建設/中部・北陸 「古いスレート工場等を内貼り断熱工法で恒温室並の工場に変える施工事業」

古い工場が恒温工場に生まれ変わる

 短い期間の安価な工事で、古いスレートぶき工場の室温をプラスマイナス2度C以内の恒温工場に変身させるのが「サーモクリップ工法」だ。

 検査機などの設計、製造を手がける近藤機械製作所(愛知県蟹江町)が、自社工場を恒温化するために開発した工法のこと。断熱工事の見積もりを依頼していた縁で福岡建設(愛知県愛西市)と協力し、同工法を確立した。そこに断熱材を販売する優和商会(名古屋市西区)も加わり、連携体を構成した。

 同工法はスレート天井のC型鉄骨に、断熱材のグラスウールを金具によって固定。屋根一面にグラスウールを張り巡らせ、工場内の温度が外に逃げるのを防ぐ。高い断熱効果がありながら工事費用は1平方メートルあたり8000円程度で、330平方メートル程度の工場なら2日間で施工できる。

 工法施工後の同社工場では、室温維持のためにそれまで年間320万円だった冷暖房費が200万円程度になるなど、約40%削減することに成功した。さらに安定した室温にすることで部品の精度向上も実現し、新たに航空機部品の製造にも参入できた。

 また最近では、工場で多く使われている金属製の折版屋根向けに、磁石で断熱材を固定する「マグネットピン工法」も開発。短い期間の安価な工事で恒温工場にできる点や冷暖房費を削減できる点を中小企業にアピールし、同工法を広く普及させたい考えだ。

(株)近藤機械製作所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)近藤機械製作所
本断熱工法の開発、サーモクリップにかかる特許保有
福岡建設(株)本断熱工法の施工ノウハウ
(株)優和商会本断熱工法に必要な断熱材の製造ノウハウ、断熱材原材料メーカーとのネットワーク



(株)近藤機械製作所 近藤信夫社長<br> 「古い工場であるほど、施工で生まれ変わります。この工法は環境問題が重視される今の時代にも適っています」

(株)近藤機械製作所 近藤信夫社長
「古い工場であるほど、施工で生まれ変わります。この工法は環境問題が重視される今の時代にも適っています」

【3社が強みを持合い工法を開発】

 2006年、近藤機械製作所は新たに精密機器部品の製造を始めようとしていた。だが、築50年の同社工場は、温度変化が激しくマイクロメートル単位の微細な加工が必要な部品の仕上がりが安定しないという難題を抱えていた。このため工場の断熱工事をしようと建設業を手がける福岡建設に見積もりを依頼した。

 しかし、工事のためには工場の稼働を1カ月止めなければならず、しかも工事費用も高いことが判明した。そこで、短期間で安価な断熱工事が施工できないかと考えた近藤機械製作所の近藤信夫社長。思案の末、断熱効果の高いグラスウールを天井一面に内貼りする方法を思いつく。

 一見すると、工場を恒温化する工法の開発は同社とは畑違いにも見える。工法開発を手がけた理由を、近藤社長は「顧客の要望に応えるには無いものを自分で作り、道を切り開く必要があるため」と明快に語る。厳しい環境下を生きる中小企業のたくましさが工法開発につながったわけだ。

 同工法の要であるグラスウールの固定金具には、同社の主力事業である金具の設計、製造で培った技術が生きている。そこに、福岡建設が加わり短時間での施工を可能にした。また優和商会の提案で最適な断熱材の選定を行い、マグネットピン工法の開発につなげた。こうして業界の違う3社が強みを持ち合い新たな工法を誕生させた。

【恒温化と光熱費削減をアピール】

 しかし苦労もあった。近藤機械製作所と福岡建設は、業界こそ違うが共にこれまで下請け業務がほとんど。直接消費者の顔を見ることが少なかったため、一から販路を構築する必要があった。販路構築を狙った主な活動は展示会への出展だったという。

 この活動が徐々に実を結び、これまでにサーモクリップ工法2件、マグネットピン工法4件を請け負うことができた。施工した工場の従業員からは「木陰で作業をしているようで快適」と評判も上々だ。

 同工法の施工工場では、外気温が約10度C変化しても、室温は空調の設定温度に対してプラスマイナス2度Cの範囲でしか変化しなかったという。また、断熱材が音を吸収し、騒音を防ぐ効果もある。

 「この工法で断熱すれば光熱費を削減でき、二酸化炭素(C02)排出量も抑えられる。環境問題が重視される今の時代にも適っている」と語る近藤社長。現在も中小企業から同工法に対する問い合わせは恒常的にあり、関心の高さがうかがえる。「古い工場を改修し省エネ化したいという潜在需要は多い。景気が回復すればこの工法はさらに注目されるだろう」(近藤社長)と期待は高まるばかり。今後も1件ずつ施工実績を重ねながら、地道に工法の普及活動を続けていく考えだ。