環境/四国 「分離膜を利用した小型排水処理装置の開発・実用化」

分離膜を利用した低コストな小型排水処理装置の開発

 2009年6月に予定されている排出基準の規制強化で染色、メッキ、食品などの中小業者が困惑する事態が予想される。「分離膜を利用した小型排水処理装置」は、従来の分離膜利用の排水処理装置に比べ専門要員が不要で、対象の水に適した膜を提供できる。また、活性汚泥・凝集沈殿方式や、グリーストラップなどの安価な処理装置と比べると、データ表示で維持管理が簡便なうえ、設置面積が小さく高性能だ。

 コア企業の阿波製紙が分離膜の開発と製造を手がけ、分離膜を供給する。緒方工業は分離膜を用いた膜モジュール装置を製造し、技術面で熊本県工業技術センターがサポートする。

 多摩精器工業が膜モジュール装置を用いた排水処理製造装置を製造する形になる。多摩精器はさまざまな研究機関に製造装置や分析機器を納入しており、ノウハウを生かせる。製造装置完成後、CNTが食品分野の排水処理装置の設置を担当する。同分野について徳島県工業技術センターが実証・実験面でアドバイスを行う。産業技術総合研究所は技術協力全般のまとめ役を担う。

阿波製紙(株)


会社名
役割分担
■コア企業
阿波製紙(株)
分離膜
緒方工業(株)膜モジュール
多摩精器工業(株)排水処理装置
(株)CNT食品分野担当
産業技術総合研究所協力
熊本県工業技術センター協力
徳島県工業技術センター協力



阿波製紙(株)<br>三木弘社長(左)ら

阿波製紙(株)
三木弘社長(左)ら

【分離膜の研究から小型排水処理装置の開発へ】

 水処理用フィルターの支持体紙に使われる乾式不織布は目が粗く、性能が安定しないのが難点とされている。阿波製紙(徳島市)は湿式不織布の採用を提案し、現在、湿式の有力メーカーとなっている。

 2000年に同社は、分離膜を研究して支持体紙の開発に生かそうと、産業技術総合研究所(産総研)環境化学技術部門の指導を仰いだ。一方、緒方工業(熊本市)は自社のメッキ排水処理について悩み、熊本県工業技術センターを通じて97年から産総研で分離膜を使った独自の研究を行っていた。また、多摩精器工業(東京都世田谷区)は産総研をはじめ、研究機関に排水処理装置や分析装置の納入実績をもっていた。

 そこで産総研が、中小企業でも簡便に使える低コスト装置の開発に向け、3社の共同研究を仲立ちした。従来の排水処理装置は(1)プラントメーカーの大規模で高価格な装置(2)維持管理が困難な活性汚泥・凝集沈殿方式(3)グリーストラップ用など安価だが排水の処理能力が低い−のいずれかだったからだ。


【「新連携制度」の活用へ】

 2009年6月をめどに「水質汚濁防止法」に基づく有害物質の排出基準の規制強化が予定されている。それをにらみ、2研究機関・3社は四国経済産業局の2004年度「新連携対策委託事業」に応募して、分離膜を利用した小型排水処理装置の需要調査を1年間行った。その結果、染色分野と食品分野で小規模な需要があることが分かった。

 香川県には「讃岐うどん」製造者が多い。CNT(高松市)はバイオリアクターを使った排水処理装置などを手がけており、県内のうどん業者に販売実績があることから、新たに参加した。食品関連の実証研究でのアドバイスをもらうため、徳島県立工業技術センターにも加わってもらい、「3研究機関・4社」のグループで2005年度の新連携支援制度に応募、四国経済産業局から認定された。

 新連携計画の認定により、2年間で3000万円の補助金が下りる。商工組合中央金庫からは初年度4330万円の低利融資を受けた。各社は事前に、役割分担と成果配分などの運営方針規定を作成した。連携により互いの技術を生かして装置開発に取り組める半面、地域が離れているので意思の疎通を図るよう努めている。

 「分離膜を利用した小型排水処理装置」の事業化に向けては、需要がどれだけあるかが「低コスト化」への大きなファクターとなる。また使用する業種が多岐にわたるため、装置納入後のメンテナンスなど維持管理が今後の大きな課題として浮上している。

 将来的に別会社の設立や代理店方式など、どのような形態が良いのか、各社で話し合っていく考えだ。また装置単体ではなく、その前後に別の装置を付けるなど付加価値を付けた「システム化」を目標にしている。