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地元に根付いた活動報告

地産地診

(8)岡山県編

取材・文:渡辺 まどか(中小企業診断士)

【第3回】本当の喜びを企業に与えるために

取材日:2012年11月17日

地域に根づいた活動を行う中小企業診断士の方々をご紹介する「地産地診」岡山県編の第3回。今回も前回に引き続き、岡山県商工会連合会の地域経済対策課で主任専門経営指導員を務める津田健治さんにお話をうかがいました。

「全国を代表する商工会バカ」として

― 専門家に求めることは、何でしょうか。

受講生発表
受講生発表

津田:3つあります。「一般論はいらない」、「具体論を教えてほしい」、「事前の処理と事前情報が不足していたら、遠慮なくつき返してほしい」の3つです。

課題には、見えている課題と隠れている課題がありますよね。でも、隠れている課題に気づいても、専門家派遣というスポット的な仕事だと、専門家は十分に対処できない。経営支援は小規模事業者が対象ですが、小規模事業者はもともと体力がないため、注射や点滴のような一過性の処置だけではだめなんです。

― と言うことは、継続支援をする前提で、仮説を立てる際に必要な情報を事前に指摘してほしいということでしょうか。

津田:そのとおりです。仮説を共有してからでないと、意味がありません。1回の訪問というチャンスがロスにならないよう、ミスマッチを起こさないようにすることが必要です。ミスマッチの原因の多くは、経営指導員が経営者から話を聞けていないことです。ですから私は、そのミスマッチを解消する1つの策だと考え、連合会に移ってからは主として、指導員のサポートを行っています。

私は、事業再生や経営安定化といった危機的状況にある企業を支援することが多いのですが、ちょっとでもタイミングがズレると手遅れになるんです。慎重かつスピーディな判断のいる場で、少しの遅れが完全な手遅れになるんですよね。小規模企業は、家計と企業がイコールで、本当の意味で食べていけなくなる。

― 危機的状況にある企業を継続支援していると、思い入れが強くなりませんか。

津田:そうですね。小規模企業は治療(支援)に終わりがないので、ゴールのないマラソンを1日に複数走っているようなものです。商工会の経営指導だけでなく、金融機関や専門家から直接情報が入ってくることも多いので、時間がないこともあって、私たちは商工会の経営指導員と一緒に直接、企業を訪問します。他の商工会連合会よりも、支援企業と直接接する機会が多いでしょうね。複数の目でかかわったほうが、各段階でのミスマッチもなくせますし。

経営指導には客観性が求められますが、現場で働く商工会の指導員は経営者と日々接しているため、私たち以上に思い入れが強い。そこに連合会の人間である私たちが行くことで、経営者に言いにくいことを話したり、現場の指導員ができないお願いごとをしたりする。それが、私たちの仕事なんです。そして、私たち連合会の経営指導員以上に客観的な立場にあるのが、専門家という認識です。専門家だからこそ、経営者にとって耳が痛い話でも言えるという側面もあるんです。継続的な支援をする人間には、言えないこともあります。現場の指導員は、時には経営者をひっぱり、寄り添い、後ろから支えることが必要です。

岡山県商工会連合会
岡山県商工会連合会

― いまのお話を聞いて、私自身が専門家として携わる際の立ち位置もよくわかりました。津田さんが、専門家にお願いしたいことはありますか。

津田:商工会連合会で専門家にお願いをする際は、知識以上に経験が求められます。重要なのは、「専門家がこれまでの実務をどのような立場で経験したか」、「どれくらいの企業規模にかかわったか」といったことです。ですから、私が専門家の方に新規登録をお願いする場合は、判断材料とするために、実績がわかるような具体的なプロフィールや、過去に行ったセミナーの一部資料などの添付をお願いしています。

― 岡山県商工会連合会独自の組織、経営支援強化班(以下、強化班)について、もう少し詳しくお聞かせください。

津田:結成は平成23年4月で、メンバー構成は経営指導員3名と、サポートをしてくれる嘱託専門家3名です。強化班ができたことで、助からなかった命が助かるようになったと言えます。後手に回った事業再生案件のように、本来助かるはずの命が助からなくなる理由は、「気づかない」、「助ける力がない」、「気づいたが放置する」の3つですが、これらをなくせるのが強化班です。県内に235人いる経営指導員の中で、この3人だけが経営支援に専念できるんです。

― 岡山県商工会連合会のあるべき姿は何でしょうか。

津田:中小企業が経営力を高めることで自立し、本当にできないことを私たち経営指導員がサポートする。これにより本当の喜びを企業に与える仕事ができるようになることを目指すことですね。

経営支援強化班長の石井宏幸さん、津田健治さん、春名文人さん
左から経営支援強化班長の石井宏幸さん、
津田健治さん、春名文人さん

― 最後に、津田さんのミッションを教えてください。

津田:私は、自分のことを「全国を代表する商工会バカ」だと思っています。つい、自分のことは後回しにしてしまう。24時間365日、仕事のことを考えています。ですから、個人で「こうなりたい」というのはありません。ただ、自分の子どもから「お父さんの仕事って何?」と聞かれたときに、短い言葉で説明できる仕事をしたい。そういう仕事と社会的地位を、この商工会連合会で築きたいと思っています。子どもは、小学2年生と5年生の女の子ですが、物産展などに連れて行き、「この商品はね、お店の人はね...」といった話を聞かせています。子どものうちに、経営や商売を教えたいんです。「世の中はこういう風に動いている」とわからせたい。お父さんやお母さんの仕事が全部つながっていることを子どもたちが理解できれば、現代の社会問題も減るはずなんです。

私は、自ら判断できる、分別ができる人間を育てたいんです。自分の失敗からも、わからないことをわからないままにしておくことはさせたくない。このことは、他の経営指導員に講演や育成を行う際にも、常に伝えています。この仕事に就いて14年が経ったいまでも、まだまだ奥は深く、しんどいけれど、楽しいし、やりがいもあります。本当の喜びを企業に与える仕事ができるようになることを目指して、日々頑張っています。

(おわり)

【参考】

プロフィール・会社概要

団体名 岡山県商工会連合会
所在地 〒700-0817 岡山市北区弓之町4-19-401
ホームページ http://www.okasci.or.jp/
E-MAIL shokoren@okasci.or.jp
TEL 086-224-4341
FAX 086-222-1672