中小機構のナレッジリサーチ事業

中小・ベンチャー企業と産学連携に関する調査研究

−事業化に至った企業事例を通して−

産学(官)連携は、「長期戦略指針イノベーション25」、「経済財政改革への基本方針2007」、「知的財産権推進計画2007」等、政府によってイノベーションの創出の手段として位置づけられ、今後の発展が期待されている取り組みである。

本報告書(本調査研究)では、(1)技術開発や製品開発をしたい、また、しなければならないと思っている、もしくは(2)産学連携をやってみたい、またこれまで行ってきたが目的達成には及ばなかったという中小・ベンチャー企業を第一の読み手と想定している。

本調査研究の目的は次の2点である。

(1)産学連携自体に焦点を当て、関連する政策、連携実績等を整理すること。そして、産学連携に対して企業側の関心の高い項目を確認すること。

(2)企業側の関心の高い項目に該当する企業事例に焦点を当て、企業が連携を行った経緯、直面した課題、そして克服ポイントを浮き彫りにすること。そして、そのポイントをフローチャートを用いて提示を試みること。

調査研究を進めるにあたり、既存文献のレビューとインタビュー調査を行った。既存文献のレビューの目的は、産学連携の仕組みや関係者の認識の変遷を確認するためである。また公開されているデータをもとに、産学連携を経験した企業の多くが、何を目的とし、どのような成果(メリット)を得ていたのかを導き出すことも念頭において実施した。既存文献における知見は、3つである。

(1)産学連携実施数の増加
中小企業における取り組みが年々増加傾向にある。共同開発の件数だけで、2003年度2969件だったのが、2006年度には3926件と約1000件近く増えている。
(2)企業規模によって商品化(事業化)想定時期が異なる
従業員規模が大きいところほど、連携事業に対して商品化(事業化)を長期的視点で捉えている。逆に企業規模が小さい企業ほど、1〜3年程度内での商品化(事業化)を望んでいる。
(3)中小企業における最大の関心事は事業化
中小企業が連携を行う目的は、「新たな技術・製品開発」が最も多く、メリット(成果)においても、「自社単独では実施が困難な技術・製品開発ができた」というものだった。つまり、連携事業において中小企業が最も関心のある事項は事業化であり、よって本調査研究の焦点を事業化とすることとした。

インタビュー調査では、事業化に至るまでの経緯、課題、そして、その克服のポイントを調査した。事例対象とした企業は、製造業4社、その他の製造業1社、情報通信業1社の計6社である。事例研究の分析の枠組みとして、企業概要、連携事業概要を利用した。事例研究の分析から導かれた知見は次の5つである。

(1)産学連携プロセスについて
連携事業そのものが、事業化に至るまでの各段階【アイディア→研究→開発(主製品開発・評価試験・生産)→事業化(販路開拓等)】において、研究と主製品開発に集中して行われているということが分かった。また、一般的に「アイディアは、大学から誕生する(発生する)」と言われているが、今回の事例企業では、全て企業側から出ており、そのうち、大学が同時に関与していたのは6社中3社であった。
(2)事業化に至るポイントについて
事例研究の結果、産学連携を行うにあたり、T)企業の「組織」、U)産学連携;体制・コミュニケーション(信頼関係の構築)、V)連携事業;運営、そしてW)成果の部分において課題が発生し、企業対応が行われていることが分かった。T)に関しては、「経営不振の中での連携事業の継続のためには、通常の短期的事業とは区別し、長期的事業の1つとして産学連携事業を捉えることで、組織内の事業価値に対する理解が得られる」他。U)に関しては、「連携事業を具体的に行う人員体制は、(専任の)担当者を配置し、大学側とのパイプをしっかり構築することが望ましい」他。V)に関しては、「関係者多数の場合に企業側がまず注意することについて、初期段階で企業側は、しっかりと企画主体意識を持ち、変更が出ないような事業計画を立案すること」他。W)に関しては、「成果のアピール方法における企業姿勢については、時代の潮流(例;環境問題への関心の高まり)を鑑み、市場反応(例;業界反応と一般消費者との違い等)を見ながら、臨機応変にマーケティングの見直しを行えるようにすること」他であった。
(3)連携事業の時期と課題の関係性について
企業が事業化に至るまでのどの時期(段階)で連携事業を行ったかによって、直面した課題が異なっていた。組織の課題は、【アイディア】、【研究】を経験した企業に、連携事業;体制・コミュニケーションの課題は、【研究段階】を経験した企業に、連携事業;運営に関しては、【研究】、【主製品開発】を経験した企業に、そして成果に関しては、【アイディア】、【主製品開発】を経験した企業において発生していた。
(4)事業化以外の成果の存在について
今回の事例企業では事業化の達成だけではなく、他の成果も誕生していた。それらは次の8つである。経営資源別に類型化した。【人的資源(熟練工)】人材交流の伝承により、企業研究技術者の育成が可能になっている(東亜電化)。【情報的資源・ノウハウ】メンバーを構築する能力が向上した(コンフォートラボ)、新しいフォントデザインの蓄積ができた(リムコーポレーション)。【情報的資源・技術開発力】各社員が技術・製品に対して理論的思考で取り組むようになった(東亜電化)、技術に関する基本情報・最新の市場状況を意識的に捉えるようになった(米山製作所)、研究開発への自信がついた(水谷ペイント)。【情報的資源・対外的な信用力】連携への取り組みが経営面で効果的に働いていた(リムコーポレーション)。【情報的資源・ブランド力】「先発優位性を得ることができた(リムコーポレーション)であった。
(5)産学連携事業における官(公設試・行政)の役割について
今回の事例では、官(公設試・行政)が「設備・施設」、「資金」、「相談」、「情報提供」等の面で幅広く活躍し、実際の連携事業を促進させていた。よって、今後もその役割に期待が高まる。

このような成果が、本調査研究から得ることができた。

関連情報

「中小・ベンチャー企業と産学連携に関する調査研究」(平成20年3月)

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