製造/近畿 「ニット製品技術を活かした「釣り網製品の企画・製造」と販売」

ユーザー目線で考えられた工夫

セーターやワンピースなどニット衣料品の企画・製造を手がけるアイソトープ(大阪府泉大津市)は、釣り具メーカーのシミズ(同和泉市)と連携して、縫い目のない鮎釣り用たも網「テクノメッシュ」を開発した。

たも網は釣り上げた魚をキャッチするための漁具で、通常の釣り網より口が広く、底が深くなっているのが特徴。網部分の製造はコア企業であるアイソトープが、フレーム部分の製造と製品の組み立て、販売はシミズが担当する。

網部分の素材には特殊ポリエステル材を使用し、従来品より型崩れしにくく、耐久性が高い。また縫製にはアイソトープの本業であるニット製造のノウハウを駆使しており、網こぶのない無縫製仕様になっている。フレーム部はシミズが特許を持つホルダーとフレームが一体化した「スムースフレーム」を採用し、枠と網の接合面をフラットにしている。

ユーザー目線に立って考えられたこれらの工夫により「極細糸を使う鮎釣りでも糸が絡まりにくく、鮎を傷つけないようになっている」(金沢克哉アイソトープ社長)のがウリだ。

すでに開発は終了しており、両社は網の鮎釣りの解禁となる6月の発売に向けて製造を進めている。全国の釣具店などを通じて販売する計画で、初年度は2,000本の販売を目指す。

(株)アイソトープ


会社名
役割分担
■コア企業
(株)アイソトープ
事業統括、網糸仕込み、編みと加熱処理工程、網への枠付け
(株)清水枠の製作、組立・包装、製品販売



(株)アイソトープ 金沢克哉 代表取締役社長<br>「地場産業でもあるニット製造のノウハウを活かしたたも網です。無縫製仕様になっており、釣り糸、釣り針が引っ掛かるトラブルを低減しています」

(株)アイソトープ 金沢克哉 代表取締役社長
「地場産業でもあるニット製造のノウハウを活かしたたも網です。無縫製仕様になっており、釣り糸、釣り針が引っ掛かるトラブルを低減しています」

【難素材の加工に苦労】

大阪府和泉市に本社を置き、釣り網など漁具の製造を手がけていたシミズ。同社はより使いやすい鮎釣り用たも網を考案。その開発を和泉市に隣接し、繊維産業を地場産業とする泉大津市のニット衣料メーカー、アイソトープに持ちかけた。

鮎釣りで起こりがちな網に釣り糸や釣り針が絡まるトラブルを減少させるためには、どうしても網こぶを作らない無縫製の製造技術が必要だった。一方、ニット衣料のベンチャー企業として、島精機製のホールガーメント機材を使って無縫製のニット衣料を製造していたアイソトープは、さらなる事業成長のために自社技術を生かした新商品開発に興味を持っていた。互いのニーズがマッチし、連携は自然の流れだった。

「衣料に使う繊維と違い、特殊ポリエステルは素材が硬いため製造に苦労した」とアイソトープの金沢社長は開発の苦労を振り返る。柔らかい繊維素材で無縫製加工を行った場合、強度が足らずにストッキングのように電線してしまう危険があったからだ。

加工可能で強度を保つ素材選びは困難を極めたが、同社の試行錯誤が実を結び、昨年末に製品は完成。地場産業を生かした新商品開発ということで、09年3月に経済産業省から新連携事業の認定を受けた。

両社は今後も漁具の共同開発を続ける意向。来年度以降には、ヘラブナ釣り用のたも網など数種類のたも網の開発を始める予定で、金沢社長は「今後もわが社のノウハウを生かし、積極的に新商品開発に取り組みたい」と意気込んでいる。


【ガレージからスタートしたニット分野のベンチャー創業】

アイソトープは繊維産業を地場産業とする南大阪地域でも珍しいベンチャー企業。サラリーマンだった金沢社長は「父もニット屋を営んでおり、自分自身もニットのモノづくりに愛着を持っていた」ことから、創業を決意。大阪市内で日雇い労働をして資金をため、8年前に泉大津市内のガレージを借りて事業をスタートさせた。

ニットメーカーとしては後発ながら、国内生産の高品質と、「年間1,000種類の在庫を保有し1枚からでも販売する」(金沢社長)経営スタイルがヒットし、事業は急成長。現在では30人以上の社員を抱え、売上高は13億円になった。

今後は在庫数を増やすとともに、現在は85%にのぼっている外注比率を100%まで上げたい考え。外注関係が複雑に絡み合う繊維業界では難しい課題だが、「例えば取引先の工場を自社工場内に取り込むなど、外注の仕事を減らさずに内製率を高める方法はある」とアイデアを語る。

同社は2年前から上場に向けた準備も進めている。金融危機の影響で株安が続くなか、上場を見送る企業は多いが、金沢社長は「数字を動かして実態以上に大きな会社に見せようとは思っていないので、景気は関係ない。5年後には上場を実現したい」と、未来を見据えている。