製造/関東 「フェルトを利用した『吸音ブラインド』の開発と事業化」

高密度フェルトをブラインドに活用

 東京ブラインド工業(東京都港区)は火災発生時に有毒ガスや黒煙を出さない無煙ブラインドなど、ユニークな製品を生産している。2009年、進弘産業(愛知県一宮市)などと共同で開発した、スラット(羽根)部分に高密度フェルト成型品を使った吸音ブラインド「フェルトーン」を発売した。1キロヘルツで入射音の80%を吸収し、外部から入ってくる音を6デシベル低減する。特に中高音域に対して高い効果を示し、反響音に埋もれていた個々の音が聞こえやすくなり、音によるストレス緩和にも役立つ。

 防音面でウイークポイントとなりがちな窓部分に特化して開発。採光、通風性などを維持した。高密度フェルトに好みのカーテン生地を張り付けられるため、見た目に違和感がなく、インテリア性に優れている上、張り替えることで長期間の使用にも耐えられるのが特徴だ。

 取り付け方法は通常のバーチカルブラインド(スラットを垂直に並べたブラインド)と変わらず防音室を作る場合などと比べ、費用や工期の短縮につながる。また、ブラインドの開く角度を変えることで、音の反射率を調整することもできるため、個人宅のピアノ部屋やホームシアターなどでの採用が進み、09年2月には新連携の認定を受けた。

東京ブラインド工業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
東京ブラインド工業(株)
商品企画、製品開発・製造
進弘産業(株)縫製技術、加工技術、溶着技術



東京ブラインド工業(株) 櫻井武志社長<br>今回の経験を生かし、ワックスや木材などでの分野でも連携事業を手掛けたい」

東京ブラインド工業(株) 櫻井武志社長
今回の経験を生かし、ワックスや木材などでの分野でも連携事業を手掛けたい」

【カーテン生地を張りインテリア性向上】

 掃除がしやすいフローリングを使った家は増えているが、フローリングには音が反射しやすいというデメリットがある。従来、家庭でホームシアターやピアノ練習室を設けた場合、窓部分での吸音対策は厚手のカーテンで対応するのが一般的だが種類が少ないなどの問題があった。東京ブラインド工業はフェルトメーカーと共同で、吸音機能がある高密度フェルト成型品を使ったブラインドを開発。ホームシアターや楽器保有者だけでなく、金融機関や医療機関、会議室向けにも市場化を図っている。

 開発のきっかけは約8年前に「フェルトをブラインドの吸音材に使えないか」という話がフェルトメーカーから持ち込まれたことだった。ただフェルトのままでは柔らかすぎてブラインドの素材として使いづらく、燃えやすいという問題もあった。「フェルトの厚みを5ミリメートル程度に圧縮し、曲がったり反ったりしないように材料などの検討を共同で進め、防燃性も高めた。結局、形になるまで4年かかった」と櫻井社長は振り返る。

 吸音ブラインドを試験的に導入した家庭から寄せられた「フェルトのままでは見た目が暑苦しい」との指摘をもとにインテリア性の向上について検討し、以前から付き合いがあった高密度フェルトの表面にカーテン材を張る技術を持つ進弘産業(愛知県一宮市)と連携。製品のデザインを多様化するとともに、随時張り直すことで耐久期間を長くすることも可能になった。

【ユーザーの声を開発に生かす】

 製品開発にあたっては音楽大学や個人宅のピアノ室で吸音ブラインドを使ってもらった。残響時間や騒音値などのデータを取り、アドバイスを受けて改善に生かした。「フェルトーン」として09年に発売。音楽演奏室やホームシアターだけでなく、反響音の多いホールや会議室、保育園、幼稚園などでの需要も見込む。

 「室内環境の防音を考える際、従来は音を反射して透過を防ぐ“遮音”が重視され、音を吸収して反射を抑える“吸音”による対策をとった製品はあまりなかった」と櫻井社長は語る。吸音ブラインド開発の背景には「日本のブラインド業界の市場規模は縮小傾向のため、価格競争に陥りがち。オンリーワン製品を作っていかないと生き残れない」(櫻井武志社長)との危機感がある。

 新連携認定について「制度については以前から知っていた。特許料の減免措置や補助金だけでなく、行政からのお墨付を得られた」と活用のメリットを語る。現在、高密度フェルトをブラインド以外の製品にも生かしたいと、開発を進めている。4月からは大手住宅メーカーの展示場にも設置し、櫻井社長は認知度向上に期待を寄せる。今回の連携事業の経験を生かし「ワックスや木材などでの分野でも連携事業を手掛けたい」と意気込みを見せる。