建設/関東 「スプレーカバー工法による屋根の防水、断熱、補強工事の開発と事業化」

スレート屋根補修工事の常識打ち破る

 工場や倉庫の屋根の多くは、セメントを主原料としたスレート材料が使われている。建設後20年以上が経過するとスレート材料の劣化が進み、屋根の補修やふき替えといった工事が必要になる場合が多い。

 工場や倉庫などの防水・塗装工事などを手がけるトヨコーが開発したスレート屋根の補修工法「蘇生(そせい)工法」は、独自開発した3種類の塗料をスプレー装置で順番に吹き付けるだけで、経年劣化した屋根の耐久性を向上させることができる。従来工法よりも大幅な短工期・低コスト化を実現し、注目されている。

 従来はスレート屋根の上に鋼板をはる工法が多く採用されていた。しかし、屋根が重くなるため建物の耐震補強工事が必要になるなど費用負担増になるといった課題があった。この工法に比べ、樹脂材料を使う蘇生工法は1平方メートル当たりの重量が2キロ−3キログラムと10分の1−5分の1の重さに抑えることができ、耐震補強工事も不要となる。

 また、簡単な足場を組むだけで施工できるため、平均して1日に1000平方メートルの施工が可能と工期が短い。材料が樹脂で工期も短いため、価格は1平方メートル当たり5000円と低く設定することができた。

 トヨコーの試算では、1970−1990年の間に建てられたスレート屋根の工場や倉庫の建面積は、11億6000万平方メートルあるという。その半分の5億6000万平方メートルは経年劣化などで補修が必要とみており、この膨大な市場で受注の拡大を狙う。

(株)トヨコー


会社名
役割分担
■コア企業
(株)トヨコー
蘇生工法の研究・開発、営業、施工管理
(有)セブンテック専用吹き付け装置の設計・製造
三菱樹脂(株)塗料の開発・製造および品質管理



(株)トヨコー 豊沢弘康社長<br>「耐久性が高い樹脂吹き付け工法を開発して信頼性を高めれば、新事業を立ち上げられると確信し、研究開発に乗り出した」

(株)トヨコー 豊沢弘康社長
「耐久性が高い樹脂吹き付け工法を開発して信頼性を高めれば、新事業を立ち上げられると確信し、研究開発に乗り出した」

【技術提供を受けながら4年半かけて開発】

 トヨコーの豊沢弘康社長が蘇生工法の事業を思いついたのは、02年夏のこと。劣化したスレート屋根に塗料を吹き付けて補強する工法は以前からあったが、鋼板をはる工法に比べて耐久性や信頼性が低いことが課題だった。「耐久性が高い樹脂吹き付け工法を開発して信頼性を高めれば、新事業を立ち上げられる」(豊沢弘康社長)と確信し、研究開発に乗り出した。

 まず三菱樹脂と協力して取り組んだのが新たな塗料の開発。従来の塗料吹き付け工法では、スレート屋根との密着性が低く短期間ではげ落ちたり、伸縮性がないため温度変化で屋根が伸縮するとひび割れたりするなど耐久性の課題があった。

 蘇生工法は、断熱層、補強層、表層の3層で構成。第1の断熱層はスレート屋根に密着する発泡ポリウレタンを、第2の補強層は防水機能を高めたポリウレタンを、第3の表層は不燃材の無機塗料をそれぞれ使っている。

 断熱層では、スレート屋根との密着性を高めるため、吹き付け時にスレートの凹凸や微細なすき間に食い込みやすくする改良を行った。補強層のポリウレタンは防水性と伸縮性を持たせ、強度も高めることに成功。さらに表層をコーティングすることで劣化速度の低下を図っている。表層は無機材料のため環境負荷物質の流出もない。

 断熱層と補強層は吹き付け後3、4秒で固まり、強度を発揮する。これにより作業の安全性が高まり、素材がスレート材と一体化して、アスベストを封じ込める効果もある。

 基本的な開発のアイデアは豊沢社長が発想し、「こんなものができないか」と三菱樹脂に依頼した。基礎材料の検討や配合など、三菱樹脂が研究を重ねて塗料を開発し、それをトヨコーが実証試験して確かめるという過程を経て、現在の3種類の塗料ができ上がった。

 蘇生工法専用の吹き付け装置の開発では、セブンテックと協力した。こちらも基本的アイデアは豊沢社長が提案し、協力してもらう形で、開発にこぎ着けた。ドイツのメーカーが製造した吹き付け装置を参考に、設計を工夫して小型軽量化を図り、施工時に移動しやすいものを作った。

【販売は好調】

 連携企業の技術提供により蘇生工法が完成し、トヨコーは06年12月に事業を開始した。豊沢社長が構想してから4年半が経過していた。

 その後、大手自動車メーカーの工場での採用を機に、問い合わせや受注が大幅に増加、09年2月期の売り上げ実績は2億円になった。新連携の認定でさらに知名度が高まり、「夢だった」(豊沢社長)という、大手商社での取り扱いも決まった。11年2月期には5億−6億円の売り上げを見込んでいる。

 今後は関東地方への拠点進出も計画しており、この不況下にあっても"順風満帆"の航海を続けている。