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経営革新
■ 高張力鋼の水中溶断技術の開発
千葉市中小企業支援センター(財団法人 千葉市産業振興財団)

株式会社坂戸工作所
業   種解体機械製造業  当社は油圧解体機の製造を業容の柱として、大手を含む競合他社を凌駕する製品を市場に提供してきました。従って、技術開発は最重要課題であり、それを達成する手段としての産・学・官の連携による共同研究は重要視しております。現在までに国のSBIRをはじめ県産業振興センターの支援で共同研究も行っております。
 今回は市産業振興財団の専門家派遣事業で、耐摩耗鋼及び高張力鋼の水素ガスによる溶断技術を完成させ、実戦力として役立たせることができました。
 また、これをきっかけに市産業振興財団とは、当社が抱える溶接を中心とする課題等を気軽に相談するなど、利用する機会が高まり、大変ありがたく思っております。
本社所在地千葉市花見川区
資 本 金5,720万円
創   業1945年4月
売 上 高9億円 代表取締役
従業員数30人 坂戸 誠一


■技術力に裏づけられたリーダーカンパニー

 坂戸工作所は、油圧解体機の分野において大手企業を含めた競合会社のなかで、技術開発を経営基盤の最重点項目に置き、リーダーカンパニーとしての地位を確保している。 その発端は赤軍派による浅間山荘事件にある。家屋を破壊するため剛球をぶつけていたシーンが、現在でも多くの人々に鮮明に記憶されているが、現社長はこれを契機に油圧解体機の開発に取り組んできた。その製品群は、歴史的な大事件であるベルリンの壁の解体、阪神・淡路大地震、ニューヨークの世界貿易センタービルのテロ事件など多くの復旧工事に活躍している。
 油圧解体機の主たる市場と目されているものは、大都市圏の老朽化が進んだビルの解体である。バブル崩壊後の市場は低迷しているが、将来的にはビル解体の増加で、解体機需要の伸びが期待できる。企業を存続させ、さらなる発展を図るためには、市場ニーズを先取りした製品開発が必要である。最近では、鉄筋コンクリート構造物(RC)の解体の際、コンクリートと鉄筋の分別・回収を容易にするため、小型、軽量で強力な電磁石を開発し解体機に搭載している。また、SRC構造物の解体をガス切断を用いずに機械的に行う装置の開発に着手し、製品化に成功した。同社における製品開発の基本方針は非常に明確であり、競合大手メーカーに対し差別化できる製品を先んじて市場に提供することである。
 具体的には、この方針に沿って次のような目標を立てている。
(1) 10年使用しても主要部が壊れない
(2) 競合製品により10%以上軽い
(3) そして30%以上高能率である
頑丈で軽量、高性能な機械をつくるためには、できるだけ小さなエネルギーで大きく破壊する方法を見出すことは勿論であるが、構造部材に高強度鋼を採用することも必要であった。

■基板技術の向上をめざし課題解決に取り組む

 油圧解体機を構成するのは刃部と構造部で、いずれも合金元素を多く含み、焼入れ・低温焼戻し処理を行った鋼板である。同社ではこの種の鋼材をスウェーデンから輸入することを決めていた。その理由は、国内メーカーに比べて曲げ加工性が良好で、価格的にも魅力があったからである。また、自社消費だけではなく、輸入材を注文寸法に小切りして外販するため、代理店契約を結び、工場の増設計画も進めていた。
 通常のアセチレンガス及びプロパンガスを用いる溶断方法では、熱影響による軟化域が大きく、これを削除するには多大な工数を要する。また、軟化域が残存した場合は構造物の局部的形状との兼ね合いで、亀裂発生の起点にもなりうる。
 以上のことから、軟化域を最小に抑え、かつ、安価な溶断技術を開発することが急務の課題となっていた。  この課題を解決するにあたり、千葉市産業振興財団に相談があった。その理由として、同社では、@同財団が活発に企業訪問を行って交流が盛んであったこと、Aマネージャーの人脈が豊富で課題解決に適した専門家の紹介を期待できること、Bこの分野を専門とするマネージャーがおり、適切な指導が期待できたこと、など3点を挙げている。

■現状にあった溶断方法を求め一体となって技術開発にあたる

 同社からの相談に対し、当財団ではマネージャーを中心に、この分野に精通した専門家を選定するとともに、この専門家と連携し、同社と一体となって技術開発に取り組んだ。
主な経過は次のとおりである。 
鋼板の切断方法のなかには、熱影響による軟化を発生しない方法としてウォータージェットがあり、またレーザー切断も軟化巾を少なくすることは可能であるが、経済性、対象板厚から両方法とも採用を断念した。 そこで注目したのが、国内でも関心を集めていた水の電気分解によって発生した水素を燃焼ガスとして用いる溶断方法である。特徴としては、水素ガスによる火炎は集中性に優れ、プロパンやアセチレンに比べて輻射熱が少なくガスの燃焼速度も速いため、熱影響部が狭く溶断速度も向上する。さらに、切断面の粗度も良好である。以上の知見をもとに、水素ガスを発生させるイタリー製のジェネレーターの導入を決定した。
だが、大気中の溶断では、この方法でも目標とする軟化巾には至らなかった。次の段階として、入力された熱を急速に奪うことを試み、水中溶断を実施したところ、設定した目標値を達成できる見極めがついた。また、鋼板表面側は水中とはいえ、ガス圧の影響で水が追いやられ、水冷効果が損なわれるため、裏面側はほとんど軟化域が生じないのに比べ、若干の軟化域が残った。構造体製作の際、裏面を選択的に摩耗が激しい面に使用することが有効な手段である。
溶断条件としては、鋼板の水面からの深さ、火口位置、溶断速度等が重要であるので、これらの適正値を設定した。現在は自動切断装置と組み合わせて、生産に寄与している。

■明確なコンセプトと適任人材の派遣

 成功要因の第1は坂戸工作所の研究開発に対するコンセプトが明確であり、本課題の目標も具現化されていたことにある。第2は派遣された専門家及びマネージャーが、数年前一緒に水の電気分解で発生した水素ガスによる溶断研究しており、ジェネレーターも購入し実験に供していたので、充分な知見を有していたことも大きな要因と考えられる。

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