製造/東北 「高周波の水中スピーカシステムの研究開発及び製造販売」

"両手自由に"水中で会話を楽しむ

 水中での会話を実現しよう−。通常、水の中に潜るとダイバー同士は会話ができないため、ジェスチャーなどでお互いの意思疎通を行うなど、そのコミュニケーションの手段が限られてくる。水中でも地上のように会話ができれば、水中での活動にも広がりがでる。

 圧電セラミックススピーカー技術開発を手がけるPZT研究所・米沢事業所(山形県米沢市)は、耐水性・高周波特性を持つスピーカーと雑音(ノイズ)を拾わない咽喉(いんこう)マイクを用いたスピーカーシステム開発による水中コミュニケーションの実現を目指している。

 PZT研究所の片平吉美社長は「水中で会話をする際には、両手には何も持たない状態が望ましい」という。小型化が一つの開発テーマとなる。現在、PZT研究所を中核企業とする連携体は、スピーカーとアンプ部を一体化した機器と咽喉マイクで構成するシステムを開発した。

 アンプ・スピーカー部は潜水服の肩や胸に装着できる程度の大きさ。マイク部はヘッドホンのようになっており、喉に固定して使う。アンプ・スピーカーはさらなる小型化を見据えている。これまでモニターによる水中試験を実施しており、至近距離からはじめ、10−20メートル程度まで離れた距離での会話を確認した。

 今後は追加のモニター試験を実施し、今秋には市場投入を計画している。当初はプロダイバー向けを見込んでいる。

(株)PZT研究所・米沢事業所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)PZT研究所・米沢事業所
水中スピーカーシステムの開発・販売
(株)エイコーネットアンプ設計・製造
(有)高橋製作所耐水圧設計・製造



(株)PZT研究所・米沢事業所 片平吉美社長<br>「水中で仕事を行う人にとって使い勝手の良い製品としたい」

(株)PZT研究所・米沢事業所 片平吉美社長
「水中で仕事を行う人にとって使い勝手の良い製品としたい」

【地元大学もバックアップ】

 「プロのダイバーなど水中で仕事を行う人にとって使い勝手の良い製品としたい」(片平社長)。連携体が開発した、水中での会話をハンドフリーで可能にするスピーカーシステムは、今年3月に東京で開かれた「ダイビングフェスティバル2009」に出展し好評を得たという。

 新連携の認定は08年7月に受け、プロジェクトは間もなく2年目を迎える。連携体はスピーカー開発のPZT研究所のほか、耐水圧設計・製造の高橋製作所(米沢市)、アンプ設計・製造のエイコーネット(山形県川西町)による山形県内3社が手を結んだ。製品化に向けては、地元の山形大学工学部が音声解析技術、東北芸術工科大学が製品デザインなどの支援を行っている。

 今回開発したスピーカーは、全周波中心支持方式と呼ぶ独自の方式を採用。圧電セラミックスを振動体とするもので、同セラミックスを電極板の両面に配した構造を持つ。
 同方式はこの振動体の中心に穴を開け、接続棒を通して支持することにより、広い周波数帯域で音を発生させるのが特色だ。電気信号を直接振動に変換するためゆがみが少ないなどの音質が得られる。磁石とコイルを用いる従来のダイナミックスピーカーと比べ、圧電スピーカーの仕組みはシンプルになるなどの特徴がある。


【小型化を追求、今秋にも発売へ】

 今回の新連携ではPZT研究所の持つ独自のスピーカー技術をベースに、「水の中で会話をするシステムを作ろう」という考えがきっかけになったという。スピーカー部とアンプ部を一体化した装置では、プリント基板の小型化などの面でこれまでも協力体制があったエイコーネットが、耐水圧の設計面で高橋製作所が協力する形で小型化を追求することになった。広域型よりは同一地域の連携により、意思の疎通がスムーズに行える方向を選んだ。

 現在、スピーカー部とアンプ部を一体化した機器は、ダイバーの胸ポケットや腕などに装着できる大きさが実現した。電源は市販の乾電池で対応し、最大6時間以上の使用が可能という。今秋にはコア企業のPZT研究所が水中で会話できる新たなスピーカーシステムとして発売する。当初はプロダイバー向けとして、価格は10万円以下を目標にしている。モニターによる試験は今夏に拡大し、現時点での改良すべき点を洗う考え。今後は製品の改良とともに新連携制度の専門家による「販路開拓支援などを受けて、販売網を構築していきたい」(片平社長)としている。

 当面はプロダイバーが販売ターゲットとなるが、造船関係、救助関係など特定の領域での使用も想定。各用途に対応する形で、製品の進化を狙う方針だ。