。

藤井事務局長
県経済に中小企業診断士は
欠かせない存在と語る藤井事務局長

富山県出身で、現在は県外で活動している中小企業診断士で、富山県でも活動したいという方がいるのですが、その方とも一緒に支援先を回り、仕事を教えています。

中小企業診断士に求められるのは、経験とセンスです。診断の経験が浅い中小企業診断士が独立してやっていくためには、協会が経験を提供しなければなりません。会員になっていただいているのですから、協会としてメリットを提供する必要があるのです。現在、協会の活動に参加してもらっている独立診断士には、それ相応の仕事を提供できています。

― 企業内診断士の方に対しては、いかがでしょうか。

企業内診断士の会員についても、会員になる明確なメリットを提供したいと考えています。1つ目は、企業診断士部会、専業診断士部会、公的機関診断士部会、女性部会と4つの診断業態別研究部会を立ち上げ、希望者はいずれかに所属し、情報交換や人材交流を行っています。

2つ目としては、実務従事でポイントを獲得する機会を提供しています(診断実務従事事業)。協会が診断対象企業を見つけてきて、6日間で診断を行うものですが、1回参加すると6ポイントを取得できます。このように実務従事の機会を協会として提供することは、全国的にも早い段階から実施しています。企業を見つけるのは大変ですが、何とかしてあげなければ、という思いでやっています。

全国から注目される「富山県方式」

― 現在、全国の中小企業支援関係者から注目されている「富山県方式」について教えてください。

「富山県方式」は、国で進めている経営改善計画策定支援事業についての、富山県協会の取組み方法のことです。中小企業庁のパンフレットや中小企業白書でも紹介された企業再生支援のスキームです。

その内容は、認定支援機関である金融機関さんと当協会が並列の関係で、経営改善支援センターに企業改善支援の利用申請を行います。そして、協会が事業デューデリジェンスを中心に、改善事項を提案しながら経営改善計画の策定支援までを行います。金融機関さんと協会が、同じ認定支援機関として合同で経営改善支援を進めていくことが、「富山県方式」のポイントです。

この方式は、以前から当協会が県内金融機関と友好的関係を築いてきたからこそ可能となっているもので、金融機関に勤務する会員診断士と連携しながら進めています。具体的には、金融機関の取引先を、診断実務従事事業の受診企業として私たちが支援していたようなことが活きているのです。

最初は、富山信用金庫(とみしん)さんとスタートし、いまでは県内の5金融機関さんとも実施しています。一時期は、経営改善計画の策定数が、東京に次いで全国2位となっていました。現在は4位ですが、おそらく中小企業診断士が担当している件数としては全国1位ではないでしょうか。富山県の経営改善支援は、すべてを中小企業診断士が担っているのです。

― このスキームを実現するためのポイントをお聞かせいただけますでしょうか。

再生計画書
再生計画書は診断協会として品質を担保する

「富山県方式」を確立するために、協会として報告書の様式を作成しました。そして、様式に沿って行うデューデリジェンスの手順も統一し、会員に対しては研修も行いました。このような準備があるからこそ、これだけの件数に対応できるのです。

さらに、会員が作成した報告書は、内容に誤りがないかをすべて事務局でチェックしています。修正点があれば、電話でやりとりをして修正してもらいます。これをやらないと、協会として品質を担保できません。

私は長い間、県や支援機関で診断業務に従事してきましたので、その経験が活きています。業種や問題の深刻度に応じて、どの会員に担当してもらうかを決めていますが、基本は1社1名に担当してもらいます。

経営改善支援センターに申請する支援料金は、3万円×6日間の18万円です。このうち2/3は経営改善支援センターが負担し、1/3は企業負担ですから、企業の負担は6万円になります。つまり、1日あたりの負担は1万円ということです。この事業の対象となる中小企業は業績が悪いわけですから、多くの金額を負担することは無理です。「富山県は受託料金が安い」といった声も聞こえますが、私はこの金額だからこそ、これだけの支援数を実現できているものと考えています。

診断手順も決まっています。訪問調査が2日、最後の報告会が1日で、計3日間は企業を訪問します。経営改善では金融支援が重要な課題になるので、1日は金融機関さんとの調整を行います。残りの2日間は、経営改善計画書の作成です。他の会員の都合がつかなかったり、金融機関さんから指名されたりしたときは、私も担当しています。

