製造/東北 「蛍光対応バーチャルスライド作製システムの開発および販売」

病理医不足による診断の地域格差を減らす

 医療やバイオサイエンス分野の検査装置・画像処理システムの開発・製造販売を手掛けるクラーロがコア企業となり、病理検査やライフサイエンスの分野で求められている低コントラスト標本や蛍光染色標本のデジタル画像を作製するバーチャルスライド作製装置を開発する。

 バーチャルスライド作製装置は、プレパラートの細胞(標本)の顕微鏡画像をカメラで細かく分割撮影してデジタル画像を作製する装置。バーチャルスライドはデジタル画像であるため、ガラス標本のように色褪(あ)せることがない。これまで実用化されている装置は、病理標本の通常染色標本を対象としている。

 コア企業のクラーロ(青森県弘前市)は、弘前大学大学院保健学研究科との共同開発で、独自の全視野フォーカスと撮影・画像処理アルゴリズムで組織や細胞を高速撮影し、その高精細画像を作製する装置を開発・販売している。この分野では世界でもパイオニア的な存在で、性能・機能面で世界のトップを走る。

 当該連携事業では、この共同開発の技術をベースに弘前市周辺に立地する地域企業群が連携体を形成し、低コントラスト標本や蛍光染色標本の高精細デジタル画像を作製することができる世界最高水準の装置を開発する。

 バーチャルスライド作製装置はデジタル画像を提供することで、ガンなどの病理診断、症例研究を支援する装置。病理医不足の中で、通信ネットワークを活用した遠隔病理診断支援も可能になる。これら一連の開発事業の最終目標には、ガンの進行度合いを自動的に判定するガン自動診断装置の開発を据えている。

(株)クラーロ


会社名
役割分担
■コア企業
(株)クラーロ
画像処理・システム総合開発・販売
(株)弘前機械開発装置の設計・製造
(株)テクニカル光学系(特殊プリズム)の設計・製造
(株)クロビットジャパン光学デバイスの設計・開発
弘前大学大学院保健学研究科学術情報提供、検証・評価



(株)クラーロ 高松輝賢 代表取締役社長<br>「蛍光対応装置開発のベースとなるのがデジタルスライドスキャナー「TOCO」です。連携体による光学技術と画像処理技術、精密設計技術を融合させて世界最高水準の装置開発、そして最終的にはガンの自動診断を目指して取り組んでいきます」

(株)クラーロ 高松輝賢 代表取締役社長
「蛍光対応装置開発のベースとなるのがデジタルスライドスキャナー「TOCO」です。連携体による光学技術と画像処理技術、精密設計技術を融合させて世界最高水準の装置開発、そして最終的にはガンの自動診断を目指して取り組んでいきます」

【ガンの診断やライフサイエンスの分野で威力を発揮】

 クラーロ(創業当初の社名はダイレクトコミュニケーションズ)は、プリント基板のハンダ付け外観検査装置メーカーでハンダ付け個所の自動認識・検査システムの開発を手掛けた高松輝賢氏が故郷の弘前市で創業したベンチャー企業。光学技術、画像処理技術を生かした独自の全自動・高精度検査システムをもっと広い分野に活用したいとの考えが、ガンの自動診断の研究を進めていた弘前大学の佐藤達資教授のニーズとマッチした。

 ガンの自動診断の前段階として開発に取り組む必要に迫られたのが、病理標本のデジタル画像化。すなわちバーチャルスライド(デジタル標本)の作製装置だ。02年に顕微鏡画像取得システム、さらに03年には高速・高精細・大量処理のハイエンドモデル「VASSALO」を完成、米アペリオ社などと並んで、この分野ではパイオニア的な存在となった。07年には地域の病院への普及拡大を狙ったコンパクトなデジタルスライドスキャナー「TOCO」を完成、発売している。

 これらに続いて現在、「TOCO」をベースに開発を進めているのが、新連携の枠組みで取り組んでいる蛍光対応バーチャルスライド作製システム。蛍光標識標本は、分子マーカー、遺伝子マーカーなどで複数の情報が得られ、ガン診断・症例研究やライフサイエンスの分野で威力を発揮する。しかし経時変化などにより保存がきかないため、そのバーチャルスライド化のニーズが高まっている。


【世界的光学関連・精密機械企業の集積が強み】

 これまでの装置+は通常染色標本が対象で、プレパラートの下から発光ダイオード(LED)で照明、透過光撮影する方式。これに対して蛍光標識標本ではプレパラートの上からストロボを照射、蛍光色素を励起させ、その反射光を撮影する。このため光路や照明、撮影アルゴリズムなどを新規に開発する必要がある。

 ハードウェアの開発に当たっては、「VASSALO」や「TOCO」の開発で参画してきた弘前機械開発が装置の設計・製造、テクニカルが特殊プリズムの設計・製造、そしてクロビットジャパンが光路・光学デバイスの設計を担当する体制を組んだ。いずれもクラーロと近い弘前市周辺に立地する企業で、機動的な連携がとりやすいという強みがあった。

 「弘前市周辺には30あまりの光関連企業が集積し、連携がとりやすいのも強み」(高松社長)。そして当初からの共同開発者である弘前大学大学院保健学研究科が、仕様特定や性能の検証・評価を行う。

 「新連携の枠組みで体制が組めたことで、銀行などの信用度が増した。開発費がかさむため補助金や低利資金を活用できるようになったメリットは大きい」(同)という。

 また分野が医療・医学関係であるため、学術情報などの収集、ニーズ調査が不可欠だが、公的認定があるため学会などへの参加もスムーズにできる効能もあるという。09年3月末にプロトタイプが完成、同年度中に評価レベルへアップし、2010年度には市販へもっていく計画だ。