製造/中部・北陸 「冷間鍛造用低コスト高効率型潤滑剤塗布装置の製造・販売事業」

コスト・処理時間を大幅に減少

 油圧プレス機などを製造する石原鉄工(愛知県名古屋市)がコア企業として開発したのは、「冷間成形用潤滑剤塗布装置」。冷間鍛造はプレス成形時の摩擦で加工物と金型の焼き付きを防止するため、加工物に前処理を施す必要がある。同装置はその前処理を行うもの。この装置を使用することで、従来の前処理方式に比べて、コストや処理時間を大幅に減少させ、リードタイム短縮を実現する。

 通常の前処理は、大量の加工物を、脱脂槽や水洗槽、酸洗槽、潤滑槽といった8つの槽に入れた後に乾燥させるボンデ処理と呼ばれる方法を取るのが一般的。冷間鍛造部品メーカーはこの処理を専門に行う業者に外注する場合が多い。だが、生産時間の短縮や多品種小ロット生産には不向き。このため、ユニバーサルジョイントメーカーの協和工業(愛知県大府市)はこの前処理の内製化を検討。表面処理剤メーカーの日本パーカライジング(東京都中央区)が開発した潤滑剤を使えば湯洗、塗布、乾燥といった3工程で前処理が完了することもわかり、これに挑戦。ただ、同方式の実現には潤滑剤の塗布装置が必要になるため、装置の開発を石原鉄工に依頼した。

 石原鉄工がチャレンジしたのは装置の小型化。鍛造用プレス機の隣に設置するためだ。構造そのものを工夫することで、設置面積が8つの処理槽を持つ従来方式に比べて20分の1以下となる約1平方メートルの塗布装置を完成。作業者が前処理した加工物を近くのプレス機にすぐにセットできるようにした。前処理と鍛造をその場でできるため、生産効率が向上し短納期化も実現した。

 協和工業が技術支援と装置の販売を、日本パーカライジングが潤滑剤の販売をそれぞれ担当する。

(有)石原鉄工


会社名
役割分担
■コア企業
(有)石原鉄工
装置の設計製作
協和工業(株)冷間鍛造前処理の検証、前処理方式の技術提供、装置の販売
日本パーカライジング(株)潤滑剤の販売



(有)石原鉄工 石原邦雄(いしはら・くにお)社長<br>「装置の開発は難しくなかった。どうやったら作業者が楽に操作できるかを考えて作るだけ」

(有)石原鉄工 石原邦雄(いしはら・くにお)社長
「装置の開発は難しくなかった。どうやったら作業者が楽に操作できるかを考えて作るだけ」

【常識を覆す小型少量生産装置】

 石原鉄工は1976年の創立以来、金属を切断するシャーリングやプレス機のほか、発注元の要望に応じた特注機械を製造してきた。特注機械はこれまでに、自動車の内装の断熱材切断機やメッキのはがれ具合を調べる製鋼所向けの薄板試験機などを開発。大手メーカーが対応しにくい200万−3000万円の特注品や他社が開発できない機械を製造してきた。石原邦雄社長は「他社で作るのを断られて、当社にお願いに来られることもある。一度手がけたもので完成できなかった機械はないのが誇り」と胸を張る。

 新連携は、協和工業が冷間鍛造部品づくりのリードタイム短縮や中間在庫の削減などの問題解決に取り組んだのが始まり。協和工業も他の冷間鍛造業者と同じように、一度に500キロ−1000キログラム単位を処理するボンデ処理での前処理を外注先に依頼していたが、問題解決を目指して内製化に取り組んだ。

 日本パーカライジングがすでに発売していた潤滑剤を使い、実験を開始。実験には成功したがプレス機の横に置いて、湯洗と加工物の温度の上昇、潤滑剤の塗布、乾燥の3工程を効率的に処理する装置がなく困っていた。そこで、取引のあった石原鉄工の石原社長に装置の開発を依頼。協和工業は小型で、短時間に前処理ができる装置開発を要望し、石原鉄工が装置の開発に着手した。

 装置は湯洗工程を6部屋に分割し、水中に漬けたまま5秒ごとに加工物を移動させながら、塗布するまでに加工物の温度を80度Cに上昇させる。潤滑剤の中に加工物を3秒漬けて塗布し、液切りを2秒したあと、30秒乾燥させる仕組みにした。

 この結果、プレス機の横に設置できる小型装置でありながらサイクルタイムが5秒間に1個で、1個当たりの処理時間が1分5秒という短さを実現した。従来のボンデ処理では30分かかっていたという。処理費用は1個あたり1.3円で、外注に出す場合と比べて3分の1程度に抑えられる。同装置は現在、協和工業で6台が稼働中だが、すでに20−30社から引き合いがあるという。

【顧客の要望聞き取り装置開発】

 石原社長は「装置の開発は難しくなかった。顧客の要望を聞き、作業者と機械のレベルを考慮して、どうやったら作業者が楽に操作できるかを考えて作るだけ」と顧客の声を反映したモノ作りを続けている。「やったことがない仕事でもアイデアは出せるし、これまでに培った応用力がある」と今後もさまざまな要望に応えていく考えだ。

 今後の課題は販路の拡大で、現在、4社と代理店契約の締結に向けて話し合い中。「せっかく連携できたので、連携体を生かして1つの商売の形を作っていきたい」と意気込む。