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地元に根付いた活動報告

地産地診

【第1回】積極的に事業を受注し、若手診断士の育成に取り組む

取材日:2010年12月11日

「地産地診」コーナーの第2回目は、山口県の皆様を取り上げます。そのトップバッターとして、(社)中小企業診断協会山口県支部の支部長であり、(社)山口県中小企業診断協会の会長でもある谷口修さんにお話を伺います。

Uターンした山口県で中小企業診断士として独立

― 独立の経緯を教えてください。

私が中小企業診断士資格を取得したのは、山口県の鉄鋼メーカーに勤務していた30歳のときでした。その後、千葉県に転勤し、生産管理システムの開発を担当しました。45歳のときに依願退職して山口県にUターンし、その2ヵ月後に中小企業診断士事務所を立ち上げました。平成7(1995)年のことです。独立前後は、周囲の皆さんが「飯は食えるのか」と、大変心配してくださいました。

― 実際は、どうだったのでしょうか。

独立当初は、中小企業のIT化を支援するために、自社でコンサルティングからシステム開発まで一貫して請け負うという事業スタイルをとっていました。私が中小企業診断士として経営診断とコンサルティングを行い、その課題克服のシステムを社内SEが開発するという事業形態ですね。当時は、中小企業もIT化に関心を示し始めた頃で、開発案件を受注することができました。

― では、開業当初から順調だったのですね。

谷口修さん

ところが、受注してからが大変でした。自分の改善提案に対し、自社のシステム開発能力がついていけず、納期が守れなくて、お客様にお詫びしなくてはならない。コンサルタントとしてあるべき姿を描きながら、その実現ができずに頭を下げる―そんなジレンマを抱えた時期もありました。

そんな中、時間が経つにつれて開発能力が向上し、会社も成長しました。ISOコンサルが活況だった時期は、中小企業診断士を含め、9名のスタッフで多忙を極めていました。

その後、スタッフも成長して各々独立し、外部パートナーとしてお付き合いさせていただいています。現在は、私が直接システム開発にかかわることも少なくなり、自分がコンサルティングをした中小企業と、昔仲間だったSEの方々をつなぐコーディネーター役をしています。

― 現在は、どのようなお仕事が中心なのでしょうか。

企業再生や販路拡大支援、まちづくり等の案件が多いですね。企業再生に関しては、中小企業再生支援協議会からの依頼で、事業デューデリジェンスを実施しています。支援先企業の日々の資金繰りや収益構造の改善を支援したり、金融機関へ提出する資料作成を支援したりします。そのほかに、(社)中小企業診断協会山口県支部長、(社)山口県中小企業診断協会会長としての業務があります。

50年を超える歴史を持つ(社)山口県中小企業診断協会

― (社)山口県中小企業診断協会は、平成21年に50周年を迎えられたとお聞きしています。

(社)山口県中小企業診断協会は、(社)中小企業診断協会山口県支部とは別の独立した社団法人です。現在は、約60名の会員が所属しています。当時の山口県知事が山口県の経済活性化、とりわけ中小企業支援を実践するために設立した協会で、当初は税理士や公認会計士の方々も一緒に活動し、2代目までの会長には公認会計士の方が就かれていました。その後、中小企業診断士が増え、現在では中小企業診断士が中心の会となったのです。

(社)山口県中小企業診断協会では、公募事業等へ積極的に応募し、年間1千万円程度の受託事業を、会員が分担して実施しています。中小企業診断士にとって、コンペに勝ち残る事業構想力と提案力は必要不可欠なばかりでなく、受託事業は、独立間もない中小企業診断士の実践力育成の場として有効です。

― なるほど。もう少し、若手診断士の育成についてお聞かせください。

中小企業診断士のスキルは、実務を通じてでないと伸びません。若手や独立したばかりの中小企業診断士は、活躍する場や成長する場に恵まれないケースがあるため、(社)山口県中小企業診断協会が自ら提案して創り出した事業を、若手診断士とベテラン診断士がペアで担当することにしています。若手診断士は、ベテラン診断士の考え方やコンサルティング手法を、実践を通じて学ぶことで、自らのスキルを高めることができる。それが、とても大切です。

