食料・食品/東北 「高齢者および咀嚼・嚥下力の低下した方向けの新ソフト食の量産化・市場化のサービス事業展開」

生涯食べることの喜びを追求

 高齢化に伴い、食物をかみ砕き(咀嚼)、飲み込む(嚥下)機能が低下した高齢者は、口から直接、食品による栄養補給ができにくくなるという。咀嚼・嚥下機能の低下は、食べたものが肺に入るなどの誤嚥性の肺炎を引き起こす要因にもなる。口からの栄養摂取が困難となった場合、食事の量が減り、消化機能への影響も懸念される。

 山形県・庄内地域を地盤に給食サービス受託、高齢者向け食事の宅配などを手がけるベスト(山形県鶴岡市)は、「再成形ソフト食」と呼ぶ咀嚼・嚥下機能が低下した人向けの新たなソフト介護食品による市場開拓を目指している。同社の斎藤秀紀社長は「目で見て、食欲をそそり、食べておいしさを感じることができる商品の提供が開発の動機」という。1985年創業の同社は、高齢者への給食提供などを通じて、介護する側が提供しやすい方法による食事に疑問を抱いていた。飲み込む力が弱くなった高齢者向けの介護食はこれまで食材本来の「形」のないペースト状のものなどが一般的だった。連携体の中核となるベストは2005年から新ソフト介護食の商品化に着手し、現在量産化に向けた準備を進めている。

 今後は介護食品関連の展示会など独自のソフト介護食の知名度を高めていくほか、市場を開拓するための新たな連携も模索していく方針だ。

(株)ベスト


会社名
役割分担
■コア企業
(株)ベスト
再成形ソフト食の企画・開発・製造販売
(株)シリカ量産化支援
山形県中小企業団体中央会事業化支援



(株)ベスト 斎藤秀紀社長<br>「まず見て、そして食べる。食のクオリティー・ライフを目指す介護食の提供。こうしたこだわりがあった」

(株)ベスト 斎藤秀紀社長
「まず見て、そして食べる。食のクオリティー・ライフを目指す介護食の提供。こうしたこだわりがあった」

【大手とは違った商品化】

 「まず見て、そして食べる。食のクオリティー・ライフを目指す介護食の提供。こうしたこだわりがあった」(斎藤社長)。これまで大手が市場投入してきた嚥下力の低下した高齢者向けの介護食の形は、サイコロ状であったり、棒状などが一般的な形だったという。「食欲がわかなければ、健康を損なうことにもつながる」(同)ことから、大手とは違った商品化を追求することにした。

 新連携計画の認定は09年2月。07年度の新連携構築支援事業を経て、計画認定を受けた。連携体は新ソフト食の開発、製造販売を手がけるベストのほか、シリコーン成形加工のシリカ(鶴岡市)、連携支援の山形県中小企業団体中央会による県内3者が手を組んだ。新ソフト介護食の量産化に向けて県内外で「型」を探していたベストが、地元・鶴岡に目を向けてシリカと巡り合った。連携体以外では食品の粘度測定と物性評価で山形県工業技術センターなどの協力を受けている。

 これまで中核企業は、新商品開発事業の一環として、「ソフトおせち」や「ソフト鮭」「ソフト帆立」「ソフト鱈」などの高齢者向けソフト食を開発してきた。素材を嚥下食用に加工して、素材そのものからかたどりした型枠を使って再成形するのが特色。見た目や食材としての再現性で独自性を持つ。新ソフト介護食の量産化に向けて「型」は、コスト低減につながる重要な課題だった。連携体によるシリコーンシート素材を活用した独自の型枠の開発により、金属製と比べ、型費用の大幅な削減が可能になった。

 量産化に向けた装置は、鶴岡商工会議所を通じて、地元企業からの協力を得た。09年末に試作機を導入。独自の型にピンポイントでムース状の具材を詰めていくことができる装置で、試運転に入った。ベストでは「トライアルで改良のポイントを探るなど、量産に向けた製造ノウハウを蓄積していく」(赤谷恭彦企画開発事業部部長)という。

【連携の輪を広げる】

 現在、新ソフト介護食は、魚介など3種類の商品を庄内地域など一部にモニター販売している。将来は魚介はじめ野菜、肉など商品の種類を15程度に増やし、それぞれを組み合わせた形での商品提供などを見込む。2010年は新ソフト介護食のPRにも力を入れる。2月に東京で開催される「メディケアフーズ展」への出展を皮切りに、展示会の活用を進める。認知度を高め、潜在的な需要を探る構えだ。

 新ソフト介護食は、地域の味を重視するという。地域特有の味付けに対応し、それが高齢者にとっては魅力の一つになるとみている。今後の連携体の方向は、市場開拓に向けて、各地域の練り製品メーカーなどとの連携も模索する。2010年度は、新連携支援に伴う専門家派遣の活用などにより、連携の輪を広げていく方針だ。