製造/関東 「臭気による火災警報補助器の事業化」

香りの伝送をビジネスに

 映像や音楽についてはデジタル化が進んでいるが、きゅう覚に関してはデジタル情報化が遅れている。そこで、香りの伝送をビジネスとして積極的に取り組んでいるのがシームスだ。においには、花のにおいから木のにおいなどさまざまなものがあるが、光の3原色のように基本になるものはない。

 同社では天然の香りを抽出して利用するが、組み合わせにより、においは何十万種類でも作れる。そこで、においの元素と組み合わせを決め、約128種類でにおいのパレットを作り、PCデジタルデータと合わせてにおいのオリジナルレシピ表を作成した。

 においのデータを音と同じようなデジタルデータ源にすれば、映像や音のように伝えることができるようになる。たとえば、レモンなどのように誰にでもわかりやすいにおい以外でも、レシピを送ることで、においを再生できる。今後も医療の分野での匂いの伝送の研究開発を続ける考えだ。

 シームスは設立翌年の2002年、携帯電話用のストラップを開発、発売した。電話を受信するとモーターが回って香りを発する商品で、若者の間で人気になり数十万個が売れた。だが、同社の目指すところとは違うので、環境、安全、医療など人の命に近い分野に限定して研究開発を進めている。

(株)シームス


会社名
役割分担
■コア企業
(株)シームス
事業統括、製品の開発・特許、販路開拓
ダブル・ビー(株)販路開拓、広告・宣伝、市場情報収集、製品の改良・開発協力



(株)シームス 漆畑直樹(うるしはた・なおき)社長<br> 「新連携の活用で販路などについて情報が得られれば大きなメリット」

(株)シームス 漆畑直樹(うるしはた・なおき)社長
「新連携の活用で販路などについて情報が得られれば大きなメリット」

【滋賀医大で100人の実験】

 ワサビ臭気発生装置は健聴者が耳で警報を聞くのに代わって、においで危険を知らせる仕組みだ。その実証実験は、技術支援をする滋賀医科大学の精神科学講座の協力を得て行っている。「これまでに100人ほどの方々に実証実験を受けていただいた」(田島幸信取締役)という。1回の実験で聴覚障害者と健聴者2人ずつ行う。21時に問診をし、23時に就寝。その後、脳波や筋電図などの信号を分析して、眠っているかどうかを確認。それができたところで、まず臭気を含まない気体を室内に噴霧。再度睡眠状態を確認してから、ワサビの臭気を含んだ気体を噴霧する。そして、被験者が睡眠から覚醒するまでの時間を計る。

 実験結果によると、ワサビの匂いを噴射してから、「約10秒から2分後には1人を除き全員が覚醒した」(田島取締役)。聴覚障害者は、健聴者と比べて目覚めるまでの時間が約2倍早いという結果も出た。匂いに対する反応は健聴者よりも鋭いようだ。

【消防法改正が追い風】 

 実験を繰り返しながら、室内に噴霧するワサビの量を調整した。におい自体のレシピはシームスが保有し、においのスプレー缶はエア・ウォーターグループの連携体には加わらないエア・ウォーターゾルが担当する。装置の開発では同グループのエア・ウォーター防災(旧川重防災)が参加している。

 火災予防に関しては、2004年6月に消防法が改正され、住宅用火災警報器設置の義務化が始まった。新築の建物は06年6月から、既存の建物は11年6月1日までに設置することが義務付けられている。

 臭気発生装置は2010年での本格的発売を目指して、研究を進めている。火災報知機とセットで販売する形にする予定だ。「すでにユニバーサルルームのあるホテルなどからの引き合いが増えている」(同)。そのため、今後はワイヤレスのセットなどを安価で供給できるよう開発を進める計画だ。

 販売については聴覚障害者だけで運営するワールドパイオニアと連携している。「当社は開発機能しか持たない」(同)ので、販路開拓、広告宣伝、市場の情報収集などは障害者向け商品の取り扱いを専門とする同社に負う部分は大きい。

 新連携を活用することで、「販路などについて情報が得られれば大きなメリットだ。睡眠の研究も覚醒については理解されていないので、そうした学術情報もほしい」(同)と考えている。ワサビ臭気発生装置は、耳が遠くなっている高齢者にも有効な手段だ。「視覚障害者、聴覚障害者、高齢者などがいらっしゃるご家庭。宿泊施設などでぜひ活用いただきたい」(同)と緊急時の備えを呼びかけている。