製造/関東 「光高速リモート制御技術の応用開発」

ニッチ市場に特化した高速大容量の専用ネットワークの開発

 現在の光通信網は信号の進路制御に電気系のスイッチング装置を用いる。この光−電気間の変換が光を減衰させ、通信速度を落とす原因になっていた。今回の新連携による研究では、進路制御に光スイッチング技術を用いて高速大容量の新ネットワークを開発する。

 基本技術として産業技術総合研究所の平賀隆研究員が開発した熱レンズ式の光スイッチング技術を採用した。この熱レンズは熱膨張により光の屈折率が変わる特徴を持ち、熱膨張を制御することで、光の進行方向やオン・オフを制御しようというものだ。レンズを膨張させる光を光ファイバーに乗せて遠隔から送ることで、スイッチの遠隔操作が可能になる。

 この基本技術を基に、工場の設備診断用や病院の医療診断用、河川水位の監視用など用途を絞った専用ネットワークを開発する方針だ。いずれも通信エリアを小規模なものに限定し、低価格のネットワークを目指す。大手との競合を避けてニッチ市場に特化する。まず2005年度中に防災監視用システムの試作品を完成させる計画だ。

(株)スペースクリエイション


会社名
役割分担
■コア企業
(株)スペースクリエイション
研究開発/事業化推進
チノンテック(株)光学系変換機部分開発
(有)トリマティス試作



(株)スペースクリエイション<br>青木邦章社長

(株)スペースクリエイション
青木邦章社長

【高速で低コストのネットワークを開発へ】

 スペースクリエーション(静岡県浜松市)などのグループは、光スイッチング技術を生かしたネットワークシステムを開発する。産業技術総合研究所の平賀隆研究員が開発した独創的な光スイッチング技術を活用し、高速で安価なシステムにまとめ上げる考え。

 スペースクリエーションは2003年に半導体レーザーを用いた新タイプの振動計を静岡大学と共同開発した。本来は自動車などの振動計測用だが、これを防災監視や設備故障診断にも応用できないかと考えた。遠隔操作用のネットワークを模索する中、平賀氏の光スイッチング技術に出合った。

 ネットワークシステムの開発に着手したのは2005年春。取引があった光部品ベンチャーのトリマティスと光学部品メーカーのチノンテック、光ファイバーメーカーの日星電気と手を組み、平賀氏を顧問に招いた。
 目指すのはネットワークの基礎技術開発にとどまらない。スペースクリエーションの振動計測技術と組み合わせ、防災監視や設備診断など用途に合った専用システムに仕上げる方針だ。

 開発課題は三つ。まずニーズがどこにあるか、市場を見極めること。市場調査に加え、医療や防災の各専門家から意見を集める手段を模索中だ。次に、量産化に向けた各種部品の製造技術の確立も重要。ここでは特に、熱で屈折率を変え、光の進路を変える熱レンズの製造技術が核になる。野外などでの使用に耐えるシステムの安定性、耐久性も欠かせない。


【参加企業間のバランスを重視】

 参加する4社は規模も、固有技術も、新連携にかける思いも違う。参加企業の開発拠点は浜松、諏訪、千葉、札幌とばらばらだ。「全体のバランスをとるため、情報の共有化を最重視している」とスペースクリエーションの青木邦章社長は強調する。実際、目標や決めごとは必ず明文化し、役割分担を明確化することにしている。目標設定も目先の必達事項と現実的な目標、将来の夢を分け、進ちょくをチェックしている。

 ルールづくりにも神経を使った。知的財産や研究成果の所有権、役割分担、秘密保持義務などを契約書に明記した。例えば、特許などは発明者の所属企業が出願権を持ち、対価を払えば連携メンバーはその特許を活用できる。一方で、連携メンバー以外への技術供与はメンバー全員の了承が必要。試作品や市場情報、製造ノウハウなどの帰属も明確にした。

 新連携の第1号に認定されたのは「タイミングが合っただけ」(青木スペースクリエーション社長)だが、PR効果は十分。金融機関は融資金利を下げてくれたし、試作品もないのに複数の自治体から防災用ネットワークのモニター希望が舞い込んだ。周囲の期待に応えるためにも、今後2年間で開発を終え、2007年に商品を世に送り出す考え。2008年には年間12億円を売り上げる計画だ。