― 提案された事業の中には、「便利屋プロジェクト」と呼ばれるものがあるそうですが...。

この事業は、国の「ふるさと雇用再生特別基金事業」に基づく県の事業なのですが、地域の創意工夫で、地域の求職者等が継続的に働く場を創り出す提案をした組織に事業を委託するというものです。(社)山口県中小企業診断協会では、「公的サービスの谷間を埋め、障がい者の自立を支援する『便利屋サービス』の展開」という事業を提案し、平成21年度から受託しています。これは、当協会が以前より取り組んでいる授産施設(障がいを持つ方に就労の場を提供する施設)の工賃向上という課題と、県内失業者の雇用創出という課題に加え、高齢化社会に対応した安心な地域づくりという3つの課題に同時に取り組もうというものです。

授産施設で働く障がい者の工賃を上げるためには、一定の品質の商品・サービスを世の中に提供することが必要です。本事業では、高齢者やひとり親家庭が自らの手では行えない家事、たとえば庭の草むしりや重たい家具の移動、清掃や片づけ、網戸や障子の張り替え等を、授産施設で働く障がい者が「便利屋」としてサービスを提供します。

山口県中小企業診断協会が運営する便利屋プロジェクト事務所
山口県中小企業診断協会が運営する
便利屋プロジェクト事務所

授産施設の中には、「障がい者に、そんなことが可能なのか」と不安に思うところもあるでしょう。そこで当協会では、「便利屋事業」を手がけたいと希望する授産施設に、当協会の指導員と中小企業診断士を派遣し、業務マニュアルの提供、職員の教育訓練、周辺高齢者宅への広報活動等を行うことで、事業の立ち上げと運営をサポートしています。この指導員は、当協会が失業者を雇用し、教育訓練を行った者です。「便利屋事業」を展開することで、新たな雇用が生まれたのです。

この事業での中小企業診断士の役割は、施設における「便利屋事業」展開の戦略を構築し、アクションプランと収支計画を立案することです。また、定期的に授産施設を訪問し、施設長と指導員と3者で面談を行い、課題の把握や事業の進捗管理を行っています。

― 素晴らしい事業ですね。現在までに、どのような成果が出ているのでしょうか。

「便利屋事業」を手がける授産施設が増えれば、障がい者がより高い工賃を受け取ることで自立への道が拓けるとともに、地域社会で安心・便利なサービスを享受できる高齢者や女性も増加します。さらには、指導員としての雇用が生まれ、若手診断士の活躍の場は増え、四方が一度にその恩恵を享受できるのです。

この事業を手がけて2年が経ちますが、「便利屋事業」を提供している授産施設は、県内で8施設となりました。そのうちの1つは、山口県で工賃がもっとも高い施設になりました。従来の授産施設の仕事と言えば、内職的なものが多かったのですが、「外に出てからだを動かし、お年寄りと交流することで、障がい者の皆さんの目が輝いてきた」という嬉しい報告もいただいています。

雇用した失業者も、4名になりました。指導員の中には、授産施設から自施設で雇用したいというオファーを受け、授産施設の職員として就職した方もいます。障がい者が自立するには、障がい者施設も地域から必要とされる開かれた施設にならなければなりません。その1つのツールとして、「便利屋事業」が有効だと信じています。

(つづく)

プロフィール・会社概要

谷口 修(たにぐち おさむ)
(株)ソルテック代表取締役。鉄鋼メーカーに勤務後、平成7(1995)年にUターンし、独立。現在は、製造業やサービス業を中心とした事業計画策定・品質管理支援のほか、事業承継・事業再生等の支援を行っている。

会社名 株式会社ソルテック
代表取締役 谷口 修
所在地 山口県光市光井4丁目25-33
TEL 0833-74-0128
FAX 0833-72-1161
URL http://www.b-soltec.co.jp/