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地元に根付いた活動報告

地産地診

(9)福岡県編

取材・文:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第1回】異業種士業連携の中核を担う

取材日:2013年5月30日

地域に根づいた活動を行う中小企業診断士の方々をご紹介する「地産地診」。今回は、福岡県の皆様をご紹介します。
 福岡県中小企業診断士協会は、組織としての受注活動に積極的に取り組んで、県行政の一翼を担うとともに、九州志士の会という異業種士業連携の中核を担って、中小企業診断士の枠組みを超えた中小企業支援を展開しています。今回は、独自の活動を進める福岡県協会会長の槇本健次さんと2人の若手診断士に、お話をうかがいました。まずは、積極的な受注活動に取り組む理由を、槇本会長にお聞きしました。

九州・沖縄診断士の中核として

― 福岡県協会として、どのような方針で運営・活動をされているのでしょうか。

槇本健次会長
福岡県協会の魅力を語る槇本健次会長

福岡県は、商業の福岡と工業の北九州という、2つの政令指定都市を抱えています。いまは工業が厳しく、北九州は少し元気がありませんが、福岡市は元気です。人口も大きく伸びています。

そのような福岡県で、福岡県中小企業診断士協会は、県行政の一翼を担っています。5~6年前から、協会として積極的に県の事業を受託するようになり、いまでは経済産業分野だけでなく、労政分野はもちろん、環境・福祉分野からも依頼を受け、6次産業化の推進ということで農業分野にも裾野を広げています。

福岡県協会は、診断士試験の運営を担っていることもあり、九州・沖縄の診断士の9割は、何らかの形でこの福岡県協会とかかわっていると思います。そのため、福岡県を中心に、九州・沖縄地区では県を超えての交流が活発です。特に私が会長になってからは、この横のつながりを意識して強化してきました。たとえば、九州・沖縄連絡協議会を立ち上げて年4回は集まり、事業の公募情報の交換や受注ノウハウを共有するなどしています。こうした活発な交流が、他の地域とは異なる九州・沖縄地区の特徴でしょうか。

福岡県協会には、総務、業務、広報、政策提案・事業開発の4つの委員会があり、その下位にさらに17の部会を設け、それぞれに役割が与えられています。部単位で活発に活動することで、会員ニーズの充足や事業の受託を進めています。

― 協会として受注活動に力を入れる目的は、どのようなところにあるのでしょう。

経歴書に実績を書けない中小企業診断士が仕事を獲得することほど、難しいことはありません。そのような状況でいくら営業をしても、成果は出ません。ですから、最初は協会が受注した業務に従事してもらい、それを実績として経歴書に書けるようにしてもらうのです。独立したばかりの中小企業診断士も先輩診断士と同行し、協会員の名刺を持って金融機関や行政機関を訪問します。このようにして案件を確保し、営業の方法を覚えていきます。

こうした活動が実を結び、いまでは金融機関や、その系列のコンサルティング会社との提携が増えています。金融機関が我々のフィーを負担して、彼らのクライアントに対するコンサルティングやセミナーを提供したり、事業計画作成の支援などを行ったりしています。また、九州北部には長崎、福岡、佐賀の13信用金庫からなる九州北部信用金庫協会がありますが、ここが300社規模のビジネスマッチングフェアを開催した際には、福岡県協会がそのマッチングの方法をアドバイスする役割を担いました。このように、福岡県の金融機関の中で、我々の位置づけは大きなものになりつつあります。

九州志士の会を通じて、多様な士業と連携を図る

― 槇本会長は、九州志士の会という団体の会長も兼任されているとうかがいました。

九州志士の会ホームページ
九州志士の会ホームページより

九州志士の会は、正式名称を「一般社団法人九州地域中小企業等支援専門家連絡協議会」という、中小企業支援に携わるさまざまな士業や専門家が集まる集団です。

九州志士の会設立のきっかけは、経済産業省のある方とお話をしていて、「槇本さん、この弁護士さんを知っていますか?」と聞かれたことでした。経済産業省の方には、同じ中小企業支援を担う専門家同士なのに、意外と横のつながりが弱いと映ったようで、お互いの人脈リストを出し合って専門家同士が顔合わせをしたら面白いのでは、ということになりました。そこから、異業種士業が参加する九州志士の会を作ろうと話が弾み、先に「志士の会」と名づけ、1年半かけて後から細かいことを決めていきました。

― その会の事務局を、福岡県協会が担っているのですね。

最初から我々が中心に進めて、中小企業診断士中心の会になってしまうのは避けたかったのですが、準備を進めるうちに、どこかが事務局をやらなくては進まないと、周りから求められるようになりました。そこで、福岡県協会の理事会で、九州志士の会の事務局機能を担ってよいかどうかの審議を経て、我々が事務局を担当することにしました。

