製造/関東 「省エネルギー型空調用調湿装置の開発と事業化」

湿度調整で快適空間

 体感温度には気温だけでなく、湿度も大きく影響を与えている。同じ温度でも、湿度が高いと体感温度が高く感じられる。また、温度が高い場合、湿度が高すぎると不快になる。つまり、湿度が高ければ温度が低くても暖かく、湿度が低ければ温度が高くても涼しく過ごしやすい。湿度調整式の空調は、温度ではなく湿度を調節することで、快適な空間を生み出すことができる。

 一般的な空調は温度制御式で、室内の温度を下げることで除湿を行い、その後ヒーターなどで適正温度に調整する。無駄になるエネルギーが多いが、費用対効果の観点から幅広く利用されている。一方で、湿度を調整して快適で保健衛生上も好ましい環境を保つとされる湿度調整式空調は、装置が高価なため、製薬工場や衛生管理区域などに普及が限られている現状がある。

 ダイナエアー(東京都千代田区)は湿度調整式空調の製造、販売および普及を目指し2004年に設立された。同社がコア企業となり開発したのが空調用調湿装置「モイストプロセッサー」だ。塩化リチウム溶液を用いて空気中の水分を除去する。一般の温度調整式空調より高価だが、従来の湿度調整式より価格を抑えた。また、温度調整式と比較して全体で30―50%のエネルギー削減が見込めるため、装置費は数年で償却できるという。

ダイナエアー(株)


会社名
役割分担
■コア企業
ダイナエアー(株)
装置の基本仕様企画、営業など、製造以外のすべての業務
MDI(株)設計
藤本電器(株)製造



ダイナエアー(株) 宮内彦夫社長<br>「事業化に向けて、まずは完成度の高い製品を目指すことが命題だった」

ダイナエアー(株) 宮内彦夫社長
「事業化に向けて、まずは完成度の高い製品を目指すことが命題だった」

【空調への不満は多い】

 「モイストプロセッサー」は施工費別で1台2000万円前後という価格ながら、09年は約15台売り上げた。さらに2010年は年間60台の販売が見込めるという。販売先の約8割が老人ホームや病院。ほかにもスーパーマーケットへの導入事例が増えており、宮内社長は「これまでの空調に不満を感じている人が多かったようだ」と笑顔を見せる。

 ダイナエアーは、これまで特殊な設備と高いランニングコストで運用していた調湿空調を提供するために、会社員だった宮内彦夫社長が独立し、04年に設立した。当初は社員含め2人で販売に向けた準備、製品化を進めていたが、故障が頻発していた。宮内社長は「事業化に向けて、まずは完成度の高い製品を目指すことが命題だった」と振り返る。

【得意分野を分担】

 その手段が新連携支援制度の活用だった。連携メンバーは3社。ダイナエアーが装置の基本仕様を出し、MDIが設計を、藤本電器が製造を行っている。営業など、製造以外のすべての業務はダイナエアーが行う。メンバーはいずれも設立直後からの知り合い。お互いの得意分野を生かすことで協力に成功している。また、除湿材に使用している塩化リチウムの基礎研究やプロジェクトの実証実験を、宮内社長と前職から交流があった早稲田大学基幹理工学部の齋藤研究室と行っているほか、09年3月からはパラマウントベッドと販売代理店契約を結ぶなど、協力者の数は増えている。

【自転車操業を脱却】

 連携したメリットは、助成や特別枠融資が受けられること。これまでは装置を1台売り、その資金を開発や会社の運転資金に充てるという状況が続いていた。「自転車操業から脱却できた意義は大きい」(同)と感じている。

 連携後、08年から量産体制が整い、販売を本格化。販路開拓の取り組みが実を結び、09年7月ごろから急速に売り上げが伸びた。調湿装置は「室内を適度な湿度に保つことで強力な加湿装置ともなる」(同)ため、09年夏の新型インフルエンザの騒ぎが影響したのでは、と分析している。「空調のエネルギー排出量について、かつては有力な解決手段がなかった。温室効果ガス25%削減目標など、時流は後押ししてくれている」(同)と期待を寄せる。従来の空気調和装置すべてに置き換えることはできないが、今後も需要は高まると見ている。

 現在の生産能力は月10台程度で、今後は生産拠点の複数化、代理店販売強化も検討する。また、知的財産権対策も課題で、既に数十件以上の特許を取得、申請中で、積極的に取り組む考えだ。