製造/関東 「打撃型ノックマシンの事業化」

実際の打球に近い感覚

 自動車や家電製品に使う樹脂部品の試作を行っているハトリバンテック(群馬県伊勢崎市)と、電子部品の受託生産などを手がけている杉原エス・イー・アイ(伊勢崎市)。両社は共同で「打撃型ノックマシン」を開発している。

 これは従来型のローラーに硬式球を挟んでボールを放つ方式ではなく、機械が金属バットで硬式球を打つという本格的なタイプで、実際のノックに近い感覚で練習できる。また打球の軌道の再現性が高く、苦手の守備を反復して練習するのに適している。

 最大出力などの規格が大きく違うため、内野用と外野用に分けて開発している。ノックで飛距離100メートル級の打球を打つのは、相当のパワーのある人でないと難しい。そのため外野用ノックマシンは潜在的な需要が特に高いと見ている。

 現在、県内の高校に試作品を提供しており、野球部の指導者や部員から実際の使用感覚をフィードバックして改良を進めている。2年後に事業化を予定しており、主に指導者が不足している学校や社会人野球クラブなどに販売する。

 コア企業のハトリバンテックは、主にバットを回転させる機構部分や筐体などのハード面の設計や製造を担当。杉原エス・イー・アイは、マシンの操作やバットの制御などソフト面を担当する。

ハトリバンテック(株)


会社名
役割分担
■コア企業
ハトリバンテック(株)
事業統括、ハード面の設計製造、販売
杉原エス・イー・アイ(株)制御(ソフト)の開発



ハトリバンテック(株) 羽鳥基宏社長<br>「このノックマシンで指導者不足に悩むチームが強くなってくれれば良いですね」

ハトリバンテック(株) 羽鳥基宏社長
「このノックマシンで指導者不足に悩むチームが強くなってくれれば良いですね」

【連携で精度アップ】

 ハトリバンテックがノックマシンの開発を始めたのは2003年ごろ。社員4−5人が地元の野球クラブに所属しており、他のクラブと定期的に試合を行っていた。中でも強豪クラブの打者が放つ打球は鋭くてよく伸びるため、捕球に苦労していた。強豪の守備対策を練っていたハトリバンテックの部員は、効率的に練習できるノックマシンを自ら製作しようと思い立ったという。

 当初は大学と共同で開発を試みたが、「理論上はうまくいくはずなのに、実際には期待通りの打球が飛ばなかった」(羽鳥社長)と最初の2年間は開発が遅々として進まなかった。3年目になり、ソフト開発を得意とする杉原エス・イー・アイが参加。モノづくりにたけた両社が試行錯誤して細かな調整を詰めていくと、打球の軌道の精度が徐々に改善していった。

 06年に群馬県の研究開発補助金を獲得した。実用化が近づいてきたことから、09年5月に新連携の認定を得た。銀行などから支援体制も整った今年度は、試作品の製作を中心に行う予定で、09年度中にノックマシンを5−6校に提供する計画。これにより実用化に向けた製品改良を加速する。幸運にも担当のコーディネーターが野球経験者で、この事業に対する思い入れは深い。他県の高校にもノックマシンを導入しようと奔走しているという。

 事業が軌道に乗れば、ハトリバンテックの売り上げの平準化に貢献する。同社は試作品の受託製作を手がけているため、時期により繁閑の差が大きい。繁忙期は他の企業に製造を委託する方針で、ノックマシンの安定供給には問題がないという。

【ノックマシンで甲子園へ】

 今後のテーマは「軽量化と遠隔操作」(羽鳥社長)。ノックマシンは頻繁に持ち運ぶことが予想されるため、軽量化のメリットが大きい。反面、剛性が低下したり重心が高くなったりすると打球の精度が落ちるため、双方のバランスが要求される。

 人手不足を補うのが最大の目的であるノックマシンには遠隔操作も欠かせない。現在はノックマシンにコードで接続したリモコンで操作できるようになっている。100メートル離れていてもリモコンで操作できるようにすれば、外野手でも一人で朝練習できるようになる。

 「指導者不足に悩むチームが強くなってくれれば」と羽鳥社長は期待を込める。ハトリバンテックが本社を構える伊勢崎市内の高校はまだ甲子園に出場したことがない。市内の高校の野球部には強豪校のような恵まれた練習環境はないが、「ぜひこのノックマシンでハンディを克服してもらいたい」(羽鳥社長)。そのために今後はコストダウンを進め、実用化時期には70万−80万円程度で販売する考えだ。