中小機構のナレッジリサーチ事業

自動車産業の多層的サプライヤー・システムと中小サプライヤーの役割

−開発補完機能と海外生産対応について−

問題意識

本論では,自動車産業の多層的サプライヤー・システムにおける中小サプライヤーの役割に着目し,特に一次サプライヤーの部品開発に対する開発補完機能と,自動車産業の海外生産拡大という流れへの対応について考察する.競争の激化,国内需要の飽和,海外生産比率の向上など,日本の自動車産業は激しく変貌する経営環境に置かれている.このような環境変化の下に,これまで国内生産を前提に築かれてきた自動車サプライヤー・システムがどのように変容し対応していくのか.本論は部品開発リードタイムの短縮及び自動車生産の海外展開における中小サプライヤーの役割とその動向について考える.

本論の中心問題は次の2つである.

(1)問い1 − 部品開発プロセスにおける中小サプライヤーの開発補完機能
多層的サプライヤー・システムという分業構造と日本自動車産業の競争力との関係

自動車産業の競争が日々激化している.自動車業界においても,常時に新しいモデルを開発し顧客に提供し続けなければならない環境になっている.そこで,中小サプライヤー(主に二次サプライヤー)が部品開発の効率性を高め,開発リードタイムを短縮する上で如何なる働きを持つか.中小サプライヤーが一次サプライヤーの部品開発プロセスにどのように関与し支えているのか.また,二次サプライヤーが開発補完機能を果たすことにより,部品開発において一次サプライヤーを補完するという分業体制は,高い部品開発効率性と部品設計品質とどのように関係しているか.これが本論の一番目の問いである.

(2)問い2 − 海外生産拡大と海外におけるサプライヤー・システムの構築
多層的サプライヤー・システムの変容

近年,自動車産業のグローバル化と海外生産が急速に拡大している.これまでは国内生産を前提として形成されてきた多層的なサプライヤー・システムが,今,現地でどのように構築されていくのかということが大きな課題となる.「自動車産業の多層的サプライヤー・システムが海外の生産拠点ではどのように構築されているか」,特に一次サプライヤー及びその協力企業である中小部品サプライヤーが現地におけるサプライヤー・システムの構築に当たって果たされる役割とはなにか.これは本論の第二の問いである.

本論構成

本論は次のような流れで考察を進めて行く.

第2章 中小サプライヤーの開発補完機能
〜一次サプライヤーの部品開発プロセスにおける役割について〜
第3章 国際化する顧客の生産ネットワークに対応する中小サプライヤーの役割
〜中国華南地区における自動車部品サプライヤー・システムの構築〜
第4章 華南における自動車産業集積の形成

第2章  中小サプライヤーの開発補完機能

〜一次サプライヤーの部品開発プロセスにおける役割について〜

一次サプライヤーの部品開発プロセスにおける二次サプライヤーの「開発補完機能」に着目し,特に金属プレス部品の事例を中心に採り上げながら考察する.その考察を通じて,多層的サプライヤー・システムという産業構造と日本の自動車産業が効率的な製品開発を実現出来る事との関係について考える.

中小サプライヤーの開発補完機能が,近年より強く求められるようになってきている背景には4つの原因があると考えられる.それは「部品の製品設計要件の複雑化」,「一次サプライヤーの内部調整の負担の軽減」,「一次サプライヤーと二次サプライヤーとの得意分野の違い」,及び「リードタイム短縮と設計効率化への対応」である.発注元がまだ部品の最終設計を決める前に,中小サプライヤーは部品の加工方法や形状や材質について意見を提供し,発注元の部品設計を更に改善できるように,発注元の部品設計プロセスに関与することを通じて,部品開発がより効率的・効果的に行うことをサポートする.

第3章 国際化する顧客の生産ネットワークに対応する中小サプライヤーの役割

〜中国華南地区における自動車部品サプライヤー・システムの構築〜

「自動車産業の多層的サプライヤー・システムが海外の生産拠点ではどのように構築されているか」,特に一次部品メーカー及びその協力企業である中小部品サプライヤーが現地サプライヤー・システムの構築に当たって果たされる役割に着目したい.2007年7月から11月にかけて,日本国内及び中国拠点に対して調査を行った.聞き取りの対象は,現地に進出した日系企業のほか,ローカルの中国系企業,台湾系及び香港系企業も含まれる.

第4章 華南における自動車産業集積の形成

日本の自動車生産の上位を占めるホンダ,日産,トヨタが1990年代末から相次いで中国・華南地域に進出した.軽工業,電気・電子機器産業に続く産業集積の第三の波がこの地域に訪れたと言われている.まず自動車産業における産業集積についての先行研究を検討する.続いて,華南における自動車産業集積の全体像を示すため,日本の自動車部品サプライヤーの海外進出状況と,その中でも特に中国への進出状況について検討する.更に,ホンダ系,日産系,トヨタ系それぞれの自動車部品サプライヤーの集積について明らかにする.最後に今後の課題について述べる.

関連情報

「自動車産業の多層的サプライヤー・システムと中小サプライヤーの役割」(平成20年3月)

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