建設/関東 「鉄筋コンクリート基礎杭の簡易組立工法の事業化」

無溶接で鉄筋篭を組み立て

 建築物を支えるため地盤深くに打ち込む基礎くい。掘削した穴に円筒状の鉄筋篭を入れ、コンクリートを流し込んでくいを形成する。大きいものでは篭の直径が3メートル、長さ40メートル、重さ60トンに及ぶため、鉄筋篭は必然的に施工現場で組み立てることになる。

 恵信工業(東京都足立区)はその鉄筋篭を、作業現場で溶接することなく組み立てる「KS工法」を開発、実用化にめどをつけた。同社は主鉄筋と補強枠を専用の金物を使いネジで締結する無溶接金物を開発。また、リング状に曲げた鉄筋を施工現場で溶接締結していたフープ筋を、現場に持ち込む前に工場で完全なリング状に加工する環状型フープ筋も合わせて開発した。これまで鉄筋篭はリング状の補強枠に、主鉄筋を垂直に溶接し円柱を形成。軸方向の主鉄筋を束ねるように、等間隔でフープ筋を巻き付けながら溶接していき、円筒状の鉄筋篭に仕上げていた。

 現場内での溶接が不要となり、天候に左右されず工期管理を安定化できる。また、溶接作業時に外気による熱影響を受けないため、鉄筋篭の品質が向上、手間のかかった溶接部の検査も不要になる。また、「熟練工で1日35本程度しか加工できなかった」(林義信恵信工業社長)フープ筋の曲げ加工と締結作業のフレア溶接がなくなり、溶接熟練工や溶接管理技術者の確保も必要なくなる。

 主鉄筋を補強枠の内側から締結していく専用の組み立て治具を合わせて使用することで、作業時間を大幅に短縮。補強枠部分の主鉄筋に短い鉄筋を鉄線で結束する主力工法の添え筋工法より、作業時間を約半減できる。

(株)恵信工業


会社名
役割分担
■コア企業
(株)恵信工業
金物開発や普及指導、材料の選定や強度試験、特許管理など
(有)草加ネジ金物開発・製造
東京機材工業(株)販路拡大、金物・フープ筋の販売



(株)恵信工業 林義信社長<br>「ネジの角度や向きまで細かな調査が可能となり、新連携のおかげで多くのことが分かった」

(株)恵信工業 林義信社長
「ネジの角度や向きまで細かな調査が可能となり、新連携のおかげで多くのことが分かった」

【資金援助で豊富な実験データを蓄積】

 「阪神・淡路大震災以降、さらに厳しく溶接部の品質が求められるようになった」(林義信社長)。恵信工業は長年基礎くいなどの施工に携わった経験から、鉄筋篭の溶接部の品質を管理する難しさを実感。熟練溶接工の不足などもあり、施工現場での溶接を完全に排除する工法を模索していた。

 アイデアが具体化してきたのは2、3年前。主鉄筋と補強枠をネジで締め付ける無溶接金物の開発は、特殊形状のネジや金属の曲げ加工を行う草加ネジ(埼玉県草加市)と共同で取り組んだ。森社長のアイデアを草加ネジが具現化する方法で開発を進め、何度も試作、試験、改良を重ねた。特に苦労したのが、ナットの締め付けトルク管理。「金物の素材は強固で、ネジは強く締めれば良いと思っていた」(同社長)が、実際は締め付けが強すぎて金物が破断したり、ナットが飛んでしまうケースがあり、試行錯誤の連続だった。

 2009年7月、関東経済産業局と関東地方整備局のお墨付きを得て、新連携事業の認証を受けた。同連携による資金面でのバックアップにより、あらゆる場面を想定した実証試験が可能になった。「ネジの角度や向きまで細かな調査が可能となり、新連携のおかげで多くのことが分かった」(同社長)。

 環状型フープ筋の開発では、これまで鉄筋の直径が10ミリ、13ミリ、16ミリメートルの3種類のみが製品化されていたが、恵信工業は同直径19ミリ−32ミリメートルまで5種類の開発に成功した。施工現場でフープ筋の端と端を曲げ、リング状に溶接していたフレア溶接が不要となり、溶接用にのりしろとして設けていた余分な鉄筋を節約、材料費を抑えることも可能にした。環状型フープ筋は鉄筋の端と端をガス圧接で締結する。直線の鉄筋ではなく曲がった円弧状の鉄筋を締結するため、「特殊な治具を開発し、圧接時間を一定にするなど、量産化に苦労した」(同社長)。ここでも新連携の資金が大きく貢献。東京都産業技術研究センターでの引っ張り試験や自動加圧装置の開発、材料費などで開発費は膨らみ、「資金援助がなければ、この不況下に絶対に開発できなかった」(同社長)と振り返る。

【KS工法の普及のため研究会を発足】

 恵信工業はKS工法の普及を一番に掲げる。同社は環状型フープ筋と無溶接金物の販売、専用治具を使ったKS工法の技術指導に徹し、「基礎くいの施工を手掛けるつもりはない」(同社長)。

 その言葉通り、東京機材工業(東京都中央区)と連携し、施工業者への販路開拓を進める。同社は建設現場で使用する金属加工品の販売や、基礎工事で使う各種機械・機材のリースなどを全国規模で展開している。

 一方で、無溶接工法研究会や協会を発足し、KS工法の普及を目指す。主に設計会社や建設コンサルタントなど川上で建設事業に携わる事業者を対象とし、技術的な裏付けや工期短縮によるコストメリットなどを深く広報するほか、相談窓口を一本化し迅速に対応できる体制を整える。