製造/関東 「低発塵紙管の開発と事業化」

製紙業向け中心から新分野開拓へ

 紙管とはモノを巻き付ける紙の芯棒のことで、専用の紙を接着剤で何重にもはり合わせて作る。身近なモノでは、家庭用ラップの芯や粘着テープの芯などがある。産業用としてもフィルムや紙などの材料を巻き取る芯として幅広い分野で利用されている。この産業用材料を巻き取る芯のことを「巻芯」と言い、材質は紙以外にも樹脂や鉄鋼製などのものが用途に合わせて使われている。

 富士紙管は巻芯用紙管の専門メーカーで、2009年3月期売上高は13億円の規模。手がける紙管は、感熱紙などの情報記録紙や不織布、音響機器用フィルム、各種テープ材、その他薄葉紙など多様な分野で使われている。

 同社は1956年、製紙業が盛んな静岡県富士市で創業。以来、半世紀以上の間、一貫して紙管メーカーとして歴史を刻んできた。06年には紙管古紙のリサイクルの研究を始めるなど、環境配慮型の取り組みも推進中。

 また、国内製紙業界の需要が頭打ちになるなど外部環境が大きく変化する中、新分野開拓の取り組みも継続している。その一つが「低発塵紙管」の開発だ。需要としては薄型ディスプレーなどに用いられる高機能フィルム用や、食品・医療分野のフィルム用の巻芯向けを狙っている。これらの分野ではクリーンルームでの取り扱いが多く、低発塵性が重要な条件となっている。

富士紙管(株)


会社名
役割分担
■コア企業
富士紙管(株)
バルカナイズドファイバー紙管「低発塵紙管」の開発、製造、販売
昭和電工(株)接着剤の開発、供給
東洋ファイバー(株)紙管用バルカナイズドファイバー紙の開発、供給



富士紙管(株) 斉藤規夫社長<br>「新連携の認定に向けた取り組みで、事業戦略がより洗練され営業力も磨かれた。認定を受けたことで自信にもつながった」

富士紙管(株) 斉藤規夫社長
「新連携の認定に向けた取り組みで、事業戦略がより洗練され営業力も磨かれた。認定を受けたことで自信にもつながった」

【材料仕入れ先と協力して開発】

 従来の紙管は切断時に紙粉が出たり、切断加工面から繊維が飛び散ったりする発塵が避けられない。そのため、低発塵性が求められる分野では、発塵が少ない樹脂や鉄鋼製の巻芯が多く使われている。しかし、樹脂や鉄鋼製の巻芯は紙管に比べ価格が高いのが課題だ。富士紙管の斉藤規夫社長は「低発塵紙管の開発でこの分野の需要を取り込みたい」と考えた。

 斉藤社長の頭の中には10年以上前から開発の構想はあった。しかし、材料の選定や強度の問題があり、なかなか実現しなかった。そこで思い切って紙管の紙原料の仕入れ先である東洋ファイバー(静岡県沼津市)と、接着剤の昭和高分子(東京都港区)に相談したところ協力を得ることができた。そして一緒に試行錯誤したり、試験を繰り返したりすることで、少しずつだが開発は動きだした。

 試行錯誤の末に行き着いた材料が、木綿や木材の繊維を加工した素材「バルカナイズドファイバー」と、酢酸ビニル樹脂を使った接着剤の二つ。バルカナイズドファイバーを接着剤で積層密着することで、管形状にした。質感は樹脂に似ており、切断加工面からの発塵は一般的な紙管の5%未満に抑えることができた。巻芯として使用可能な強度も実現。08年12月には東洋ファイバーと共同で低発塵紙管の特許を申請した。

【新連携で事業戦略を洗練、営業も強化】

 開発後の課題は新規顧客の開拓だ。斉藤社長が営業戦略を練り始めた時に、「新連携」の活用を勧めてくれた人がいた。それが富士市産業支援センター(静岡県富士市)の小出宗昭センター長だった。小出センター長の的確なアドバイスを受けたことで、連携スキームの見直しや新連携の申請に必要な資料作成などをスムーズに進めることができ、09年7月に新連携事業の認定を受けた。

 新連携の認定に向けてターゲットとする市場の調査をやり直したり、事業目的や各企業の役割分担を明確化したりする過程の中で、事業戦略がより洗練されていく効果があった。また「営業担当の従業員が自分たちでプレゼン資料を作り、発表することで営業力も磨かれた。認定を受けたことで自信にもつながった」(斉藤社長)と新連携の効果を実感している。

 現在も新連携のプロジェクトマネジャーを中心とする支援チームのサポートを受けながら、新規顧客を開拓中だ。樹脂管と比べた価格面のメリットだけでなく、生分解性が高いために環境に良いことや多品種少量生産が可能なこと、帯電性が低いことなどを積極的にアピールし、拡販していく考えだ。すでに専用のパンフレットを作り、営業で使用している。低発塵紙管だけで、11年3月期には1億円を売り上げるのが目標だ。