製造/四国 「車載式加湿冷却装置<Mist Cool ユニット>及び専用梱包資材の開発・生産・販売〜生鮮品の新しい輸送方法の提供〜」

「霧の運送」で物流の常識を変える

 マルヤ流通(徳島県小松島市)は97年1月、冷凍関連専門の運送業として創業した。しかし08年、「転換期となった」(笠谷順資社長)という燃料高騰などもあり、同年7月には運送業を一時休止することを決めた。トラック用などの車載式加湿冷却装置「Mist Cool」の新連携認定を得たからだ。

 通常、野菜や魚介類の運送には発泡スチロールに氷を詰めて運ぶ方法が一般的。ところが、同装置はトラックの荷台内に霧を噴射する。氷を積まないことで積載重量が少なくなり、二酸化炭素(CO2)削減にもつながる。

 また、廃棄処分になるケースが多い発泡スチロールを使わないことでコスト減にもなる。恒常的な運送方法が主流だった流通業界に新風を吹き込むべく、コア企業のマルヤ流通を核に、連携企業3社のバックアップを支えに「次世代のクール運送スタイル」を提唱する。

 同社が運送業をメーンにしていた時、トラックのメンテナンスを手がけたのが日幸電業社(徳島市)。修理技術を冷却装置の技術に生かせると考えた笠谷社長は、日幸電業社に技術連携を提案、長年の付き合いがあった同社も快諾した。

 構想1年を経て、冷蔵庫設計を担当する松崎設計(徳島市)、専用の段ボール製造を手がける日本青果包装(徳島県小松島市)も加わり、「霧の運送」プロジェクトが本格的にスタートした。

マルヤ流通(有)


会社名
役割分担
■コア企業
マルヤ流通(有)
Mist Coolユニットの知的財産、ユニット・ダンボールのセット販売
松崎設計冷蔵庫内、冷湿気流量設計、空調及びダンボール構造設計
(有)日幸電業社車載電気技術、加湿冷却機械技術
日本青果包装(株)専用耐水ダンボール製造技術



マルヤ流通(有) 笠谷順資 代表取締役社長<br>「試行錯誤の結果、「ドライフォグ」という手を近づけても水滴がつかず、ぬれない状態を作り出しました。この「霧による輸送」で積載効率も上がり、現在の物流シーンを根本から覆すことができます」

マルヤ流通(有) 笠谷順資 代表取締役社長
「試行錯誤の結果、「ドライフォグ」という手を近づけても水滴がつかず、ぬれない状態を作り出しました。この「霧による輸送」で積載効率も上がり、現在の物流シーンを根本から覆すことができます」

【ぬれる?ぬれない? ギリギリの攻防で生まれた「ドライフォグ」】

 連携事業を開始するにあたり、一番苦労した点は資金面と断言する。そのため中小企業にとって「まず信用を得ること」(同)が最重要として、認定獲得に奔走した。開発については、すべてを一任した日幸電業社の修理技術力を目の当たりにしてきただけに、笠谷社長はシステム構築後の「Mist Cool」に手応えを持っていた。

 荷台内の霧噴射開発にあたった日幸電業社の吉成建二サービス部長は「温度が下がると、湿度の制御がシビアになる。技術的には難しいもので何回か無理かな、とあきらめかけたこともあった」という。

 技術畑の吉成サービス部長が行き詰まることがあると、笠谷社長が「発想の転換」的なアドバイスを送ることもあった。一本槍になりがちな開発に、営業面での経験豊富な笠谷社長の“スパイス”を注入することで実用化に向けて突き進むこととなる。

 「今思えば後ろを振り返ることなく、走りに走った」と笠谷社長は苦笑する。それほど開発は試行錯誤を繰り返した。実証実験に制御用のコンプレッサも相当数使うこととなった。その結果、生まれたのが「ぬれるか否かのギリギリの攻防」の「ドライフォグ」と呼ぶ乾いた霧だ。

 湿度のバランスに苦心した霧は手を近づけても手がぬれることがない。同装置に使う水は20リットル。霧噴射は連続稼働2週間の耐用も実証した。走行では、例えば北海道・稚内から九州・鹿児島までの24時間輸送で使用しても問題はないとしている。

 荷台への霧噴射については、運転席から簡単に操作が可能な仕組みにし、段ボールについても霧の出す湿気に耐用可能なものを日本青果包装が開発した。


【霧の輸送でトラックの積載効率が向上。魚介類にも効果を実証】

 運送物はホウレンソウなどの生鮮野菜がメーンとなるが、魚介類についての要望が非常に多かったという。ドライフォグを噴き出す「Mist Cool」を使っての運送では、山口県水産大学校と共同の実証実験を行い、タイや鱧(ハモ)、イカについても鮮度を維持して運ぶことができるという結果を得た。

 氷を使うと魚より水の重量の方が重くなる。削れる部分は削る。極限まで“軽く”なったトラックは、生鮮野菜で2倍以上、魚介類で5倍以上の積載効率を生み出す。

 価格は「Mist Cool」のシステム1台で150万円。09年が本格的な販売開始となる。初年度50台の販売が目標だが、展示会などへの出展効果もあり、タイやサウジアラビアといった海外からも引き合いがある。

 「畑で取れた、海で取れたそのままの鮮度で運送できることが最大の強み」と笠谷社長は胸を張る。「このシステムで“包んで当たり前”という現在の物流シーンを根本から覆すことができる」。挑戦は始まったばかりだ。