創業から事業承継まで、施策の活用メリットを具体的に紹介します。 創業から事業承継まで、施策の活用メリットを具体的に紹介します。
事業承継・事業再生
2019.3.25

事業承継円滑化のための税制措置

中小企業・小規模事業者は日本の雇用を支える重要な存在です。そんな中小企業・小規模事業者が円滑に事業承継を進められるよう、国はさまざまな税制措置を準備しています。ここでは、それらの税制措置の概要をご紹介します。

国が事業承継支援に力を入れる背景

中小企業経営者の高齢化は深刻で、今後10年間に平均引退年齢の70歳を超える経営者は約245万人になり、そのうち半数以上が事業承継の準備ができていないという統計データがあります(中小企業庁「平成31年度中小企業・小規模事業者関係 税制改正について(平成30年12月)」P.2)。(http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2018/181226zeiritu.pdf))。また、現状を放置すると中小企業の廃業が増え、2025年頃までの10年間の累計で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるという試算もあります(平成30年度中小企業・小規模事業者関係 税制改正について(平成29年12月)P.4)。したがって、中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継は、いまや国が最優先で取り組むべき課題となっています。
 いま、中小企業の事業承継を支援しないと手遅れになってしまう――国はそうした危機意識から、平成30年度税制改正で10年間限定の新しい事業承継税制を措置しました。新しい事業承継税制は、従来の事業承継税制の抜本的拡充版とうたわれています。事業承継が課題となっていて、適用要件を満たしそうな会社は、新しい事業承継税制を使って事業承継するかどうか、一考の余地があるでしょう。

事業承継税制

事業承継税制とは、現経営者が後継者に自社株を相続または贈与により承継する場合に、一定の要件を満たすときには、事業承継時の税負担を猶予または免除される制度です。

事業承継税制の一般措置(従来の事業承継税制)と特例措置(平成30年度税制改正により新設された事業承継税制)の主な相違点は次のとおりです。

新制度の適用を受けることで、平成39年12月31日まで の贈与等による株式承継について税負担が実質ゼロとなります。現行制度も残っているため、これから事業承継時期を迎える会社は、事業承継税制の適用を受けたい場合、現行制度と新制度のどちらかを選ぶことになります。
 新制度の適用を受けるためには、平成30年4月1日から5年以内に特例承継計画書を提出する必要があります。適用を受ける可能性が少しでもあるならば、とりあえず計画書を提出しておくのも1つの方法です。
 事業承継税制には、その他細かい要件が数多くあります。また、要件を満たさなくなった場合、猶予された税額の納税が必要となることもあります。さらに、新制度は10年の期間限定の制度ですので、どこかのタイミングで現行制度に戻ってしまうことも頭に入れておかなければなりません。事業承継税制の適用を検討するにあたっては、必ず税理士等の専門家に相談されることをおすすめします。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、贈与時に、贈与財産に対する贈与税をいったん納めておき、その贈与者の死亡時に贈与財産の贈与時の価額と、それ以外の相続財産の価額とを合計した金額をもとに計算した相続税額から、すでに納めた贈与税相当額を控除する制度です。贈与時に仮に納めておいた税金を相続時に精算するため、「精算課税」と呼ばれます。非課税枠が2,500万円あり(限度額まで複数回使用可能)、それを超える部分の金額については、一律20%の税率で計算されます。
 適用を受けるための要件は次のとおりです。

この制度は、それ以降の贈与についてはすべて相続時精算課税制度を適用しての贈与となります。適用を一度選択すると後戻りはできませんので、選択する際には慎重な検討が必要です。

相続により取得した非上場株式を自社に売却した場合の課税の特例

納税資金確保のため、非上場株式を相続人が会社に譲渡するケースがあります。このように、相続等により財産を取得して相続税を課税された個人が、相続開始日翌日から相続税申告書の提出期限の翌日以後3年以内に、相続税の課税の対象となった非上場株式を発行会社に譲渡する場合には、次の2つの特例が認められています。

