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経営革新
■ 文具のキオスクからセレクトショップへ 8坪の文具店の挑戦
仙台市中小企業支援センター(財団法人 仙台市産業振興事業団)

株式会社一歩堂
業   種 文具事務用品販売
代表取締役
芳賀 充弘

 支援センターの事業に参加し、One to Oneマーケティングのノウハウを手とり足とり教えていただき、これからの進む道が明確になりました。
 小さな店でもコンサルティングを受けられ、リニューアルまでできたのは、支援センターの協力があってこそだと思っております。
本社所在地 宮城県仙台市
資 本 金 10,000千円
創   業 昭和24年
売 上 高 120,000千円
(卸売部門含む)
従業員数 7名


■圧巻! 店の狭さを感じさせないこだわり文具のオンパレード

 一歩堂は万年筆専門店として、昭和24年に 仙台市の中心商店街である一番町4丁目に創業した。長年、法令様式から手提げ袋、クリップなどを取り揃える小さな事務用品文具店として営業してきたが、平成15年9月に全面改装。売り場面積はそのままで、商品やサービスを一新した。「ギフト&コミュニケーション」をコンセプトに季節のカードや遊び心あふれる文具など、ワンランク上の素敵な日常を予感させる商品を取り揃えたセレクトショップに生まれ変わった。ガラス張りの明るい店内は若い女性たちでにぎわっている。
 文具業界では近年、大型化・24時間化・翌日配送サービスなど競争激化の一途をたどり、中小文具店の多くは苦しい経営を強いられている。他方、一歩堂は平成13年から増収をつづけており、高級万年筆のオークションや手づくりの紙ボックスを積み上げた巨大なクリスマスツリー(仙台市の「せんだいディスプレイコンテスト2003審査員特別賞」受賞)のディスプレイなど、来るたびに新しい発見がある楽しさを演出している。

■前代未聞の公開型支援事業マーケティングの効果を徐々に理解

 このような一歩堂もつい数年前までは年率数%のペースで売上が減少しつづけ、芳賀充弘社長は店の方向性をどうすべきか考えあぐねていた。かつて売上の5割を占めていた伝票や領収書など近隣飲食街の業務用需要が、バブル崩壊、飲食売上の減少、大手安売り文具店の台頭により減少し、ついに売上の3割までに落ち込み、回復が見込めなかったからである。
 そんななか、中心商店街に1つの動きがあった。東京資本の激しい出店攻勢に地元商店が太刀打ちできないことに危機感を強めた有志6商店が、平成11年度に「One to One マーケティング研究会」を結成し、一歩堂もメンバーとして参加した。研究会ではお客様1人ひとりとの関係性を重視したOne to Oneマーケティングを商店の生き残り策と考えて勉強会を重ね、平成12年度には仙台市の協力の下、コンサルタントのサポートによりお店に来る人の属性調査を行って、顧客意識の把握と改善課題を抽出した。
 当初は「業種的に低単価の当店では効果が得られないのでは」と疑心暗鬼だった芳賀社長であったが、来店者 アンケート調査結果をみて、他店との差別化を明確にする必要があると認識するに至った。
平成13年度、支援センターはOne to One マーケティング研究会6店をモデルに、コンサルタントのサポートの下、実際に各店舗で顧客マーケティングを実行・検証して、結果を公表する「中小企業マーケティング実態調査事業」を実施した。
 一歩堂では、業務用需要に代わって売上を伸ばしている個人需要に目を向け、季節ごとに編集したテーマ商品が繰り広げられるオン・シーズン型の文具セレクトショップに挑戦した。店内レイアウトの変更、クリスマスカードのドアノック案内、年賀状印刷DMの設計の工夫など、支出を最小限に抑えながらも手間暇かけた販売促進によって、来店客数・客単価ともに前年比伸長し、12月の売上は前年比112%を達成した。
 結果報告会では事業の経過と結果について6店主の感想を取り混ぜながら公表し、参加した約140名の中小企業の方々にマーケティングの重要性を訴えた。

■自信を与えてくれたのは一歩一歩積み上げたノウハウ

 平成14年度、支援センターではコンサルティング支援をさらにパワーアップさせた「杜の都有望企業サポート事業」を実施した。One to One マーケティング研究会から一歩堂を含む2店と新規参加店1店、合計3店をモデルにしたこの事業では、13年度よりも参加店の主体性を重視した支援体制とし、店主自らが企画を立案、コンサルタントは実行をナビゲートすることによって、ノウハウを体得させることを目標とした。
 一歩堂ではDM等で既存客の囲い込みに引きつづき取り組むと同時に、季節編集型店として定着することを狙って、新商品・サービスの開発、店頭POPやレイアウトに代表される店舗提案力の強化に力点を置き、作戦に取り組んだ。その結果、クリスマスカードとカレンダーが完売になるなど、前年よりさらに売上が増加した。今後のターゲット客や訴求商品を把握することもでき、店のめざすべき道が明確になった。
 支援センターでは、事業の経過をホームページで公開。3店が集まってコンサルティングを受ける場の合同会議も公開し、また報告会を開催して多くの中小企業者の方々へマーケティング実践を習得する機会の拡大に努めた。報告会で、店を支える芳賀社長の妻えり子氏は、「当店のように予算も人手もない小さな店でもアイデア次第で顧客名簿を取り、DM等で商品を訴求することで、売上アップにつながる。個人店舗でコンサルタントに依頼するのは難しくても、このような事業に参加すれば手助けしてもらえて自店の道を明確にできる。不景気だからとあきらめないでぜひ一歩踏み出してほしい」と述べ、参加者を勇気づけた。
 通例、支援事業終了後にその成果を活用する例が少ないなか、一歩堂は自らの経験を再生の礎とし、その後も芳賀社長夫妻・社員一丸となって店のモデルの再構築を敢行している。女性客を中心にした新規顧客を取り込む一方、馴染み客の期待を裏切らない品揃えとサービスに気を配る。「この努力を本物にしたい。私たちはこの街で商売をつづける勇気を得ました」と力強く述べる一歩堂は、いまも前進しつづけている。


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