うまくいっている理由は、お客様を金融機関さんが連れてくるからです。金融機関さんに言われたら、お客様もイヤとは言えませんよね。そのうえ、1日の負担は1万円ですから、金融機関さんとしては「どんどん申請しましょう」となるわけです。お客様には、「この経営改善に取り組めば、新たな金融支援があるかもしれない」という期待もあります。こうして、お客様と金融機関さんの思いが一致するので、どんどん申し込みが来るわけです。

もしも、中小企業診断士や税理士が直接お客様を見つけてきて経営改善を進めても、最後の金融調整ができません。金融機関さんと協会が合同で申請を行い、金融機関さんが当事者としてサブの金融機関さんを調整するので、金融支援の合意もつきやすくなるのです。お客様をよく理解している金融機関さんが経営改善支援センターに申請する書類も作ってくれるので、うまくいくわけです。

さらには、計画策定後のフォローアップも、金融機関さんが積極的に行ってくれます。私たちの提言内容を実施させたり、取引先内でマッチングをさせたり、といったことですね。

富山県経済の中で中小企業診断士が欠かせない存在に

― 噂どおり、「富山県方式」は素晴らしいスキームですね。このほかに、協会としてはどのような事業を行っているのでしょうか。

受託事業では、県内13ヵ所のインキュベーション施設を巡回して入居者の経営支援を行う「インキュベーション施設等指導助言事業」や、富山県信用保証協会からの依頼で、6日間で経営改善支援を行う「とやま中小企業サポート事業」などを実施しています。

障がい者工賃向上も早い段階から受託していますし、県の公的宿泊施設のコンサルティングや、森林組合の経営診断事業など、活動の領域を増やしています。昨年までは、農業のニューリーダー育成研修なども手がけていました。

受託事業は、比較的いただいているほうだと思います。品質はすべて協会の責任になりますので、この点に関しては特にしっかりとやっていますね。

たまに、「そこまでしなくて良いのでは」と言われることもありますが、私はいまの仕事が好きなのです。こうした受託事業を積極的にとって、経営改善も多く手がけていけば、新たな金融機関さんが「うちもやりたい」と声をかけてくれます。昔から、人のために何かをやることは嫌いではありませんでした。少年野球の監督など、好きなことは自分で手を挙げてやる質ですから、苦ではありません。

いまや、県経済の中では中小企業診断士が欠かせない存在になってきました。事業デューデリジェンスのような仕事は、経験のある中小企業診断士が誰よりも得意なのです。「この仕事は、絶対に中小企業診断士がやらなくてはダメだ」と、事あるごとに訴えてきました。

― 今後の協会としての方針や強化したい部分についてお聞かせください。

まずは、協会として財務基盤を確立したいと考えています。私が事務局長をずっと続けるわけにはいきません。後任の事務局長には、しっかりと報酬を払える体制を整えないと、なり手がありませんし、そうなれば協会は衰退してしまいます。いまのうちに、財務基盤を強化すべく内部留保をしていますし、節約できる部分は徹底的にしています。

また現在、企業内診断士でプロコンを目指したいという方からの相談を受けていますが、小さな県ですから、独立診断士が増えるということは、ライバルも増えるということです。そのときに備えて、さまざまなところに営業をかけ、さらに領域を広げて仕事を確保したいと思っています。

実力がついて知名度が上がれば、直接の仕事が入ってくるようになり、生活基盤は強くなります。そういった方も大勢出てきていますし、第2回に出られた丸亀さんは、若手の中でも特に頑張っておられます。

協会に入ってくれた会員は、中小企業のために何かをしたいという気持ちで集まっているのですから、そうした皆さんに何かをしてあげたいのです。一人前になっていただきたい、という思いもありますし、せっかく会費を納めてくださっている企業内診断士にも、何かを還元したいと思っています。

また、やりたいことは調査研究です。昔のように、何人かを募って調査研究事業を実施し、県などに提言を行い、ますます中小企業診断士の価値を認めていただきたいですね。なかなか手は回りませんが、しっかりとしたグループを作ってやれば、任せられるのではないかと思います。

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(おわり)

【関連情報】

藤井 忠良(ふじい ただよし)
(一社)富山県中小企業診断協会専務理事および事務局長。昭和40年富山県庁入庁後、高等技能学校をはじめ、経営指導課・商業振興課に配属。(財)富山県産業情報センター事務局長、(財)富山県新世紀産業機構経営支援部長、中小企業支援センター部長などを経験後、平成17年(社)中小企業診断協会富山県支部事務局長に就任後、現職。

会社名 (一社)富山県中小企業診断協会
会長 羽田野 正博
専務理事・事務局長 藤井 忠良
所在地 〒399-8204 富山市高田527番地 情報ビル内
TEL・FAX 076-433-1371