創業から事業承継まで、施策の活用メリットを具体的に紹介します。 創業から事業承継まで、施策の活用メリットを具体的に紹介します。
事業承継・事業再生
2019.3.11

経営承継円滑化法による総合的支援

現経営者が後継者に事業を承継したいときには、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」による支援策を活用することができます。

経営承継円滑化法による事業承継支援策

経営承継円滑化法は、平成20年10月1日(民法の特例に関する規定は平成21年3月1日)から施行されています。現経営者が後継者に経営を承継する際には、(1)相続税・贈与税の税負担の問題、(2)自社株承継時の遺留分の問題、(3)事業承継時の資金不足の問題があったため、この法律には(1)~(3)の問題に対応するため、主に次の3つの支援策が定められています。

  1. 事業承継税制
  2. 遺留分に関する民法特例
  3. 金融支援(事業承継のための融資・保証制度)

事業承継をするときには、いずれかの制度を活用できないか、一考の価値があります。

事業承継税制

現経営者が後継者に自社株を相続または贈与により承継する場合には、自社株の金銭的価値に対して相続税または贈与税が引き継ぐ側の後継者に課されます。現経営者や後継者の財産の中に、自社株以外に金融資産がないときに株式承継による税負担が重くのしかかると、廃業に追い込まれることになってしまうという最悪の事態も想定されます。そこで、一定の要件を満たす場合には、事業承継時の税負担を猶予または免除する事業承継税制が措置されています。

平成30年度税制改正では、10年間の期間限定で従来の事業承継税制から大幅に要件を緩和した新たな事業承継税制も措置されることになりました。新たな事業承継税制の適用を受けると、10年以内の相続・贈与による株式承継については、税負担が実質ゼロで自社株を承継できるようになります。既存の事業承継税制も残っているため、これから事業承継時期を迎える中小企業者については、事業承継税制の適用を受けたい場合には、既存の制度と新制度のいずれかを選ぶことになります。

10年の期間限定の事業承継税制の適用を受けるには、平成30年4月1日から5年以内に計画書を提出することが要件の1つとなっています。適用を受ける可能性が少しでもある中小企業者は、とりあえず計画書を提出しておくとよいでしょう。

このように、事業承継税制には、その他細かい要件がたくさんありますので、適用を検討する場合には必ず税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

遺留分に関する民法特例

新事業承継税制で自社株を税負担ゼロで移すことができたとしても、回避できない問題があります。それは、後継者以外の相続人の遺留分の問題です。

本来は、自分の財産をどのように処分しても自由ですが、遺族の生活の安定や最低限度の相続人間の平等を確保するため、民法は兄弟姉妹とその子を除く相続人に最低限の相続の権利を保障しており、これを「遺留分」として認めています。

現経営者に自社株以外の財産がほとんどない場合で相続人が複数いるときには、相続時に後継者以外の遺留分権利者が得られる遺産が遺留分に足りないことがあり、そのときは、後継者が遺留分権利者から遺留分を取り戻すための請求(遺留分減殺請求)を受ける可能性があります。遺留分減殺請求を受けると、後継者が株式の返還をせざるを得ない状況になり、後継者に株式を集中させるつもりが株式分散してしまう場合も考えられます。

そこで、経営承継円滑化法では、現経営者が後継者に自社株を贈与で譲り渡すときに想定される課題解決のために、「遺留分に関する民法特例」が規定されています。この民法特例を活用すると、現経営者から後継者に贈与等された自社株式について、

  1. 遺留分算定基礎財産から除外(除外合意)、
  2. 遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)

することができます(両方を組み合わせることも可能です)。ただし、後継者を含めた現経営者の推定相続人全員の合意が必要ですので、ご注意ください。

新事業承継税制の適用に合わせて、本制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

金融支援(事業承継のための融資・保証制度)

たとえば、事業承継では次のような資金ニーズが生じます。

  • 相続等で分散した自社株式や、事業用資産の買取資金
  • 自社株式にかかる相続税、贈与税の納税資金
  • 銀行の借入条件引き下げや取引先の値下げ要求対策のための資金

事業承継に伴って生じるこのような資金ニーズに応えるために、経営承継円滑化法に基づき、次の低利子貸付制度や信用保証枠拡大措置が準備されています。

(1)低利子融資

事業承継の際に代表者個人が必要とする資金の融資を、日本政策金融公庫あるいは沖縄振興開発金融公庫において低利子で受けることができます。条件等は次のとおりです。

<融資を受けられる場合>

  • a)会社または個人事業主が、後継者不在等により事業継続が困難となっている会社から、事業や株式の譲渡等により事業を承継する場合

    b)会社が株主から自社株式や事業用資産を買い取る場合

    c)後継者である個人事業主が、事業用資産を買い取る場合

    d)経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社の代表者個人が、自社株式や事業用資産の買い取り、相続税や贈与税の納税等を行う場合

<融資の条件〈株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業)の場合〉>

  • a)融資限度額:7億2千万円

    b)返済期間:設備資金20年以内(うち据置期間2年以内)
         運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)

<融資の条件〈株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)の場合〉>

  • a)融資限度額:7千200万円(うち運転資金:4,800万円)

    b)返済期間:設備資金20年以内(うち据置期間2年以内)
         運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)

【参考HP】株式会社日本政策金融公庫

 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jigyoukeisyou_t.html
 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jigyoukeisyou.html

(2)信用保証

経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社および個人事業主が、事業承継に関する資金を金融機関から借り入れる場合には、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意されています。

(3)経営承継円滑化法に基づく認定手続

事業承継に伴い、(1)低利子融資を受ける場合や(2)の信用保証協会の別枠の保証を受けるためには、都道府県知事の認定を受ける必要があります。申請書の提出先は、各都道府県の担当課です。

まとめ

  1. 経営承継円滑化法による事業承継支援策には、(1)事業承継税制、(2)遺留分に関する民法特例、(3)金融支援(事業承継のための融資・保証制度)の3つがある
  2. 事業承継税制は、平成30年度税制改正で新しい事業承継税制も措置されたため、既存の制度との選択適用となる
  3. 新しい事業承継税制は10年間の期間限定で、5年以内に計画書の提出が必要
  4. 遺留分に関する民法特例には固定合意と除外合意があり、事業承継税制の適用を受ける際には検討する必要がある
  5. 金融支援(事業承継のための融資・保証制度)には、低利子融資と信用保証枠拡大措置がある
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