(1)については、株式を発行した会社に株式を譲渡する場合には、通常みなし配当課税(最高税率約55%の累進課税)がされることになっていますが、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること等の要件を満たしていれば、みなし配当よりも税率が低くなる譲渡所得課税(約20%の分離課税)が適用してもらえるという特例です。
 (2)については、相続人が相続により取得した土地、建物、株式等を、相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合は、「取得費加算の特例」という制度が設けられています。相続税を取得のために払った経費として譲渡益から引いてもらえますので、一般の譲渡よりも税負担が少なくなります。
 (1)と(2)の両方の制度を活用すると、後継者以外の相続人が自社株式を取得したときでも会社に株式を買ってもらうことができれば、税負担を軽減することが可能となります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続等により取得した土地の時価から最大8割を引いて計算してもらえる相続税法の規定です。土地の用途により、減額割合や限度面積が次のとおり異なります。

事業用と居住用の両方の土地を持っていた場合は、両方について特例の適用を受けることができますが、不動産貸付用の土地がある場合には、一定の調整計算が必要です。

個人版事業承継税制

平成31年度税制改正で創設される、平成31年1月1日~平成40年12月31日までの時限措置です。個人事業者が事業承継を行う際の税負担が全額(100%)納税猶予されます。以下のような事業用資産の、相続・贈与が対象となります。

  • 土地・建物(土地は400平方メートル、建物は800平方メートルまで)
  • 機械・器具備品
  • 車両・運搬具
  • 生物(乳牛等、果樹等)
  • 無形償却資産(特許権等)

本制度も、予め(平成36年3月31日までに)特例承継計画を都道府県に提出しておく必要があります。また、小規模宅地等の特例とは選択制です。

中小機構出資の事業承継ファンドから出資を受けた中小企業に対する特例

平成31年度税制改正で改正されます。
 改正前は、事業承継ファンドに対する中小機構の出資は大企業分と見なされていました。そのため、中小機構の出資比率が高い事業承継ファンドから出資を受ける中小企業が、大企業とみなされる(みなし大企業)確率が高くなり、設備投資に係る中小企業税制が適用されないという問題がありました。
 改正後は、中小企業等経営強化法に基づく認定を受けた事業承継ファンドに対する中小機構の出資分は、大企業分とみなさないこととなります。その結果、そのような事業承継ファンドから出資を受ける中小企業が、設備投資に係る中小企業税制を活用できる確率が高まります。

まとめ

  1. 中小企業・小規模事業者の事業承継は、いまや国が最優先で取り組むべき課題であり、事業承継の際に使える税制措置が数多く準備されている
  2. 事業承継税制は、現経営者が後継者に自社株を贈与等により承継する際、一定の要件を満たせば承継時の・税負担が猶予免除される制度
  3. 新事業承継税制の適用を受けることで、実質ゼロの税負担で10年以内の贈与等による株式承継が可能
  4. 新事業承継税制の適用を受けるためには、平成30年4月1日から5年以内に特例承継計画書を提出する必要がある
  5. 相続時精算課税制度とは、贈与時に一律20%の税率(非課税枠が2,500万円あり)で贈与税を支払い、相続時に相続税で精算する課税制度。60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子や孫への贈与が対象
  6. 相続により取得した非上場株式を、3年以内にその非上場株式を発行した会社に売却した場合の課税の特例には、みなし配当と取得費加算の2つがあり、税負担が軽減される
  7. 小規模宅地等の特例は、相続等により取得した土地の時価から最大8割を引いて計算してもらえる相続税法の規定
  8. 個人版事業承継税制は、事業用資産の相続・譲渡に対する税負担が猶予される制度
  9. 中小機構出資の事業承継ファンドから出資を受けた中小企業に対する特例は、事業承継ファンドに対する中小機構の出資を大企業分とみなさないことで、設備投資に係る中小企業税制を活用できる確率が高まる
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