当初は、会員同士が緩いつながりを持った組織にしようとのことだったのですが、会員には弁護士さんがいます。「こういったとき、どのようにする」といったことを明確にしていくうちに、しっかりとした定款もできました。いまでは弁護士、司法書士、弁護士、社会保険労務士、公認会計士、税理士、行政書士はもちろん、民間のコンサルタントやスペシャリストも会員となり、120名強の中小企業支援専門家がメンバーになっています。

九州志士の会の活動範囲は、福岡県だけに限りません。中小企業診断士だけでは解決できない問題でも、各専門家が連携してスムーズに解決できる体制ができていますので、近隣県からも要請を受けています。金融機関が開催するフェアなどに相談員を派遣したり、国の中小企業支援施策を活用して専門家を派遣したりもしています。プレスリリースを積極的に行ったこともあって、認知度も上がりました。将来的には、民間のコンサルティング会社とのコンペにも勝てるような組織にしたいと考えています。

協会としての受注活動に力を入れる理由

― 槇本会長ご自身が、中小企業診断士になられた経緯を教えてください。

米倉さん、槇本さん、井上さん
左から米倉さん、槇本さん、井上さん

私は、平成2(1990)年に中小企業診断士に登録したのですが、その前は製薬会社の代理店で役員をしていました。昭和57(1982)年に医療費の1割負担が始まり、今後は病院も患者を集める努力が必要になるだろうと予測し、リテールサポートの延長としてコンサルティングの真似事を始めました。そして、経営の知識を高めることのできる資格を探し、診断士資格にたどり着きました。

1次試験は一発で合格しましたが、2次試験には時間を要しました。3回も落ちて、1年落ちるたびに、「これほど難しい中小企業診断士の仕事というのは、さぞかしすごいものだろう」と、少々勘違いをし始めてしまいました。1年で受かっていたら、独立していなかったかもしれませんね。ついには会社に、「今年受かっても落ちても、会社を辞めます」と宣言し、背水の陣を敷いて受験に臨みました。結果は合格でしたので、すぐに独立しました。

独立に際しては、家族会議を開きました。当時、3人の息子が小学2年、4年、6年生でした。彼らに、「うまくいけば大学までやれるが、うまくいかなければ大学にやれないかもしれない。それでもいいか」と問いかけたところ、皆「いいよ、頑張って」と言ってくれました。

それまでの人脈を活かした見込み客リストを作り、開業前に事業計画も作りました。診断、講演、執筆でこれくらいの収入が見込めるから、生活費をこれくらいはまかなえるか、といった内容だったのですが、実際にはまったくそのとおりになりませんでした。見込み客からは、「うちが槇本さんの実験台にされるのはイヤだ」と、ことごとく断られてしまいました。

そこから予定が狂って、苦労が始まりました。商工会議所に営業に行っても、仕事はいただけません。仕事がないまま耐えているうちに、先輩診断士から声をかけていただき、商店街の支援などをやらせていただきました。その後3年が経ち、経歴書が埋まった頃には、営業もうまくいくようになり、自分でも事業を受託できるようになりました。

自分のこの体験から、いまの協会では意図的に、独立したばかりの中小企業診断士を支援しているのです。外から見ると、こき使っているように見えるかもしれませんが(笑)、そんな思いからやっています。ですので、福岡県で独立を考えている中小企業診断士には、ぜひ福岡県協会に相談してもらいたいと思っています。

(つづく)

槇本 健次(まきもと けんじ)
 有限会社エムケイブレーン代表取締役。一般社団法人福岡県中小企業診断士協会会長、一般社団法人九州地域中小企業等支援専門連絡協議会会長。1945年山口県生まれ。熊本大学工学部電気工学科卒業後、1968年航空自衛隊に入隊、主に航空機の開発・試験に従事、防衛大学校研究科卒業。1973年除隊し、医家向け医薬品卸会社に入社、営業部長を経て専務取締役。1990年、中小企業診断士試験に合格して独立。1993年有限会社エムケイブレーンを設立、代表となる。
 まちづくり、商店街の活性化のほか、企業の再生、産廃業の診断、創業塾・経営革新塾の運営に携わる。各地でまちづくりや企業社員向けの講演・セミナー多数。

会社名 有限会社エムケイブレーン
所在地 〒812-0011 福岡市博多区博多駅前3丁目26番14号 第2宮島ビル3-D
ホームページ http://www.mkbrain.co.jp/
E-MAIL office@mkbrain.co.jp
TEL 092-482-3616

一般社団法人 福岡県中小企業診断士協会

一般社団法人 九州地域中小企業等支援専門連絡協議会(通称、九州志士の会)