製造/中国 「フェムト秒超短パルス(30フェムト秒以下)のレーザー光源の事業化」

工業、医療分野での利用を見込む

 30フェムト秒(1000兆分の1)以下の超短パルスレーザーを発生させる装置(レーザー光源)を商品化し、国内外の市場に売り込む事業が進んでいる。このコア企業になっているのが、工業用ゴム金型設計製作と治具・精密小物部品の切削加工の中原鉄工(岡山市中区)。

 フェムト秒レーザーは、レーザーパルスの持続時間をフェムト秒単位にまで短くした。きわめて短時間内に大きなエネルギーを集中させることができるため、照射する対象物が熱による影響をほとんど受けないのが特徴で、金属などの加工にも利用されている。

 中原鉄工などのグループが開発したレーザー光源から発生する30フェムト秒以下の超短パルスレーザーは、テラヘルツ波の発生源として適していると考えられている。テラヘルツ波は、毎秒1兆回振動している電磁波で、フェムト秒レーザーを半導体などに照射して得られる。テラヘルツ波は、電波のように物質を透過し、光のように直進する性質を有し、工業や医療あるいは農業などさまざまな分野での利用が見込まれている。

 現在のフェムト秒レーザー光源装置は、ほとんど外国製。中原鉄工らのグループは、国内の企業3社が連携して取り組んでいる強みを生かし、メンテナンスにも迅速に対応するサービス態勢を整備して市場参入を目指す。

中原鉄工(株)


会社名
役割分担
■コア企業
中原鉄工(株)
全体統括、装置部品の精密加工・製作・組み立て
(株)光フィジクス研究所装置の基本設計、装置の調整・検査
サイバーレーザー(株)装置のマーケティング・販売、装置のメンテナンス



中原鉄工(株) 中原成始郎社長<br>「下請け関係と違って、互いを補い得意分野を伸ばせることが連携のメリット」

中原鉄工(株) 中原成始郎社長
「下請け関係と違って、互いを補い得意分野を伸ばせることが連携のメリット」

【光学分野のものづくりへの挑戦】

 09年2月に新連携の認定を受けた。連携体を構成するのは、精密加工を得意とする中原鉄工と、フェムト秒レーザー関連技術の開発に長く携わりノウハウを蓄積してきた光フィジクス研究所(岡山市北区)、そして、高付加価値レーザー装置の開発・製造を手がけるサイバーレーザー(東京都江東区)の3社。

すでに中原鉄工と光フィジクスは、光フィジクスの光学機器の部品を中原鉄工で製造する関係だった。中原鉄工は、光フィジクスのフェムト秒レーザー光源にも10年以上前に一度取り組んだ経験があり、中小企業基盤整備機構から新連携事業の紹介を機に、当時に比べ加工技術が向上したこともあり再挑戦となった。

 中原成始郎社長は「事業の幅を広げるためにも光学分野の精密部品のモノづくりに進出したい考えはかねて抱いていた。しかし、あらためてフェムト秒レーザー光源製造を始めてみると、これまでの部品加工にくらべて精度要求レベルが高く苦労した」という。

 レーザー媒質から発生した光が装置の両側に取り付けた鏡(レーザーミラー)の間を何度も往復して増幅し、レーザー光が発振する。両側の鏡の距離は延べ1メートル。鏡の傾きの誤差が5マイクロメートル(百万分の1)以下でないとフェムト秒発振はしない。

 同社にとっては、新分野への挑戦だけに不慣れな部分が多いが、中小機構岡山大インキュベータ(岡山市北区、岡山大学敷地内)に入居して光学関連の実験設備を導入、「光フィジクスから光学ユニットのノウハウを教わっている」(中原社長)最中だ。

 連携のメリットについては、「下請け関係と違って、互いを補い、得意分野を伸ばせる」(同)と考えている。単に事業の役割分担をするだけでなく、踏み込んだ議論ができるパートナーシップが醸成されてきているようだ。

【展示会出展や貸し出しで実績作り】

 中原鉄工のグループは、開発段階から製造販売まで、いずれも国内企業3社で連携して取り組んでいる。フェムト秒レーザー光源市場で先行する海外勢に対抗するため、品質面で優位性を持つ製品提供を目指す。安定的な稼働をサポートする自動チューニング機能や、装置のどの部品がどんな動きをした時に故障するか、技術者の経験則をソフトウエアに置き換え、故障時期を予測する「予測メンテナンスアルゴリズム」などを搭載していく。

 今後は、初号機を09年度内に計3回展示会に出展、PRする予定。企業や大学などの研究室への貸し出しも検討中で、テラヘルツ波発生装置や分析機器への利用で実績を上げ製品の優秀さの実証や、品質改善を進めながら、市場投入のタイミングを計っていく。